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第5話
「そう、だったんだ……」
何だか、顔が赤くなっていく。勘違いが恥ずかしいのと、『愛する妻』という言葉が照れくさいのと、両方だ。陽介は、そんな蘭を見てふっと笑った。
「妬いてたのか?」
「別に……」
「不安にさせたのは悪かったけど、何だか嬉しいな。君が妬いてくれるなんて」
「だから俺は妬いてなんか……」
否定しようとして、蘭は思い直した。
「あのさ、陽介。この頃俺、仕事根詰めてたから、今日はオフにしようかと思うんだ。ちなみに市川の親、今夜暇みたい。……つまり、その、子供たちを預かってくれるって言ってる」
そのとたん陽介は、パッと顔を輝かせた。
「誘ってるのか?」
言うなり陽介は、ぎゅっと抱きしめてきた。無性に恥ずかしくなり、蘭はぼそぼそとつぶやいた。
「まー、最近付き合ってやってなかったし? みたいな……」
「理由は何であれ、嬉しいよ」
陽介が、ますます力を込めてくる。蘭は、彼を押し戻した。
「お前、遅刻するって!」
「ハイハイ。じゃあ行ってくるよ」
渋々といった様子で、陽介が離れる。玄関まで彼を見送りながら、蘭は今夜のメニューのことを考えた。昼がほうれん草メインだった分、晩は陽介の大好きなステーキにしてやろう、と。
了
※全体としても完結です。長らくお付き合いいただきありがとうございました。
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