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海の日(R18)
少しばかり大胆になっている自覚はある。仕方がないだろう、こんなに綺麗な海を目の前に自由に羽を伸ばせられるのだから。
俺は海が好きだ。いや、水が好きだ。プールも好きだ。水の中ではなぜだか無心になれる。昔から体調が悪くてもスイミングスクールに向かえば次第に元気になったし、夏の日は浴槽に水を張ってただぼんやりと沈むだけで心が穏やかになるのだ。俺にとって安息の場所である。
この一週間、この海の傍にあるヴィラにいるだけで心が安らぎ、凪いでいる。目の前に海、いつだって潜れる。さすがに疲れたらそのままこの窓辺の広いベッドにダイブできる。濡れたままだって構いやしない。このヴィラにはなにもベッドは1台しかないことはないのだ。
全身海水を纏ったままベッドに寝そべっていると必ず悠星が大判のバスタオルを手にやってくる。起きあがろうともしない俺の頭から水気を取り、体にぺったりと張り付いたラッシュガードと水着を脱がされ陽に晒さない身体を拭いてくれる。まったく、甲斐甲斐しい男だ。
家でももちろんなにかと俺の世話を焼きたがる男ではあるし、それを苦だとも思っていない様子なので俺から「あれやって」「これやって」とは言わない。悠星が勝手にやっているだけなのだ。
全身の水気が取れた俺の傍に悠星が寝転がり、潮でガシガシになった髪に顔を埋めながら露わになった胸元から腹部へと手が滑り落とされる。
「海の匂いも好きですけど、シャワー浴びません?髪ガシガシにかたまりますよ?」
「大丈夫だってこれくらい。乾けば平気。つか俺だけすっぽんぽんじゃん」
クスクス喉奥を震わせながら向き合うように身を捩り、身体を撫でる悠星の手を取った。
ーーここじゃなくて、ココ触ってよ。
俺の手で腹部から更に落とし、少しざらつく陰茎周りへ誘導させる。陰毛はヴィラに着いた初日に剃り落とされた。
身体を拭かれていたときから震えていた陰茎を悠星の手のひらに包ませ、その上から自身の手を添えてゆっくりと扱く。冷えた身体が熱を求めるように身を寄せ、じっと悠星の瞳を捉える。
「なぁ…悠星、ここ、チクチクして痒いんだけど」
「そうですね、また剃りますか?」
「んん…っ、…だったら、永久脱毛してぇ」
「それは嫌です。毛がある千尋さんも好きなんで」
パイパン趣味じゃねぇんかよと笑いながら手を動かす。陽射しを背中に受けながら、ここがどういう場所か急に現実に引き戻る。けれど誰も見てやしないし、ましてやバカンスなわけだ。ここでどんなことをしていたっていいだろうと直ぐに意識を手淫に集中させた。
自分の意思で扱いていても包む熱が悠星の手のひらであることに堪らず腰どころか全身が震え噴き出る汗を悠星の身体に擦り付けている。陰茎を包む手から人差し指を取って鈴口を撫で擦るように動かす。自身の指ではなく悠星の指を使って自慰に耽るのは陽射しを浴びていなくとも全身が発火するほどに熱くて気持ちが良かった。
「あっ、あっ…悠星…きもちい、気持ちいいよ」
声に出せば鈴口からとぷとぷと淫液が溢れ互いの指を濡らす。夢中で手を動かし続けながら悠星の温もりを感じていたくて額をぐりぐり肩に押し付ける。昔から気持ち良くなると同時に寂しさが込み上げる。悠星の傍でないと気持ち良くなりたくない。
「っは、あ…あ…っ!ゆう、せ…イく…イッ、ちゃう…ぅ…!」
絶頂が近付き声を殺すことなく思うままに声を上げ射精した。
悠星の手のひらにべったりと吐き出した精液を拭うつもりで手を取りぐちゃりと握り潰す。こんなことをしたって拭えるわけないのについつい水気を拭うようなことをしてしまう。こういうところが雑だと我ながら思う。
「はぁ…イっちゃった…」
「千尋さん、俺でオナニーするの好きですよね」
「うん…好き…」
頭上から降ってくる声と身体を包む熱、倦怠感に瞼が自然と降りてくる。
ーーああ、俺はまた深海へ潜っていくんだ。
遠くに聞こえる波の音と、俺の名前を呼ぶ男の声が波のように寄せては返していく。次に瞼が上がる頃には夜空いっぱいの星が見えるだろうか。今夜も、明日も晴れますように。
なんて素晴らしい休暇なんだろう。
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