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第40話
「だーかーらー!気が早っ…って…樹優…?どした?」
弟と喋ってたら樹優が急に大人しくなった。酒はかなり強いから酔ったわけではないはずだ…そう思って見てみるとボロボロと大粒の涙を流していた
「きっ…!樹優さん!ごめん!!なんかごめん!」
「ちが…違うんです…俺みたいなやつが相手なのに…お父さんも正則さんも…こんなに良くしてれて…俺…嬉しくて…」
「「「可愛い!!」」」
涙を拭う樹優の姿に親子3人で声が揃ってしまった。
「親父も正則も樹優のこと変な目で見るなよ!」
「だってねぇ!可愛い!久にぃ羨ましい!俺もそんな相手欲しい!」
「お前はまずもっと男を磨け。正則。まだ男気は久則には敵わん」
「えぇ!!俺頑張ってるのに!」
「お前はすぐ調子に乗るからな。久則に学べ」
「へいへーい」
「あははっ…本当…ありがとうございます…俺…偏見がありました…金持ちはきっと傲慢で自分勝手な人が多くて…」
「あぁ。それはあるかもしれないねぇ。でもね。私はね元々貧困層の育ちだったんだ。それを拾ってもらえてね…今があるんだよ。だから豪華な暮らしは向かないしうちには家政婦とかもいないし屋敷も同じくらいのところと比べればそんなに大きくはない。私達が贅沢をできる分のお金は誰よりも努力し続けてくれる社員のみんなにあげた方がいい。生きやすい環境で仕事をすることで成果もでるんだ。だから社員の考えを皆で共有し皆で考え皆で作り上げる。それが私達だと自負しているんだよ」
父はこれまで一度も傲慢な態度を取ったことはない。常に周りを思い考え行動してきた。厳しいところもあったがそれが全て俺達にとってプラスになる。そういったところも尊敬するうちの一つだ。
「そう言う考えだから久則さんも素敵な人なんですね…俺…本当に…彼に救われたんです…彼がいなければ今がこうして笑っていられたかわからない。久則さんに俺は生かされているんです。随分と長くかかってしまいましたが…今後もずっと…出来ればこの命尽きるまで彼の隣りにいたい…互いに思い思われて時には喧嘩もするのかもしれない…けれどまた一緒に乗り越え生きていけるように…そういう関係を築きたい。そう思っています。彼の人格だけでなく自身ももっと成長していきたい…見守っていてくれますか?」
「あぁ。勿論だよ。君たちはこれから始まるんだ。私達にできることであればいつでも頼ってきてほしい。もう、君も私達の家族だとそう思っているんだ…」
「はい!」
樹優は力強く頷いてくれた。その姿にまた目頭が熱くなって…
ねぇ…樹優…始まりはさ…君にとってはいいものではなかったよね。
でも俺にとっては本当に良かったことと言えるんだ…。
他の誰でもない樹優だから…
気になるあの子から今こうして隣で手を取り合い一緒に笑える相手が君で本当に俺は幸せ者…
樹優…これからの人生の方が長い。だから…ずっと側にいて…命尽きるまで側にいて欲しい…
それが夢ではなく現実になるように俺も生きていく…君と一緒に…
fin.
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