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レインⅥおまけ①
「前々から疑問だったんだけど、なんでおまえそれ常備してんの。……っつか見てて怖いから、サプリみたいにガリガリ噛み砕くな」
「いるか?」
「あ、じゃあ念のためもらっとく。最近なんかきな臭いし。いや、じゃなくて!」
さも平然と向けられたケースに思わず手を出してしまってから、違う、と突っ込む。違う、そうじゃない。
成瀬が出て行った途端に、緊急薬であるはずの抑制剤を、おもむろに生徒会室で食うなと言いたいのだ。
もう「服用するな」ではなく「食うな」という評し方をせざるを得ないところが、本気で見ていて恐ろしい。この男に限って、妙なことにはならないと思ってはいるが、この数ヶ月ほどはあまりにも顕著だった。
先ほどもやけに成瀬に突っかかっていたし、苛々しているような感じもある。溜息を呑み込んで、宥めるように声をかける。
「気持ちはわからなくはないけど。あんまり常用すんなよ? 成瀬の前でしないの、説教されるってわかってるからだろ?」
成瀬なら、まちがいなくするだろう。言ったとおりで、気持ちがわからなくはないから、あまり口を出す気はなかった。けれど。
向原はと言えば、返事の代わりに、また一錠噛み砕いている。見かねて、篠原はもう一度呼びかけた。
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