3 / 38

第3話

「とりあえず、なにか食べよっか、お兄ちゃん」 「だな、列に並んでたら昼前になっちゃったもんな」 僕たちは園内を歩き、レストランに辿り着いた。 「んー、なんにしようかなあ...」 正面でメニューを見つめる奏斗とは違い、兄、優斗の開いたメニューを見つめる眼差しは険しい。 今朝はなんとか、箸を逆さに持たずに済んだが、万が一、こんな大勢が食事している最中にまたドジったりしたら... 奏斗が赤っ恥をかく羽目になる。 下手して、ナイフとフォークで切り分けた肉が宙を舞ったりでもしたら....! 「なんにする?お兄ちゃん。僕はハンバーグセットにしようかなあ」 ...ハンバーグか、食べたい。 食べたいが、自宅や学校ならともかく、レストランでは避けたい...。 ひたすら、メニューを目で追い、睨む俺。 「コーラも頼もうかなあ...あ、やっぱ、オレンジにしようかなあ」 「よし!ドリアにしよう!」 スプーンで掬うだけだ、難題ではない。 「ドリアだけで足りるの?お兄ちゃん」 「だ、大丈夫。あんま、お腹空いてないし」 笑ってみせたが、本当は腹ぺこだ。 「飲み物は?お兄ちゃん」 「え?んー、メロンソーダにしようかな」 「メロンソーダかあ、メロンソーダもいいね、悩むなあ」 そうして、スプーンやフォーク、肉などが宙を舞うこともなく、奏斗に恥をかかせることなく、ホッと安堵し、食後のメロンソーダを啜った。 待ってろよ、お化け屋敷! 子供の頃のように泣きじゃくり、弟の奏斗に慰めてもらいながら歩くなんて事はしないからな! 俺、兄の優斗はお化け屋敷に挑戦状を叩き付け、メロンソーダを一気にストローで吸い込んだ。

ともだちにシェアしよう!