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『うーん困ったねぇ……はてはてどうしたものか』 ノイズの走る通信、安定しない電子の粒子で映るドクターロマニの表情からは、“焦り”の2文字はまるでうかがえかなかった。 「…おい」 『わーっ怒らないで! 分かってるよ、ちゃんと早急に手は打つよ!』 オルタがドクターロマニと話しているこの場所は、吹雪の寒さが届く浅い洞窟。 英霊であるオルタに寒さは大したことではないが、彼の腕に抱えられている立香には大したことである。 いつもの立香ならどうってことない。「寒い~~っ」と言ってかじかむ指先を、自分の吐息で暖める姿がオルタの脳裏に浮かぶ。 だがいつもオルタに見せる快活な表情はなく、酷く蒼白な立香がそこにはあった。 『魔力切れ……かぁ。なんて運の悪い』 「とっととどうにかできねぇのか」 『とっととったってねぇ……。オルタ君も分かってると思うけど外、その天気だからね? オルタ君が思うほど早くはムリだよ』 粒子の彼がうんうん、と頷くのを見て、軽く苛立つオルタ。それをいちはやく察知したロマニは早々に『じゃあね!』と通信を切ってしまった。 とにもかくにも、 こんな一時しのぎの洞窟では極寒の中では自殺行為だ。 自分はまだいい。1度は死した、英霊の身なのだから。 それも本来の姿とは異なる、異質な存在。 「狂王」と、そう呼ばれた自分を全て受け入れたのは腕に抱えるこの少年が初めてだった。 先の通信で、今いる場所が広大なカルデアの敷地内であることはわかった。 ロマニの話だと、自分たちがいる近くに、通信の為の中継地点、小さな家があると言われた。 そこまで行けば暖房設備は整っているはずで、魔力切れと寒さで震えている立香の、寒さだけはどうにかできるはずだ、と。 立香の身体に雪が当たらないように抱え込み、オルタは全身を叩きつける吹雪の中を歩んでいった。 そもそも、なんでこんな状況になってしまったのか。 今日のレイシフトは種火集めのみで、本来ならばサーヴァントたちにも、立香にもそんなに負担にはならないものばかりだった。 ……それゆえか、本日最後の種火周回が終わり、カルデアへと戻ろうとした時だった。カルデアへとゲートは既に開いているのにも関わらず、その場で立香がフラリと近くにいたオルタへと倒れた。 レイシフトの波には乗れたものの、タイミングを逃した2人がたどり着いたのは雪のつぶて吹き荒れる極寒の地。 どんな所へと飛ばされたしまったのか、と一時は大層不安だった。……が、ここは感じる魔力的にカルデアの敷地内で間違いない、というオルタの一言に安堵したのか、立香はそこで意識を失ってしまった。 日頃の疲れ、その他が混じったものだろうと、ロマニも緊急性はないと言ったので、最初へと至るのだった。

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