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救済

さて、と。 目の前に見えるはすでに戦場。 決着まではあと少し。 ふふ、お兄様、あと少しで迎えに行きますから、任せてくださいねっ!! 【これは 兄を溺愛してやまない ハイスペックな弟の 愛の暴走劇だ】 ------------------------------------ 僕がまだ5歳の頃。 「おにぃさまぁーーーーー!!!!」 「ぉっ、と。どうした、ハイル。」 兄が剣のお稽古中。幼かった僕は、よく抱きつきに行きました。 「おにいさまかっこよかったです! うふふふ、ハイルはとても誇らしいのです!!」 「そうか?ハイルにそう言われると嬉しいな。ありがとう。」 そう、この照れ顔が見たいがために! …まぁ、今ではこの顔も、笑顔も、何も、見せてはくれないのですけれど。 僕を前にするとお兄様は無表情です。 胸が痛いです。しかし、僕は頑張ります! なんてったってお兄様の為ですからっ! お兄様を無事にこの王宮から逃すためなのです。 それに、僕の見立てとしてはこの国はすでに落ち目です。王家はすでにとある公家が乗っ取っており、貴族がやりたい放題。 町では至る所に反乱分子を見ます。ちょうど祭り上げられそうな奴も発見済みですね。 貴族の皆さんが存分に搾取するせいで、イキのイイの見つけるのに、すっっごく時間が掛かりましたよ! さて。 僕は今からこいつらを焚きつけて、 王家・公家をめたんめたんにするお手伝いをします。 ------------------------------------ 「は、は、は、…ぅっ、」 「ぁぁあんっ!」 「ふふ、かわいい。」 うーん、今日の子はそーとーヤリ慣れてるねぇ将来が心配だよー? ま、いい情報くれたから良しとする。 「ふふ、きもちよかったよ。 またおねがいね?」 「は、はいぃ…」 僕女顔だからさ、結構好き嫌い別れるんだけど、この顔に弱い人はとことん弱いからいいよねぇ。 さてさて、明日はどーしょーかなー。 て、あれ時間やばくない?空白いし。 うわー、早く学園に帰んないとね。 僕は素早く魔法を唱える。 『転移 学園寮の前』 ぐにゃり、と視界が曲がって真っ白になる。その光の暴力が、だんだんと収束していく。 ぱち、と目を開ければすでに学園寮の門が目の前に。ちなみに王族寮は普通の寮とは別なんだよ、すごいよね。 「ほんと、便利だなぁ魔法って。 」 きちんとアリバイを作るため、堂々と入っていく。 「お前、今帰ったのか。」 あちゃぁ、、。 物音を聞きつけたのか、二階に上がろうとしたら、部屋から出てきたお兄様に声を掛けられてしまいました。 「お兄様。まだ起きる時間には早いよ?」 「そんなことは聞いてないだろ。」 「えー、うん。今帰り。」 「お前っ、遊ぶのもいい加減にしろって言っただろ!」 「えへへ、ごめん?」 怒ってる…めちゃくちゃキレてる…。 うーん、前に誤魔化そうとナデナデしようとしたら思いっきり払いのけられちゃったんだよね。 しかもその汚い手で触るなーばりの強さで。ていうか目がそう言ってた。 あれは自室に戻って泣いた。 超号泣したよね。 「お前っ…」 そう言うと、兄は俯いてしまった。 兄の握られたこぶしがぶるぶると震えている。あぁ、血が滲んでなければいいなぁ。大丈夫かな。 ごめんね、いつも心配かけて。 でもごめんね、お兄様にはまだ言えないんだ。 分かってるよ、今町では事件が多い。 貴族が対応に追われているし、戦争も近くなってる。王家に止める力はない。ただでさえ責任感の強い兄が、自分の無力さに打ちひしがれてとても不安定になってるのも分かる。 僕がそれを主導してるなんて、夢にも思ってないんだろうからさ。 心配で心配でたまらないんでしょ? でも、その苦しみもあと少し、あと少しだから、ね? 大丈夫、種は播き終えたよ。 もう、戦いの火蓋は、切って落とされているんだよ? そして、翌日。 王都では反乱軍による革命が始まった。 ------------------------------------ 「よしょっと。お兄様無事ー?」 「お前、…ここ、どこだ……?」 「んとー、故郷と隣の大陸の、とある国に建ててもらった新居?のベッドの上だね。」 あ、そうだねいきなりだったよね。 えとえと状況を説明しますとですね。 革命軍はあの後しっかり勝ちへ進みました。そのうち貴族が寝返ったり出奔したりします。囚われた貴族は全員処刑になるので、みんな死に物狂いでどうにかしようとするわけですねー。 んで、僕はお兄様だけ連れて、かねてから準備していた新居に転移で連れ込んだと。他の貴族なんか知らないもん? いやー、事前準備で隣の大陸に来るのも大変だったんだよね。でも転移って一度行ったことある場所じゃないといけないからさ。逃走ルートを確保するためには必要なことだったね、うん。 「は?どうしてそんなところに、ていうか、なんで俺だけ?父上や母上、兄さんやほかの弟は?」 「えー、もぉーそういうと思った。 から、ここには連れてきてないけど、いろんなお家の人に匿ってもらったりしてるよ?」 と、いうか、王家は悪くないって噂流してあげたんだから、殺されないと思うし。てかむしろ王様達を救って新しい王国を作るんだくらいの人達だよ? ていうのを説明してみた。 「は?じゃあなんで俺達逃げてきてるんだ?」 「だってお兄様、王族合わないでしょ?」 「はぁ?」 「ほんとはお兄様、人に命令するの嫌いでしょ?誰かに嫌われるのも嫌い。 実は勉強も嫌い。妾の子だって侮られないように頑張ってただけでほんとはずっと苦しかった。 責任感強いけど、重すぎて抱えきれないものを持たされると壊れちゃう。 実際壊れかけじゃなかった?? 何も間違ってないでしょ??」 お兄様は沈黙してしまった。 とりあえず、お兄様をぎゅ、と抱きしめて言った。 「お兄様、もう大丈夫だよ。 もうお兄様を苦しめるものは何もないよ。あったら僕が全部壊してあげる。だから、大丈夫だよ。」 「…なんだ、それ。お前、怖……」 「えっ、こわい? えと、えとえと、ごめんねお兄様、何が怖かった?ごめんね。」 抱きしめたまま思わずお兄様の顔を覗き込んだ。 お兄様のまあるいお目目がこちらをじっと見つめてきていた。 そして、プッと小さく吹き出した。 「そうしてると、昔みたいだ。」 「僕は昔から変わってないよ??」 「変わっただろ、十分。」 むっ、とちょっと不機嫌そうに返された。え、うそぉ……不機嫌にならないで、泣くからおねがいだから。 「……それで、お前の言いたいことはなんとなくわかった。が、俺は王族だ。戻りたい。」 「それはダメだよ。それ、建前でしょう?本音で戻りたいって言うなら戻してあげるけど、そうじゃないならダメ。」 「……」 また、黙りこくられた。 もう、お兄様のことはなんでもお見通しなんだからね。さっき父母や兄弟の話をしたのだって愛情からというより義理からでしょう。お兄様嫌われてたもんね。 「じゃあ、これからどうするつもりだ。」 「もちろんここで2人で住むの。僕、冒険者やってるからお金たんまりあるし。というか普通に生活してれば一生困らないくらいには溜まってるよ?」 「は?」 「ね、お兄様。 僕と2人でここに住もうよ。」 呆然としたお兄様。 うーん、もうひと押しかな! 「お兄様、ダメ?」 じっ、とお兄様を上目遣いで見つめる。 何秒経っただろう、すす、とお兄様の目が逸らされて。 「……ひとまずは、それでいい。」 勝った!!!

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