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第15話
「サリー」
「…………」
サリーの意識が戻らない。
大丈夫かな?
アルバリオンはあれからずっと無言だ。
彼とは話すこともないし、二人きりは気まずい。
そんな時、店のドアが開く。
一人の男が入ってきた。
さっきまで出ていく獣人しかいなかったから、なんか新鮮だ。
「よく見たらグレイのところの……って、目が合った」
僕はすぐに目を逸らす。しかし、彼はこちらに向かって歩いてくる。
「えっ? なんでこっち来るの?」
「邪魔するよっ」
彼は隣のテーブルから椅子を取ってきて僕の横に座ってしまった。
「名前知ってると思うけど、俺ルールーっていうんだ。改めてよろしく」
「えっと……えっ?」
「ここ、ご飯もお酒も美味しいよなー……って、アルバリオン! 服引っ張んなっ」
「ルールーさん。ファイアさんと距離が近いです。話すなとは言いませんから離れてください」
「はぁ? 別によくね? ……えっ、何? 俺の心配してんの?」
「いや……えっと……そうです」
アルバリオンはルールーとも僕とも目を合わせようとしない。
さっきから、なんなんだ?
「ふーん、そっか。まあ、そういうのいらねぇから。口挟んでくんな」
ルールーはそういうと、僕の顔を真剣な顔つきで見つめはじめた。
「……何?」
「………………いや?」
「いやって、言いたいことあるなら言いなよ」
「うーん……」
ルールーは考え込んでしまった。そして、唐突に「ファイアさんって可愛い顔してるよなーと思って」と、言い出した。
「はぁ?」
誤魔化されたと、直観的に感じた。まあ、気にすることでもないか?
「ブフォッ」
「うっわっ、きったねッ」
黙って会話に耳を傾けていたアルバリオンがビールを口から吐き出した。幸い下を向いていたから、それほど被害は大きくない。
アルバリオンとルールーはウエイターから台拭きを借りて、机を拭く。
その間、僕はさりげなくルールーを観察していた。
銀髪のロン毛を後ろで一つに纏めた髪型、青色の瞳。
「その髪、染めてるの?」
そう聞くと、ルールーは一瞬ニヤリと笑った。
「うん、そうだよ。気になる?」
気になる……けど、いいのか? 聞いても。
彼の容姿は昔の僕にとても似ている。何故そんな姿をしているのか?
偶然? それとも……
「いや、やっぱりいいや」
怖くなった。
君は昔の僕を知ってるの?
テーブルを拭き終わると、ルールーは料理とお酒を頼んだ。
「グレイの奴、ご飯に誘ったらまだ今日は花の手入れが終わってないとか言って……」
僕達は他愛のない話をした。
ルールーはよくグレイの話をしていた。
「グレイさんって花が好きなんだ、似合わないね」
「フハッ、確かに似合わない!」
ルールーの性格は地味な外見に似合わず、明るい。人好きする笑い方をする獣人だ。
「でも、花好きなのか? って聞いても絶対に頷かねぇんだよな、なんでだろ」
そんなこんなでご飯を食べ終えると、ルールーは店を出ていった。
なんで僕達に話しかけたんだ?
その後、ルールーが帰ってすぐにサリーが目を覚まし、僕達も帰ることにした。
お酒のせいでもう眠い。
帰ったらすぐ寝よう。
家に着く。
店に入ったのは夕方頃なので、夜だが時間的には遅くはない。辺りはもう暗いけど。
家の扉を開けるが電気はついていない。それに、人の気配もしない。
「ラック? ナリヤ?」
居間に入る。
しかし、誰もいない。
買い物にでも行ってるのかな?
心配になる。しかし、少し前に同じようなことがあったことを思い出した。
その時は焦って街中探し回り、大通りで仲良く歩いていた二人を見つけた。
何故汗だくなのかと聞かれたので探し回っていたことを話せば、子供じゃないんだからこのくらい好きにさせて欲しいと、ナリヤに言われてしまった。
確かに、プライベートまで僕に介入されたくないよな。
あの時は、せっかくの兄弟水入らずの時間を邪魔してしまった。
だから今回は心配する気持ちを抑え、僕は寝ることにした。
もう眠い。この眠気に身を任せてしまえばすぐにでも寝れる。
寝室に向かい、ベッドに寝転がる。
寝よう。
僕は意識を手放した。
しかし、朝目覚めても二人は帰ってきていなかった。
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