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クリスマス番外編①
「あら、あら。つい最近までサンタクロースの存在を信じてたのに、そんなこと言うようになっちゃったのねぇ」
からかうように電話越しに笑われて、皓太はうっと黙り込んだ。
べつにクリスマスに欲しいものとかないから、電話とかしてこなくていいよ、と反抗期さながらの台詞を放った結果がこれである。
なぜ母親という生き物は、こちらが思い出したくもないような過去を、楽しそうに語りたがるのか。
……いや、でも、つい最近なんてことはないだろ。
ないはずである。皓太は努めて淡々と否定を試みた。
「そんなことないと思うけど」
「あるわよ。まぁ、つい最近はさすがに言いすぎだったかもしれないけど、でも、けっこう大きくなるまで信じてたわよ、あなた」
「いや、そんなことは」
「小四くらいまでは信じてたわよ」
「……」
「覚えてない? 小学校に入った年に、お友達にサンタなんていないって言われてしょんぼりしてたけど」
「…………」
「祥平くんにそんなことないよって言ってもらって、持ち直してたじゃない。あなた、祥平くんの言うことは、親の言うことより素直に聞いたから」
そういえば、そんなこともあったような。信じてる子のところには来てくれるよ、みたいな常套句に縋った記憶がよみがえって、「そうだったかな」と皓太は相槌を打った。
そうだったかもしれない。あの人の言うことだから信じた、というよりは、まだ信じていたかったから、意地悪な同級生の発言より幼馴染みの慰めを取った、というだけな気はするけれど。
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