13 / 38

暁光エンドⅡ2おまけ③

 ――気の毒、か。  ふと頭に浮かんだのは、いいかげん、あいつが気の毒だ、と言っていた茅野の言葉だった。  半ば反射で、気の毒もなにもあったものじゃないだろうと思った。たぶんそんな顔もしていたのだろうと思う。茅野は言っても無駄だという表情を隠さなかった。  自分にはないものをすべて持っている人間が、気の毒なわけがない。そう思っていた。けれど、俺の勝手で振り回している現状は、たしかに「気の毒」なのかもしれなかった。 「なんか、ごめんな。また引き込んで」 「引き込んで?」 「うん。生徒会。無理やりやってもらうようなもんじゃないってわかってるのにな」  今この瞬間でも、去年でもない。三年前の話だ。まだ中等部にいたころ。おまえはどうしたいんだと問われたとき、ここを変えたいと答えた。  生徒会に入ったのは、そのあとのことだ。学園を自分の思う方向に動かし始めたのも。  あのとき、俺は、アルファ優位の世界を変えたいと、どこか本気で願っていた。今とは、違う。 「そんなわけないだろ」 「……え?」 「俺が誰かに強制されて、嫌々やるとでも思ってんのか」  顔を上げる。ふたりきりの生徒会室で自分を見下ろしているのは、  知っている。嫌なことを、――自分の意志にそぐわないことをする人間ではないということは。でも、だから。 「そんなわけないだろ」  繰り返されたそれに、だから嫌なんだ、と思ってしまった。弱っているのをわかっていて、甘やかそうとしてくるから、だから嫌だ。  慣れてしまえば、自分はきっと自分ではなくなってしまう。何年も前から覚えていた危惧はじわじわと侵食範囲を広げている。本当に、嫌だ。 「付き合ってやるよ、あと半年」

ともだちにシェアしよう!