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第34話
「あっ……! あんっ、あ……っ」
ぬぷり、と崇嗣さんの指が入ってきた。内部を擦り、まるで後の行為を思わせるような抜き差しする動きに、マルはそれ以上腰を上げていることができない。先ほど達したばかりの性器は硬く張りつめ、ぽたぽたと滴を零していた。それがシーツに擦られるたびに強く甘い刺激となって、マルを苛む。
「あ、あっ、あぁ……っ」
「挿れるぞ」
硬く張りつめた崇嗣さんのペニスがマルの内部に入ってきた瞬間、スパークするように頭の中が真っ白になった。
「ん……っ、あっ、あんっ、あぁ……っ」
汗に濡れた前髪を掻き上げるように額にキスをされる。その手が愛撫するように、達したばかりのペニスに触れた。
「あん、あ、あっ、あっ、あ……っ」
快楽が強すぎて、全身がバラバラになりそうだ。意識を保っているのがつらく、もう無理だと思うのに、崇嗣さんのペニスで内側を擦られるたびに、マルの内部はもっともっとと強請るように彼の性器を締め付けてしまう。その動きは欲望に忠実で、淫らだ。
どくどくと、壊れそうなほど鼓動が鳴っている。マルを抱きしめる崇嗣さんの心臓も、同じくらい速い。ぽたり、と彼の汗がマルの首筋に落ちた。マルは顔を近づけると、崇嗣さんの唇にキスをした。
「……もっと、もっとしてください」
あなたが好き……。
「……くそっ」
薄明かりの中で、切なげに眉を寄せる崇嗣さんの顔が見えた。彼の口づけを受けながら、マルはそっと目を閉じた。
これ以上望むことは何もない。そう思えるくらい、マルは幸せだった。
ヴィオラが指名手配されている。マルがそのことを知ったのは、最近崇嗣さんのようすがおかしいことに気がついたせいだ。外を歩いていても、どこか周囲を警戒している。マルが理由を訊ねても、何でもないと笑って誤魔化されてしまう。
「しばらくは家から出るな。仕事には俺だけでいく」
ついには朝食後、崇嗣さんからさりげない口調で告げられたマルは、びっくりして皿の上に付け合わせのトマトを落としてしまった。
「何かあったのですか?」
「何もないよ」
崇嗣さんはテーブル越しに腕を伸ばすと、「ついてるぞ」とマルの口の端についていたスクランブルエッグを摘み、そのまま口に含んだ。
心配することは何もないと崇嗣さんに言われても、マルの不安は拭えなかった。仕事の準備をして出掛ける彼の後をついてまわるマルに、崇嗣さんは苦笑した。
「心配するな。念のための用心だ」
「で、でも……っ」
用心が必要だというなら、崇嗣さんはどうなのだろう。
思わず言い募るマルに、崇嗣さんは腰を屈めキスをした。
「いってくる」
マルの髪をくしゃっと撫でると、崇嗣さんはそのまま出ていってしまった。
『一体何がそんなに心配なのさ。あの人間も言ってただろう、何もないって』
崇嗣さんがいなくなった後も、心配そうに玄関の前をうろうろしていたマルに、ヴィオラが呆れたように言った。
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