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第1話
風紀委員長には犬がいる。
その話はもはや学園中に知れ渡り皆が衆知の事実と化していた。
その犬は専ら強いと有名で、そのお陰でただでさえ委員長の高圧的で恐ろしく整った顔に臆するのに、誰も迫ることおろか近寄ることが出来ないだとか。
「おーい、たかみー」
「た か やです!その変なあだ名やめてください」
その誰もが恐れる委員長の番犬は、只今ツッコんだこの男のことである。
確かに恐ろしく喧嘩が強いのだが、噂…例えば委員長に迫ったやつを病院送りにし続け、100人突破記念に墓送りにしたとかそんな根も葉もないこともないが、かなり尾ひれがついた噂が駆け巡っている。
まあそれは貴弥も知っており、それはそれでいいかなーとかなんとか呑気に考えていた。
つまりは実際、貴弥はそんな恐れるような人物ではなく、至って真面目で、委員長の命令には従う(というか従わされる)男だということだ。
これは勿論のこと風紀委員メンツは皆知っている。
そしてもう一つ、風紀委員の貴弥の認識。
「おいたかみー、なんか俺すごーくヒマなような気がしてきたから会長半殺しにして縄で縛って木に吊るしてこいよ。」
「そんな曖昧かつ自分本位な理由で俺に犯罪者のレッテルを貼らせる気ですか!」
「たかみーなら出来る。石橋は粉砕するタイプでしょ?」
「意味がわからないですし、俺は石橋は叩いて渡らないタイプです。」
委員長のストッパー、風紀の最後の良心である。
なので風紀委員の全員が番犬の存在に感謝し、癒しと仰いでいるのだ。
そんな愉快犯な委員長と哀れな犬の攻防が繰り広げられる風紀室は今日も平和だなあ、とだれもが思った。
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