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第59話
朝、目が覚めると隣にもう侑生はいない。
机の上には卵のサンドイッチが置いてあって、かけられたラップに『おはよう』と書かれた付箋が貼られてあった。
「起こしてくれたらいいのに」
ボソッと文句を吐いて、顔を洗い歯を磨いてからサンドイッチを食べる。美味い。
テレビをつけて天気を確認する。外に行くわけではないので意味は無いけれど。
今日は晴れ、昨日より気温が上がるらしい。
やることがない。あまりにも暇だ。
侑生はいつ帰ってくるのかをもう考えて、それを考え出すと次々マイナスな事が頭に思い浮かび出した。
もしこのまま、ずっとこんな生活が続いたらどうしよう。
もしもこのまま、侑生が帰ってこなくなったらどうしたらいいんだろう。
気持ちがどんどん沈んでいって、テレビを消して立ち上がった。
「……怒られる、よなぁ」
外に出たい。監禁されてる訳では無いし、辛い生活を強いられている訳でも無いのに、暗い気持ちをどうにか消化したくて部屋のドアに手をかける。そこはいつも侑生が出ていく場所。
ゆっくりとドアを開ける。
背中を屈め前を見て、『よし、誰もいない。』と思っていると「どうかしましたか」と低い声が降ってきた。
驚いて「わっ!」と声が出る。
「何か必要なものがありましたか?」
「……あ、いや……」
声をした方を見ると、体格のいい男性が一人立っていた。
絶対に侑生の部下だ。
「洸さんを部屋から出さないようにと、侑生さんから言付かっています。」
「……ちょっとだけ外の空気が吸いたくて」
「洸さんに伝えておきます。今は我慢してください。」
「はい……」
開けたドアを閉めながら部屋に戻る。
洸がいない時はあんな屈強そうな人が部屋の前にいるなんて初めて知った。
全然人の気配なんてしないし、物音だってしないから気が付かなかった。
「せめて話し相手になってくれる人がほしいなぁ」
寂しい。
今後もこんなことがあるのかと思うと、溜息が止まらなかった。
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