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第2話

いざ、並んでジェットコースターに乗った僕とお兄ちゃん。 思わず、隣のお兄ちゃんをチラ見。 勇ましい眼差しでポールを握っている...はいいが、ベルトをしていない! 「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」 「えっ?」 「ベルト!ベルト!」 慌てて僕は自分の身を包む安全ベルトを懸命に指さした。 「ベルト!お兄ちゃん!ベルトして!」 落ちちゃうよ!なんて言ってしまったら、お兄ちゃんを怖がらせかねないので、言葉を選ぶ。 「えっ!あっ!」 お兄ちゃんがようやく、ベルトをしたと同時にジェットコースターが動き始め、僕は一瞬、命が縮んだ。 その後はさすがに僕もお兄ちゃんを気にかけられなかったが、思いもよらず、お兄ちゃんは以前のように気絶し、ぶっ倒れたりはせず、意外と平然としていた。 やっぱり、月日が経って、お兄ちゃん、成長してたんだな、と僕は頬を緩ませた。 その頃の優斗。 あー、よく寝た。 途中で気を失ったかと思ったら、ここ何処だっけ、てなったけど。 朝が早かったから、仮眠取れて良かったー。 単に途中で気を失って寝ていたので、ジェットコースターを降りた後も記憶がなく、怖がら無かっただけだったなんて、僕は知る由もない。 そうして、僕は秘かにほくそ笑んだ。 お兄ちゃんは僕に合わせてくれる傾向がある。 お化け屋敷! お兄ちゃんはかなりの怖がりだし、中は暗い。 上手くいけば、お兄ちゃんは恐怖のあまり、僕に抱きついてくるに違いない、...もしくは、 『...手、繋いでくれない?』 本来のお兄ちゃんが顔を出したら、ようやく、少しステップアップできる。 なにしろ、こっそり僕が寝てる隙にキスしたらしいけれど、僕は覚えてはいない。 それから、特に進展がないんだから。 そうと決まれば...。 「お兄ちゃん!あれ、面白そう!」 僕は敢えて溌剌とお化け屋敷を指さして見せた。 途端、兄の優斗は顔色を曇らせるどころか硬直した。 「お、お化け屋敷....」 「大丈夫!仮装だし、ハロウィンと思えばいいよ!それに...」 そこまで言うと、僕は思わず、熱くなった顔を伏せた。 「お、お化けが出たら、僕が守ってあげるから...」 その姿に思わず、ズキュン!となった優斗が断る術などない。

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