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第1話

「松井くんてさ、梅本先輩と付き合ってるってホント?」 同じサークルの河合さんが唐突に質問を投げかける。学食の隅っこ、もう4限目が終わって、教職クラスの5限待ちの学生以外、残っている者は少ない。そのせいか、河合さんがぐいぐい、迫ってくる。さっきからその圧がスゴイ。 「え?うん、付き合ってるよ。夏休みのちょっと前から。」 そう、付き合って5ヶ月。先月、実家暮らしだった先輩が俺のところに一緒に住み始めて今めちゃくちゃ幸せなんだ。喧嘩もなさすぎて、代わり映えしない毎日だけど。 河合さんが聞いてくるから答えたのに、それに対する返事は、へぇ、そうなんだ…って何とも素っ気ない。そのくせ次の質問だ。 「松井くんって男の子が好きって事?」 そう、梅本先輩は男だ。 どストレートな質問に面食らうけれど、嘘を言っても仕方ないし正直に答える。 「あぁ、うん、そうだね。」 高校生の頃だったら色々悩んでたから、こんな事口に出して言えなかったけど、大学に入って先輩と付き合いだした頃から、すっかりオープンになっている。仲良い友達はみんな知ってたし、こうして、顔見知りくらいの付き合いの人たちも大抵知っている感じ。だから、気負うこともなく、さらっと答えてみた。でも、よく考えたらかなりデリケートな話しだと思うんだけどな、なんて内心思っていたら、それでもまだ河合さんの質問は終わらなかった。 「うーん、松井くんってさ、女の子には興味ないわけ?」 これもまたストレート過ぎる質問をぶつけて来る。タックル喰らってる気分だよ。 「え?あぁ、そうだね。まぁ、そういう事だね。」 ちゃんと質問に答えて上げてるのに、やっぱり河合さんの答えは素っ気ない。 「ふーん、そうなんだ。」 何か、感じ悪くない? 質問の意図が見えないし、興味本位で聞かれるのは気分悪いし、何なんだろうと思いながら、こちらからも質問してみる。 「えーっと…河合さんは…付き合ってる人、いるの?」 そしたら、何でだろう、こちらが吃驚するくらい、狼狽えて挙動不審もいいところだ。 「えっ? えっ? 私?? えっ? いないけど?あ、あ、あたしのことは、どうでもいいでしょ?」 と半分キレ気味。 何?この驚き方。質問返されるの、想定してなかったのかな。でも、さっきの仕返しとばかりに素っ気なく返してみる。 「ふーん、そうなんだ。まぁ、頑張って(笑)」 それくらいしか言いようが無い。 「なにそれ?頑張ってってひどくない?しかもカッコワライって?それ言葉で言うんじゃなくて、表情だよね?顔笑ってないし!逆に無表情じゃん!!」 と激しく言い返してくるのに、すっかり気圧されてしまった。でもさ、笑えるわけない。河合さん、怖いしキツイし勢いあるし…こっちの言い方も悪かったけど、君だって大概だよ、と思いながら、一応謝ってみる。 「あぁ、ごめんごめん。」 ホントに一応。 もうそろそろ終わりかなと思ったところで、再び質問。 「松井くんって、ホントに梅本先輩の事、好きなの?」 いやいや、その質問の意図は? もしかして、適当に付き合ってるって思われてる?これ、答えないと駄目なの? 河合さん、何が言いたいんだろう。 「え?好きだよ?好きじゃなきゃ、付き合わないでしょ?」 当然とばかりに答えてやる。だって、これしか言いようないじゃないか! 「あぁ、まぁ、そうだよね。」 しかしこれにもまた、素っ気ない……と言うか、あれ?がっかりしてる?何だろう、何か怒ってんのかな。 「うーん、て言うかさ?河合さん、何か怒ってる?」 素直に聞いてみた。が、怒ってないよ!とキレただけだった。

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