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朔矢side
「んっ……」
「はぁっ……」
「朔矢 ……きて……」
「もっと、奥まで……」
「んぁっ……きもちっ……」
「イッちゃいそう……」
「ダメッ、もう……んっ、あぁっ……」
俺の上で体を震わせて、ビクンと跳ねるとグタリと力を失った。
「うっわっ……」
ベッドから勢いよく起き上がった俺は、汗をぐっしょりと掻いている。こうして、夢の中で何度も俺は親友を抱いていた。
それはいつから始まったのか?
正直言ってわからない…。
それに、今まで付き合ってきたのは女だったし、SEXだって女としかしたことなんてなかった。
いや、それは今だって……。
ただ、夢を見るようになってからは、誰とも一度もそういう関係になったことがない。
いざとなると頭の中に浮かんでくるんだ……。あいつの顔が……。
汗を洗い流すためにシャワーを頭から浴びながら、ふとあいつの顔を思い出す。
俺たちは……ずっと親友だった。
大学へ到着すると、一限目の講義へと向かうためにキャンパスを奥へと進んでいく。
すると、どこからともなく微かに聞こえてきた声……
「ちょっと……、ダメって言ってるじゃん……」
聞き間違えるはずのない声……
いつも隣で笑っている、さっきまで夢の中で俺が抱いていた親友のもの。
そうだった……。
俺が夢を見るようになったのは、ある日の出来事がきっかけだったのかもしれない。
あれは確か……、大学の仲間たちと開いた飲み会の席でのことだった。
そこには男だけではなく女も何人かいて、圭祐 と俺はいつもと同じように隣に座ってその場を作り笑いでやり過ごしていた。
俺は少しだけアルコールが入り、飲めない圭佑はジンジャエールやコーラで繋ぐ。
「ねえ、朔矢君って彼女いるの?」
一人の女が、圭佑とは反対側にピタッとくっついて覗き込むようにして聞いてくる。
「今はいないけど……」
「へえ、じゃあ……私が立候補してもいい?」
「それは……俺の決めることじゃないし……。でも、君みたいな子なら大歓迎かもね」
「もう、本気にしちゃうからね、あははっ」
その場を崩さないための愛想笑いに乗せて答えた俺。相手の女も機嫌良さそうに腕に絡み付いてきたりしている。圭佑が隣にいるけど、今までだってこういう姿は何度も見ているはずだし、特に気にも留めずにいた。
―ドンッ―
そんな時間がしばらく続いていると、個室のドアが勢いよく開き、一人の男が金髪のグラサン姿で入ってきた。
一瞬、場の空気がシーンと静まり返ったけれど、それが誰への訪問者かはすぐにわかる。
「翔 兄 ……」
「圭佑、帰ろう」
「でも……」
「いいから……」
それだけの会話を終えると、その男が圭佑の手を引いて立ち上がらせ、「悪いけど、こいつ連れて帰るから……」と部屋を出て行った。
あの金髪男……、誰だよ……。
俺の中に、一気にモヤモヤとした感情が立ち込める。
扉を出る寸前まで何かを訴えるように俺を見つめていた圭佑。
バタンと閉まった扉は、より一層俺の感情をイラッとさせた。
「なに……、今の?」
俺に腕を絡めていた女が、ポツリと溢した。急に暑苦しさを覚え、絡まっている腕を引き離す。
「朔矢君?」
「悪いけど、興味ないから。俺、帰るね」
スッと腰をあげて席を立つ。
「あっ、ちょっと……」
歩き出した俺に腕を伸ばした女の手は、風を切った。そして、俺は二人の後を追うように店を出る。
少し歩いた細い路地裏に差し掛かった時、微かに聞こえてきた声……
「待ってよ……、どうしたの?」
「迎えに来てって言ったのはお前だろ?」
「だって……」
見ない方がいいって思ったのに、どうしても気になって、俺は声のする方を向いた。すると、そこには明らかに俺の存在に気づいている男と気づいていない圭佑。
男はまるで俺に見せつけるかのように圭佑を自分へと引き寄せて耳元に唇を当てている。
くすぐったそうに身を捩りながらも、無理に離れようとしないところを見ると、二人が俺が思っているよりも深い関係だと感じた。
「せっかくだし、ここでしてやろうか?」
「ちょっと……もう……っや…め…」
デニムとシャツの隙間から、男の手が圭佑の肌へと触れる。
無意識だった……
俺はその光景を見て、思いっきり拳を握りしめていて、こっちを見ている男を睨み付けていた。
「そうだよな……ここじゃ恥ずかしいか。じゃあ、続きはまた今度……」
そっと囁くように、でも確実に俺に聞こえるほどのトーンで男は言うと、圭佑の耳朶をハムッと食んだ。
くすぐったそうに「もう…」と男の肩を軽く押し退けるのを見た俺は、そのまま逃げるようにその場を後にした。
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