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第254話 光生side
俺の気のせいだろうけど涼はもっと触ってほしそうに見える。いや外でなんて絶対に怒るだろうしまさか涼がそんなことを思うはずがない。
「涼ってお姉ちゃんいたの?」
きっと俺の勘違いだろう。これ以上触ってしまわないように手を離し話題を変える。
「え?うん!いるよ!もう成人してて一人暮らししてる!」
こんなに大好きなのに涼のことを何も知らない気がしてなんだか寂しい。
「涼と似てる?」
「うーん、、昔はよく似てるって言われてたけど最近は会ってないからなぁ、、」
「そうなの?じゃあ絶対かわいいじゃん。」
涼の家族の話を今まで聞いたこともなければ会ったこともない。きっと俺よりも遥くんのほうが涼のことを知っている。
「……かわいくないよ。それにお姉ちゃんアイドルみたいなイケメンが大好きだから光生に絶対会わせられない。」
「なんで?俺アイドルじゃないし今度会わせてよ。」
なぜかさっきから拗ねては普通に戻ってを繰り返している涼はまた何かに拗ねている。
「……やだ。俺の光生だもん。」
「………え?」
空耳だろうか。なんかかわいすぎる発言が聞こえた気がする。
「光生が他の人に取られるの嫌だからいくらお姉ちゃんでも会わせられない!」
今すぐに家に連れて帰っていいだろうか。それでめちゃくちゃに抱いて涼しか見えていないってことを嫌になるほどわからせたい。
「なんで涼のお姉ちゃんが俺のこと好きになる前提なの。」
それによくわからない心配をする涼は今日もかわいい。
「……みんな好きになるもん。さっきだっていっぱい他校の子に囲まれてたし遥くんの学校でもかっこいいって噂になってるって言ってた!!」
やっぱり今すぐに連れて帰ろう。見たことないくらい拗ねている涼をこのまま帰すなんて選択肢はない。手を繋ごうと伸ばした瞬間に涼のスマホが鳴る。
「あっ、遥くんからだ!」
画面を見せてくれる涼は一瞬で笑顔になる。さっきまで俺のことで拗ねていたのに遥くんで機嫌が良くなることがどうしても嫌だ。それなのに表示されているメッセージの内容に更に嫌な気持ちは増していく。
「帰ろっか。遥くんの家行くんでしょ?」
スマホの画面には『今日時間あったら久しぶりにご飯食べにおいで』と表示されている。何も気にしていない素ぶりをすることが苦しい。
「え?でも今日は光生とクレープの約束してたし遥くんは今度でも大丈夫だよ!」
俺のことを優先してくれる優しさが嬉しいはずなのになぜか素直に喜べない。
「んーん、クレープもう食べ終わったし遥くんと会うの久しぶりなんでしょ?行っておいで。」
幼馴染の関係を嫉妬して壊すなんてひどいことはできない。そんなことをすればまた涼に気を遣わせてしまうから聞き分けのいい姿を見せたくて必死だ。
「……わかった、、じゃあ今日は遥くんの家行ってくる。」
寂しそうに見えるのはきっと俺が都合よくそう見ているからだと思う。涼を家まで送り気持ちが晴れないままノロノロと家まで歩いていれば後ろからカバンで背中を殴られる。
「普通に話しかけられないの?」
振り向かなくてもわかる。こんなことをするのは夢くらいだ。
「あははっ、すっごい不機嫌!さくらちゃんとなんかあったんでしょ?」
まだ何も言ってないのに一瞬で言い当てるなんて恐ろしい。シカトすれば俺の横を嬉しそうに歩く。
「あんたも本当人間らしくなってよかったよ!」
前にも同じような嫌味を言われた気がする。
「は?元からずっと人間なんですけど。」
意味のわからない夢なんてもう無視しよう。
「見て!さくらちゃんがソフトクリーム食べてるところ!」
なんの話だと思いながら横を見れば夢のスマホには涼の写真が映っている。
「は?なんでそんなかわいい写真持ってて俺に送らないの?本当意味わかんない。」
きっと夢と帰っている時にでもコンビニに寄って一緒に食べたのだろう。また俺の知らない涼に寂しくなる。
「ふふっ、さくらちゃんこれ食べながら言ってたよ!『光生にもこのチョコレート味のソフトクリーム食べさせてあげたいなぁ〜』って!」
「……え?」
「バニラと迷って結局チョコレート選んでたんだよ!椎名がチョコレート好きだから美味しかったら今度教えてあげるんだって嬉しそうに言ってた!」
だめだ。今すぐに会いたくてしょうがない。苦しいくらいに抱きしめて涼に怒られるまでいっぱいキスしたい。それなのに遥くんが頭の中をチラついて何もできない自分にため息が出る。
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