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イケナイこと、しようよ。

 トウヤ先生のシャツは、『男の子の』ではなく、『男性の』匂いがした。  脳が溶けていくような感覚。もっと、溶かして……  でも、きっと先生は「寒いなら、クーラーの温度、少し下げようか」と優しく言いながら、ボクの体をゆっくりと離すに違いない。そこで、ボクの恋は終わりを告げる――  先生の手が、ボクの肩に触れた。その熱さが切なすぎて、きゅっと、先生のシャツを握る。 「なに?」  トウヤ先生がボクの肩を抱いたまま、そう尋ねる。余命一秒だったボクの恋は、少しだけ生きながらえたみたい。 「男の人を好きになるのって、変、ですよね」  最後の叫び。でも、それは聞き取れないほど小さな声にしかならない。  すると、先生の顔が、吐息が、ボクの髪の毛に近づいた。 「そんなこと、ないと思う」  優しい声。そう言って貰えただけで、体の芯の部分がビクビクと震えている。  もう少しだけ…… 「こうしてて、いいですか」  先生に腕を回し、ぎゅっと抱き着いた。たくましい、がっしりとした感触がボクの体全体に張り付く。  ねぇ、センセ。ボクに触れてよ。ボクを触ってよ。ボクを、センセのものにしてよ―― 「だめだ」  その言葉が、断頭台から落ちてきたギロチンの音のように聞こえた。  でも、もう死んじゃうのなら、このままがいい。  目から、雫が落ちる。先生に抱き着く腕に、力を込めた。 「ボクが、男の子だから?」  すると先生は、ボクの髪をやさしくなで始めた。その感触がボクを震わせる。でもこれは、恋の最期を憐れに思った神様からの、いじわるなプレゼント。  明日からボクは、この指の感触を思い出すたびに、泣かなきゃいけなくなるんだね……  トウヤ先生が黙ってしまった。動いているものは、先生の指だけになる。なんなら、もうこのまま、世界が終わってしまえばいいのに。  ふと、先生の指が止まる。 「別に、男とか女とかじゃなくて。ほら、セイトにそんなことされたら」  先生は、そこまで言ってまた黙る。  何、センセ。やっぱりボクじゃ…… 「変な気持ちになっちゃうだろ」  先生の声には、笑いが交じっている。冗談のようで、冗談じゃないような。  センセ、ひどいよ。それじゃ、死ねない。 「変って、どんな?」  先生の顔を見上げる。涙が頬を伝うのが分かった。  トウヤ先生が驚いている。そして困ったような、それでいて照れたような顔で横を向く。 「こんなことをしたくなる、気持ちとか」  その途端、先生の腕がボクを抱え、先生の胸へと押し付けた。  うそ、うそ、うそ……  自分に起こった事が信じられない。もしかしてボク、今、先生に抱きしめられてる?  意識した瞬間、止まっていたボクの心臓が、動き出した。しかも激しく。先生にもその音が聞こえそうなくらいに。 「ほ、他には?」  さらに訊いてみる。でも、口の中がカラカラ。何か飲みたくなる。  センセ、ボクに飲ませて。  顔を上げ、少しだけ唇を前に出す。トウヤ先生もボクを見て、そして顔を近づけた。  触れた唇が熱い。我慢できず、先生の首に腕を回す。軽く口を開けると、先生の舌がボクの口の中へと入ってきた。  舌と舌が絡まり、先生の唾液がボクののどを潤していく。  体に力が入らない。嬉しさに溺れそうで、先生の首に一生懸命しがみつく。  と、ボクのお腹に熱いものが触れた。 「センセ……」  先生の手が、ボクのシャツの中へと入ってきて、ゆっくりと這い上がっていく。やせ細った体が少し恥ずかしい。先生の指がボクの肋骨の上を通り過ぎ、そして硬くなった敏感な先っちょに触れる。その瞬間、体中に電気が走った。 「あっ」  体がボクの意志とは無関係に、ビクッと跳ねる。あそこが……痛いほど硬くなったボクのおちんちんが、先生の足に当たった。  見なくても、触らなくても、あふれ出したいやらしい液体でびしょびしょなのが分かる。このままじゃ、先生の服を汚してしまいそう。でも、気持ち良すぎて、思わず腰が動いてしまう。その動きが止まらない。  先生の手が、ボクの胸をまさぐっていく。その度に、頭の中が痺れるよう。止めようとしても、小さな喘ぎ声がボクの口から洩れ出した。  とうとう先生は、ボクのシャツをまくり上げた。先生の目の前に曝された骨の浮いた白い胸とピンク色の蕾。先生が顔を寄せ、そしてその蕾を下で掬い取るように舐めた。 「センセ……センセ……」  体を駆け巡る電気に、ボクの体が二度、三度、痙攣を起こす。先生がボクの体を抱き上げ、そしてベッドへと横たえた。  シャツを脱ごうとして、頭の上で手首に絡みつく。まるで手錠をはめられたように、ボクは両腕を上げたまま、トウヤ先生に無防備な体を曝した。  ボクの短パンに先生の手が掛かる。一瞬だけ先生がボクを見たけど、ボクが頷くと、短パンは下着と一緒にゆっくりとボクの足から離れていった。  透明な液体にまみれたボクのものを、先生が見つめている。そして顔を近づけると、口を開き、優しく咥えてくれた。  とろけそうな快感がボクの下半身と、そして頭の中を襲う。もう、何も考えることができない。 「もっと、もっと」  イケナイこと、しようよ。 《了》

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