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第1話

季節の変わり目の体調不良を感じ、病院に行った 診断結果は妊娠10週 小宮 亮平 24歳  全く身に覚えが無いのに妊娠しました まじかぁ、仕事どうしよう。 今の事務職、ちょーホワイトで定時上がりだし、発情期休暇もちゃんと給料でるし、辞めたくないけどこれから腹も出てくるだろうし、腹が出る前には辞めたいな てか、相手誰だろ 2ヶ月前………うーん、飲み会あったよな あー、あ?あったよな うん、確か営業のエース駒沢くんが、どっか行くって送別会があって。 何でかうちの事務達も行く羽目になって。 飲んだ後の記憶ぶっ飛んでたけど、家で起きたから気にして無かった どう考えてもその日しかない いやだから、相手は誰だよ あーーー、ま、いっか とりあえず、辞表出して社宅から出る段取りでもすっかなぁ 胃がムカムカとまらね〜これが悪阻か マスク付けて出勤したら部長に呼ばれた 「風邪気味なので、予防です」 無茶苦茶、部長に聞かれた 咳は?熱は?食欲はあるのか?早退するか? 今来たばかりなんですが………。 そんな感じで隣の席の牧村君にも心配されて、膝掛けや熱めのお茶を出された。 なんなの君たち 会社帰りに不動産に寄って物件を探した 家賃削りたいよなぁ 3万円と4万5千円の物件があったけども…。 風呂は部屋に有るけどトイレは共同だった。 ワンフロアでキッチンスペースは狭いなぁ。 貯金を崩しての生活になるなら仕方ないかな オメガだからセキュリティがしっかりしている今の社宅から考えると不安しかない まぁ俺みたいにオメガだと思われてもいない、誰に抱かれたのか知らないが、放っておかれるような存在を襲うような奴もいないだろう 3万円の物件に契約をして帰ってきた 来月中に引っ越しをする為に荷物整理しておこう 夕食にヨーグルトか野菜ジュースならいけるか? 簡単に買い物をして自宅に帰った 高卒からだから5年?6年か。 ここから離れるのか そう考えて少しセンチメンタルになった まぁ次の部屋からは二人で生活だから寂しくはないかもな シャワーを浴びながら下腹部をさする ここにチビがいるのか まだぺったんこのお腹 そこに命があると思うとニヤけてくる 無事に出てこい お父さんは居ないが、俺が父も母もしてやろう 寂しい思いはさせたく、ないなぁ 少しだけ涙出た 部長に退職届を渡した 理由は転職のためと言った しつこく何度も辞めないでと言われたが、妊婦ですから無理です、とは言えず 「スキルアップしたいので」 これで押し通した 結局は保留でって言われたが俺は来月の末で辞めることに決めたんだ、部長じゃ走り出したこの俺を止められないよ 休日まで長かった……。 少しだけで良いから、横になりたいってずっと思って仕事してた 食欲は相変わらず無いし、吐き気との戦いだし。 ゼリー飲料はまじで神アイテムだ 箱買いして耐えてやったわ! やっときた休日 荷物………まとめたいのに動けない 気力で仕事は出来るけど、家の事となるとなぁ 明日でいっかぁ、いやいや、あと少し寝て、起きたら少ししよう 延々ループして今、午後三時 押し入れの服からやっていこう 押し入れの下から衣装ケースだして、取っ手を掴んで持ち上げた瞬間 下腹部に異常な痛みが走った え?え?なに?嘘だろ!? チビが死ぬのか!? やっと出来た俺の家族を!? 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!! 消防に連絡したまま俺は意識を失った。 真っ白い視界が眩しくて、手を翳せば、点滴の針が刺さってる あ!ちび!! 絶対に俺の腹の中に居るな、不思議とそう思って下腹部を撫でた 「気が付いた!?」 俺の頭を抱きしめて、良かったともらすこの声は 「駒沢、くん?」 髪を撫でていた手を止めて俺を覗き込むのは、やっぱり駒沢くん 「すみません、ちゃんと社長就任するまで会わない約束を破ってしまいました」 ん??何だって? 「子供ができたなら連絡して欲しかったです」 約束、社長、連絡? 「駒沢くんなぜここに居るの?」 「貴方が救急で運ばれたからです!」 重いもの持ったらダメです、切迫早産で危なかったんですよ、様子見て2週間は入院ですから 俺の体を起こして、お茶を飲ませてくれて甲斐甲斐しくお世話を焼きながらあれこれと教えてくれる駒沢くん 「ちょっと待ったーーーー!!」 「何ですか?そんなに大きな声出すと、赤ちゃん起きちゃいますよ」 いや、ねーってお腹に話しかけるな 「駒沢くんなんでここに居るの?なんで?俺と駒沢くん付き合っても居ないし、番でもないし」 駒沢くんこの世の終わりって顔してる 目の前のおやつをいつまで経っても貰えないイヌの顔だ 「あの日言ったじゃないですか、俺が社長になったら番になってくれるって、社長になるまで連絡はするなって、だから急いで迎えに来いって」 「全く覚えてない」 いやだから、んも〜何この大型犬、捨てられそうにしょげてるじゃんか、も〜 「たしかにあの日はお酒は飲んでましたけど、普通に歩いて普通に喋っていたんですよ?」 「だからって酔っ払いの戯言を…………」 「部屋に送って、ベットに寝かしつけて、帰ろうと思ったら、ベッドに引きづり込んだの自分なのに」 ふぁぁぁぁぁ! 俺何してんの!? だ、誰かその辺でいいので、穴を! 今すぐ穴に入りたい 「頑張っているの知っていたから、ずっと見守る事しかできなかったし、本社に行く俺と一緒についてきてもらおうとプロポーズしたら、『とっとと社長にでも、なんにでもいいからなって、肩書きつけてから迎えに来やがれって」 おおおおお、俺のばっきゃろおおおお!! 俺は一体何様だ!! もう、もう無理だ、俺のライフはもうない 「駒沢くんごめんね」 「何に対してのごめんねですかぁ?」 25歳の成人男性が、唇尖らせて拗ねるな! 可愛すぎだろうが!! 「覚えてない事、酔っ払ってバカなこと言ったし、 あ!!子供は産むからな!で、俺頑張って育てるから!やっと出来た家族なんだ、この子は責任持って育てるから、この子は俺にください、お願いします!」 頭を下げてお願いしたけど、跡取りとして引き取るって言われないかな、言われても渡さないけど 鼻を啜る音が聞こえる 「え!?駒沢くんなんで、泣いてんの!?」 そばにあったタオルで、駒沢くんの顔を拭いてやる 「俺は、俺は要らない?子供しか要らない?俺とは家族になってくれない?」 嗚咽混じってて鼻声の鳴き声で、よく聞き取ったな俺 「駒沢くんは社長だろ?まず、俺なんかオメガと気付かれることも無いんだぞ?そんな俺を家族にしたら、駒沢くんの株が下がるぞ、もっと良い嫁さん貰え、な?」 「貴方がいいのにぃぃぃぃぃ!!!」 医者が回診に来るまで、ワンワン大泣きした25シャイ男性駒沢くん 子供は心配する状態では無いらしい ただ、荷物をもったり過度な運動はダメですって、なぁ〜んで俺に言わずに駒沢くん見て言うの?先生 昼食を一緒に食べるか?と声をかけたら正解だったらしい ご機嫌な様子で、どれが食べれそう?なんてさっき迄大泣きしていたとは思えない程の満面の笑みでメニュー開いて世話焼きを再発した 少し硬い顔をした駒沢くんは、ベッドの横で片膝ついて俺の左手を取った 「社長就任は来月の中旬に発表になります。俺の番に、か、かぞぐんんに、なっでぐださいいいい!お願いします!俺を選んでください!!」 男泣きってこういう事を言うんだろうなぁって 駒沢くんは感受性が豊かなんだな なんて事で気をそらしたかった だって、俺も釣られて大泣きしたから お恥ずかしいぃぃぃぃ!!

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