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第10話 気まずいからではないっ

 朝、目を覚ますと、俺の横には、銀色狼の銀様がいた。どうも俺は人の時はレオ、狼姿の時は銀様と呼んでしまうクセが抜けない。レオな銀様も呼びやすい名前で呼んで良いって言うから、そのお言葉に甘えているんだ。  そんな優しい銀様が俺の頬を舐める。 「ん、銀様おはよう。ここどこ?。」 〔おはよう、具合はどうだ?。ここは野営のテントだ。〕 「野営?。盗賊団さんの?。あっ、優君は?。俺、優君を助けたくて、力足りなくて…。はぅ、い、痛い。」  俺は、銀様の首をもふもふしようと両腕を伸ばそうとしていたけれど、優君のことや銀様の呪いのことが気になって、ベッドから起きよう身体を動かした。そのとたん走る筋肉痛。腰は力が入らない。  そ、そうか、俺、昨日レオと…。  か、顔が熱い。 〔まぁ、今日はゆっくりと寝ていることだ。〕 「うう、誰のせいだと…。」 〔ほう、俺のせいなのか?。それは嬉しいな。〕 「ぎ、銀様だけのせいじゃないよ。ねぇ、優君は?。大丈夫だとは思うけれど、あれからユージーンさんは、優君のそばにいてくれてる?。」 〔ふん、あの黒豹はユウとやらを抱えてテントに籠っているから、どうしているか知らん。〕 「え。ダメじゃん、ないと思うけれど、万が一、ユージーンさんが優君に酷いことをしたら…。」 〔よその男の心配なんぞしなくても良い。それよりも海里、おまえだ。なんでおとなしく俺が来るのを待っていないんだ。魔力切れなぞ起こして。魔力は生命維持の力だ。それが切れたら死んでしまうことのが多いんだぞ。〕 「ひえっ、そ、そうなの?でも、おれ…。はっ、あっ、俺ってばテドールの魔力も奪っちゃったよ。うわっ、テドール大丈夫だったかなぁ…。って、うわっぷ。」  銀様のふさふさ尻尾が俺の顔を叩く。痛くないけども。 〔こら、言ってる側からまた違う男の心配か?。〕  銀様がふんすと鼻息を鳴らす。 〔奴のことは知らん。あれくらい放っておけばいいさ。  おまえのは枯渇状態だった。あれは危険だから二度とするな。今は俺の体液を直接身体に入れてやったからな。前より肌艶がいいはずだ。〕 「っな、な、なななな。」 〔礼には及ばんよ。むしろ役得だった。〕 「なななな。」  くっそー、くっそー、何が役得だ!。 〔あぁ、本当にな。  今回、誰が海里に魔力を注ぐかと言う話になったとき、「海里の褒美役だ」って、声が聞こえたかと思ったら俺は人化していたんだ。獣化のままでも構わないが、俺がここに居なかったら、おまえは誰かから、体液をもらわないといけなかったんだぞ。万が一にも下らん理由で、今回みたいな現状に陥ってみろ。〕  ごくり。空気が冷える。銀様、真剣に怒っているな…。 〔おまえにきついお仕置きをするからな〕  ききき、き、きついお仕置きって… 〔ふ、あれだよ、アレ。〕  と、言いながら銀様は鼻をふんすと鳴らす。  どれだよ。どスケベっ。 〔くおーらっおまえらっ!!。いい加減出てこいや!。馬鹿カイリ。いい加減念話を垂れ流すのやめれ!。銀狼も当て付け混じりに遊んでんな!!。〕  ツ、ツヴァイル!?、あ、え?聞かれてた?今の全部??。 〔海里は腰がたたないから、もう一日休ませる。どうしてもの用があるなら、俺が行く。〕 〔銀狼の顔見ても面白くもなんともないわ。俺だって心配してたんだ!。カイリの無事な顔くらい見せろ。〕 〔ふむ、海里のこの顔を見せても良いが…。後悔するのはおまえだぞ。〕  なーーーーーーー。なに言ってんの????。 〔ナニだな。〕 〔カイリよ、うるせーわ。ボリューム下げろ。銀狼、黒豹のやツが出てきた。一回こっちに来い。〕  優君もいる?俺も行くよ。 〔いんや、神子はいない。おまえさんが男に抱かれた顔さらしたいなら来て良いぞ。俺が速攻で塗り替えて喰ってやる。俺はそう言うの気にしない、てか、燃えるタイプだからな。〕  だから、言い方っ。 「グルルルルッ。」  銀様は、俺に寝ていろとばかりに毛布を被せると、俺の頬をペロッと舐めて、部屋から出て行ってしまった。  俺も一回寝具に包まれると、自力で這い出る体力もなくて、そのままおとなしく眠ることにした。  優君がそこにいないなら。俺の出番もないだろう。決して、今朝に限って知り合いに会うのが気まずいからではないっ。

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