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第57話

そんな生活が始まってはや二日。 困ったことは特になく、仕事を終えて部屋に戻ってきた侑生と気が済むまで話していればあっという間。 「あ、洸ちゃん。お腹出てるよ」 今日も仕事を終え戻ってきた侑生は、カーペットの上で寝転んでいた俺を回収してベッドに乗せる。 「お腹冷たくなってるじゃん。」 「おお……侑生の手温かい」 ひんやりしたところを温められるのが気持ちいい。 大きな手の上に自分の手を重ねる。 「それで、なんで床に寝てたの?」 「なんでって……動くのが面倒だったから?」 「えぇ……?ここまであと数歩なのに」 「俺は面倒臭がりだからな。知ってるだろ」 「うん」 もう夜も遅い。 お風呂に入らないといけないのに、侑生と一緒にいる時間が少しでも短くなるのが嫌で動けない。 「洸ちゃん」 「ん?──んっ!」 唇が重なる。 半分覆い被さってきた彼を受け止めて、与えられる愛情にうっとりしていると、服の中に手が入ってきて、慌ててそれを止める。 「侑生っ、だ、誰か来たら、困る……っ!」 「来ないよ」 「でもっ」 「俺がここにいる間は誰も来ないように言いつけてるから大丈夫」 そうしてまた唇を塞がれた。 その間も目が合う。 けれどどうやらやめる気は無さそうなので、仕方なく流されてやることにする。 手を離して余計な力を抜くと、俺の気持ちを察したのか侑生は口角を上げて服の中にあった手を動かし、肌をそっと撫でた。 「んっ!侑生、その触り方くすぐったいっ!」 「わざとだもん」 「だもん、じゃなくて!あー!やめろってば!」 二人してクスクス笑い合う。 次第に侑生の手がいつもの様なやらしい触り方になった。 「あ……っ!」 いきなりキュッと乳首を抓られ声が漏れる。 まだ着たままの服が邪魔で、体を起こして上をバサッと勢いよく脱いだ。 なんだか酷くもどかしい。 周りのことを気にしなくていいなら、ずっと侑生とくっついていたい。 「洸ちゃんったら男前」 「……早く」 状況のせいで焦っている。 侑生が自分を責めてしまわないように、彼の目には俺が落ち着いているように映ればと思ってはいるけれど。 「侑生、俺……やっぱり、ちょっとだけ不安だ。」 「うん」 「だから、安心させて」 「もちろん」 でもきっと侑生はそんな俺をわかっている。 だから少しでも笑える時間を作ってくれているんだろう。 それに素直な思いは伝えた方がいい。 変に空回りしておかしな状況になってしまうのも困る。 手を伸ばして侑生の首に腕を回した。 引き寄せると抵抗することなく落ちてくる彼。 そんな侑生だから、俺は一緒にいれる。

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