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第7話
「では、明日は僕が村に行きます」
「ああ」
あの後、ザレアさんにもホンドンと似たようなことを言われた。しかし、ホンドンさんが不調であることは確かで、話し合った結果、明日の仕事は僕が変わることになった。
泊まりになるので正確に言えば明日と明後日なのだが。
本当は盗賊の件が片付くまではかわりたかったんだけど、却下された。
早く捕まえないと。
足音が聞こえた。
まだ遠いが複数聞こえる。
「リフ君たちが来たようですね」
「ああ、例の冒険者か。ファイアさんのことを考えると素直に感謝出来ねぇんだが」
「いいんですよ、僕のことは」
「だが……」
「それよりも僕がここにいたことは秘密でお願いします。バレると困るので」
僕はそれだけ言うと、グレイ達にバレないように周り道をして街の方に向かう。
「あれ? 怪我はどうしたんですか? それに、先程までここに誰かいませんでしたか?」
「あっ、えっと、通りすがりの冒険者が治してくれたんだ」
そんな会話が聞こえたので少しドキリとした。早く帰ろ。
彼らならホンドンさん達を街まで送ってくれるだろう。
ああ、今日はツイてない。
街に戻り、家までの帰り道を歩いていた。大通りから少しわき道に入ったところで女性の悲鳴がかすかに聞える。
声が聞こえた方向に迎えば暴力を振るわれている猫獣人の女性がいた。
「おいおい、大人しくしてろよ」
「俺たちだって本当は無理矢理なんてしたくないんだぜ?」
「はーい、じゃあ次は腹殴るねー!」
「ギャハハハハッ」
三人の男は下世話な笑い声を上げる。胸糞悪い。
「おいっ、あのお貴族様は街の外に行ったんだよな?」
「だから何度も言ってるだろ? あの子供を連れて門から出てくのを見たって」
どうやらグレイが街にいない間に悪さをしてるらしい。
クズが。
ああ、でも見つけられてよかった。周りに視線を向けてみる。この不愉快な会話に気づいている奴らが何人かいるが、見て見ぬふりだ。
助けようとする獣人なんて誰一人いない。
こういう時こそ、グレイに動いて欲しいんだけどいない間を狙われては仕方ない。それでも、僕のことはボコボコに殴るくせに……と不満を抱かずにはいられない。まあ、そんなことを考えても仕方がない。それよりもこの状況をどうにかしなければ。
僕は周りに身を隠せる場所を見つけた。
そこに座る。あぐらをかき、精神統一。身体全体に魔力を取り込み、行き渡らせるよう意識する。
「宵闇に宿りし美しき月華の精霊よ、脆弱たる私に御身の偉大なる力をお貸しください」
《身体強化 》
魔力がエネルギーに変換されるごとに身体全体が少しずつ暖かくなる。
僕は体も大きくなければ、力もない。それに攻撃魔術も使えない。
それても僕がAランク冒険者まで上り詰めたのはこの魔術があったからだ。
「少しいいかな。そこの冒険者さん」
僕は軽薄そうな笑みを浮かべ、三人の男のうち一人の肩を掴む。
そっちの猫獣人女性は……やっぱり知らない人か。うーん、三人ならいけるはず。できれば、穏便に済ませたいけど。
「そこの子、僕に譲ってよ」
襲われている女性を指さす。
「あ???」
「顔かわいいし、いくら?」
そう言って財布を取り出す。これで片付いてくれれば楽なんだけどなぁ。この方法、使いすぎて最近は反発されることが多くなってきたし。まあ大抵は譲ってくれるんだけど。だって僕、つい二週間前まではこの街で一番強い冒険者として名前が通ってたから。
「誰かと思ったらファイアかよ」
「朝のケンカ見たぞー」
「いや、あれは喧嘩じゃなくてリンチだよ、リンチ」
「ハハッ、一方的だったよなぁ。だっせぇ」
三人は僕を目の前にしてゲラゲラと笑いだした。
つい二週間前までは比較的従順だったのにもう手のひら返しか。
分かってたけど、ムカつくよね。
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