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第21話

「おいで、俺の貴弥。」 そう言った貞臣さんの元へ俺は駆け寄る。 俺やっぱり貞臣さんの犬かもなんてひっそり思ったけど。 それでもいい。俺はこの人の元にいきたい。 そして俺は貞臣さんの腕の中に収まった。 ああ、愛しい。 「ふーん……案外タカヤも頭が悪いんだな。貞臣がどうなってもいいってわけか。」 震える声で俺たちを睨みつけるシュン。 多分殺されるかもしれない。 けど俺は貞臣さんを死なせない。 俺が死んだって助ける。 「おい貴弥。余計なこと考えたろ?許さないからね。」 耳元で貞臣さんが俺に囁く。 恐る恐る貞臣さんを見ると怖い笑みをしていた。 この人思考が読めんのか? 「おい貞臣、お前余裕こいてるけどこの現状わかってんのか?お前の味方何人か数えてみろよ?」 「いいよ?点呼取ろうか。じゃあマサキから。はいどーぞ。」 「あ、はーい!いち!」 「にっ!」 「さーん!」 幼稚園児のような緩い点呼が続いていく。 ざっと見ても貞臣さんの味方は俺を含め7人程度。点呼もあっという間に終わる。…筈だった 「なーな。」 「7人、な。貞臣こっちを見てみろ。ざっと見てもごじゅ」 「はーち」 「きゅー」 「じゅー」 「はあっ!?」 点呼を続けたのはなんと、シュンの後ろにいた末端のサルビナメンバーだった。 シュンは唖然としながらその点呼を聞いていく。 「にじゅー」 そう言い切ったところでサルビナのメンバーが終わった。 「なんで…お前ら…裏切ったのかよ…!」 「裏切りじゃねーよ。元から俺が送ったスパイだし。もちろんおまえらの作戦も筒抜け。あ、そっか。何人かは寝返ったやつもいたっけか?」 そうとぼけ出す貞臣さん。さすがこの人は底意地が悪い。 しかしこれで数の分は若干解消された。これならなんとかなるかもしれない。 「クソ…まあいい。まだ数は俺達の方が多い。」 「どうかな?」 「…は?お前まだなんか…」 「あちらをご覧下さ〜い」 そう言って貞臣さんが誘導したのは入り口。分厚い半開きのドアをサルビナのメンバーになりすました貞臣さんの味方が扉を開ける。 「なんだ、これ…」 「俺の仲間だよ。集めといたんだ〜おまえのためにね。」 そこにはルノタスのメンバーがズラリと並んでいた。その数100人弱とサルビナのメンバーを軽く凌いでいる。 「なあ、シュン。俺のたかみーを貸してあげた利子、高く着くから覚悟しろよ?」 そう言って貞臣さんは過去一美しくおどろおどろしい笑顔でシュンに微笑んだ。 「ひいっ…」 シュンが鳴き声を発しながら逃げていくがそれはもちろん逃げられるはずがなく。 そこからの事は話せない。 俺が当初から守ろうとしていた目標が達せなくなってしまうからだ。 ただ一つ言っておく。 シュンはしばらく、オレたちに前に現れることはないだろう。 …というか、できない。

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