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第19話
「おい、なんだよここ。」
学校終わりシンジに有無も言わさず連れて来られた廃墟に俺は声を上げる。
「んー?君の方が詳しいんじゃないのぉ?」
「そう…だけど。」
間延びした声で確信を突くシンジに俺は情けない声しか出ない。
それくらいには焦っていた。
だっておかしい。こいつはシュンの手下だ。
だったらなんでこの場所に来るんだ。
貞臣さんの元いた族の、根城としているこの廃工場に。
「お前ら、まさか…」
「ここでそんなおっかない顔するの無駄なこと知ってるだろ〜?お前は最期まで見届ける義務があるんだよ。」
シンジは笑っていた。けど目だけは笑わず真っ直ぐこちらを見ている。その射抜くような視線にこの悪い予感が正解であることを示しているような気がした。
「クソっ…」
俺はシンジを押し退け、廃工場に走った。
いやだ、、貞臣さん!!
ガシャン、と厚いドアを押し退け身体を滑り込ますと案の定、シュンと貞臣さんが対面している。
もちろんシュンだけではない。
貞臣さんをぐるり、と囲む人集り。
俺がいた頃と顔触れは随分変わっていたが、サルビナの黒い特服を着た奴らが何十人も貞臣さん達数人を囲んでいた。
「シュン、お前約束が違うじゃねーか。」
「はは。第一声でそれかよ。…俺は貞臣を殺さないって言っただけだ。俺好きなやつの大切なものは徹底的に潰すタチなんだよ。そしたらもう何にも残んないで俺だけのものになるだろ?」
その言葉に俺は心臓の奥から沸々と黒いものが溢れてくるのを感じる。
こいつを殺したいくらい憎い。
「おま「きもっちわる〜。流石悪趣味シュンくん」
俺の言葉は貞臣さんによって遮られる。
しかも心底嫌悪感、って声を出す貞臣さん。こんな時まで煽らなくても…と思ったがそれでこそ貞臣さんな気がして少し笑ってしまう。
「…お前だってそういう奴だろ?頗る気に入らないがお前と俺は似ている。」
「ばーか。一緒じゃねーよ。きっしょ。俺はね好きな奴の大切なモノはまるごと愛すタイプだもん。」
そう言って貞臣さんは俺に微笑む。
その笑顔があんまりに美しくて俺は少し泣きそうだった。
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