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暁光エンドⅡ2おまけ②
そういうところだけ見てると、忠犬っぽいよな、と笑っていたのは、篠原だったような気がする。
去年も、そうしてたぶん、三年前も。
「……もうちょっと近寄れって。つけにくい。それかいっそ脱いで寄こせよ」
「ん」
「んって、おまえな」
机ひとつ挟んだ距離があるから、という理由だけでなく、なんだか妙にやりづらい。その揺らぎを気取られないようにしながら留め具を外して、襟元に手を伸ばす。急所に近い場所だ。自分だったら絶対に触られたくないのだが、向原に気にするそぶりはなかった。
アルファの余裕ってやつなんだろうな。あるいは、自分でどうとでもできると踏んでいるだけかもしれないが。
「よかったな、目立てて」
「うん、よかった」
淡々と応じて、小さく苦笑する。茶番としか言いようがない朝の一幕を思い出したからだ。あれはまさしく茶番だった。けれど、だからこそ目立たなければ意味はない。
「あの子、華があるよな。なにをどうしたら自分が注目されるのか、よくわかってる」
母を見ながら、幼馴染みを見ながら、自分が身に着けていったものと、よく似ている。生まれ持った華がなくても、見せ方を知ればどうとでもなるのだ。そういうものだと身を以って成瀬は理解している。
「そうじゃないと生きていけなかったんだろうなって思うと、気の毒になって思わないこともないよ」
「同情でもしてんのか?」
「まさか」
自分はそんな大層な人間じゃない。あっさりと否定したものの、少し引っかかるものを覚えて、「でも」と成瀬は言葉を継ぎ直した。
「そうじゃない生き方もあっただろうなとも思う。俺がそうだったように。それでも今を選んだんだから、同情っていうのはおかしい気がする」
「気の毒にって言ったの、おまえだろ」
「まぁ、それはそうなんだけど」
曖昧に笑って金色のバッジから手を離す。窓から差し込む朝の光がきらりと胸元で反射していた。
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