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第20話
「お前そんな綺麗事言ってる立場かよ?見てみろ。これからそのお綺麗なお顔も身体もメチャクチャになんだよ。お前は好きな奴の大切なモノも守れない。」
シュンは嫌な笑みを浮かべて貞臣さんに言い放つ。
そして俺の方へ振り返った。
「おい。タカヤ。お前が選んでいいよ。ここでお前が俺を選んでこいつの前で俺のモノになるって宣言したら俺はこいつを半殺しで済ませてやる。だが、貞臣を選ぶなら俺はこいつを殺す。」
「なんだよそれ…」
「嘘じゃない。…お前ならわかんだろ?」
シュンの色素の薄い目は光を宿さない。深く闇に沈んでいた。
この目をしたシュンは本気だ。
本気で貞臣さんを殺すつもりだ。
いくら貞臣さんが強くて、タイマンではシュンにも勝てるかもしれないとはいえ流石にこの人数は多すぎる。俺が加担しても分が悪いのは火を見るよりも明らかだった。
「俺は…「たかみー!」
そう呼ぶのはただ1人しかいない。貞臣さんだ。俺は貞臣さんに目を向ける。
貞臣さんの目に俺が映っている。
それだけでこんなにも胸が苦しい。
「なあ俺のこともう信じてないって、そう言ったよね?」
「…はい。」
あの手紙にもう貞臣さんの事は信じていないと書いた。
もちろん嘘だ。
だけど今は頷くしかなかった。
「あれさ撤回しなくていいよ。本当でいい。」
「はい…ってえ?」
「もう一度、俺を信じればいい。」
…意味が、わからなかった。
俺は困惑した顔で貞臣さんを見つめる。
「俺を裏切ったっていい。…その後その倍以上何度だって俺を信じてよ。そんなお前を俺が信じて愛してあげるから。」
「な、で…」
貞臣さんの言葉の意味がわからなかった。
何度だって裏切ったって、俺を信じてくれるの?
愛してくれるのか?
なんでだよ、なんでそんなの…
親でさえくれなかったそんなモノ、貞臣さんが俺にくれようとするんだよっ…!
「お前が好きだから。愛してるからだよ、貴弥。」
そう言い切る貞臣さんはあまりに純粋で、裏なんかなく見えて。
ああ、俺、この人に出逢うために生まれたんだな。
色んな奴に裏切られたって、生きてたのはこの人に人生捧げる為だからだなって
本気で思った。
そしてストンと、落ちる。
ああ、俺もだよ。貞臣さん。
「信じます。貴方が誰よりも愛しいから。」
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