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クリスマス番外編⑧

「……え?」  思わず、そんな声がこぼれてしまった。榛名は冗談を言っているふうではない。居たたまれなくなって、皓太は幼馴染みを見やった。いつもの笑顔が張り付いていたものの、あれは完全に「やばい」と思っているときの顔だ。  その証拠に、なんとかしてくれと言わんばかりの視線が向原に向いている。  ……ちょっと人選に問題があるかな。  向原さんがどうにかなんて、絶対にするわけがない。現実逃避にそんなことを考えていると、焦ったような声が響いた。茅野である。 「いや、いる。いるぞ、なぁ!」 「え!? あぁ、……うん、いる、いる。大丈夫!」  俺に振るのかよ、とばかりのやけくそ気味な篠原の援護も含めて、ものすごく白々しかった。再び訪れた沈黙をよそに、榛名の顔はどんどんと赤くなっている。ものすごいスピードで思考が回転していそうだ。  恥ずかしいよなぁ、これは。そう皓太は心底同情した。かける言葉もできるフォローもなにひとつとして持ち合わせてはいなかったが。  今度の沈黙も、そう長くは続かなかった。ふっと向原が笑ったのを皮切りに、笑っちゃいけない状態だった食堂に笑い声が伝播していく。  唯一の救いは、馬鹿にしたような、ではなく、ほほえましい、かわいい、というふうな空気に満ちていたことかもしれない。  まぁ、本人にとってはなんの意味もないことだろうが。  真っ赤な顔で「知ってましたから!」、「冗談です!」と訴え始めた同室者から視線を外して、手元の作業を再開するふりをする。  せめて笑わないでおいてやろうという精いっぱいの気遣いである。こいつ変なとところで箱入りだよなぁ、とも思ったけれど、恥ずかしいだろうという気持ちは、まぁ、よくわかったので。  あと、成瀬の言う「ほほえましい」という感情も、ちょっとわかってしまったのだけれど。

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