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瞳に一番星①

「向原の目って、きれいだよな」  ふとした瞬間に、成瀬は突拍子もないことを口にすることがあった。平素の言動からすると信じられないような、衒いのない調子で。中等部にいたころのことだ。  口説いてるみたいに聞こえるからやめろ、と顔を顰めたのは篠原で、なんで、と不思議そうに問い返したのは成瀬だった。 「本当にそう思ってるから言っただけなのに。ほら、俺と違って色素薄いから、髪もだけど瞳も、光が当たるときらきらしてきれいだなって」  わかったわかった、とおざなりに流されたことを気にするでもなく、それに、と言葉を続ける。 「向原は迷わないから安心する」  迷いのない人間が存在すると、本当に思っていたのだろうか。それとも、ありもしないことを思いつくほど、この男にとってアルファは遠く完璧な生き物だったのだろうか。  迷わない瞬間なんて、ない。それが、今までにない感情に由来したことであれば、なおさら。それなのに「そんなことはない」と否定する気になれないのだから、アルファという生き物のプライドは、どうしようもないのかもしれない。

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