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第60話
侑生が帰ってくるまで、テレビをラジオのように使い、ただ寝転んだりスマートフォンをいじったりして過ごした。
それも飽きてベッドで足を抱え壁にもたれているとドアが開いて、顔を上げるのも億劫でじっとしているところを侑生が覗き込んでくる。
「洸ちゃん。ただいま」
「……おかえり」
侑生が俺の頭をサワサワと撫でる。
黙ってジッと顔を見ていると、彼は苦笑を零した。
「外に出たいんだって?」
「……ちょっとだけ」
「じゃあ明日、昼間にちょっとだけ。庭に出るだけならいいよ。」
「……いつまでこの生活続きそう?」
「うーん。なるべく早く終わるようにしたいんだけど」
侑生が困った顔をしてる。
そりゃあ侑生だって、こんな生活は嫌だろう。
「……我儘言うのはダメだってわかってるんだけど、まだまだ続きそうなら、せめて侑生が居ない時の話し相手が欲しい。」
「わかったよ」
「同い歳くらいの」
「え……ぁー……えぇ?同い歳くらいの?」
「なんだよ」
「それはなんか……俺がいない間に同い歳くらいの奴と洸が二人きりってことだろ……。気に食わない」
ムスッと唇を尖らせた彼に、「は……」と間抜けな声が漏れる。気に食わないって……そういう物なのだろうか。
「別にいかがわしい事はしないけど」
「それは分かってる。そこは信用してる」
「えぇ……?じゃあ何……?何で気に食わない?」
わからないのか、とでも言いたげな視線を寄越した彼に小さく首を左右に振る。
侑生は溜息を吐いて「だってさぁ」と拗ねているような声色で話し出した。
「俺が知らない洸の事も、そいつは知るかもしれないだろ。そういうのが嫌だ」
「侑生が知らない俺の事?」
「うん。俺に言えない事とか」
「ああ。なるほど?」
「え、なるほどって何。言えない事があるの?何でも言ってよ。隠し事は嫌だ」
「ナイナイ。……あ、嘘。朝起きたらメモじゃなくて起こして『おはよう』って言って。」
今朝の嫌だったことを思い出して伝えると、侑生はキョトンとした。
顔が良いから一見間抜けに見えるような表情すら整っている。羨ましい。
「朝、寝てても起こして。メモで言われる『おはよう』は寂しい。」
「……」
「朝会えなかったら、この時間まで侑生に会うのを我慢しなきゃいけないから。」
「うん……ごめん。」
謝っているのに嬉しそうだ。
抱えていた足を掴まれて、足を伸ばす。
すぐ近くに彼の顔が迫って目を閉じ、そっと唇が重ねられた。
「洸ちゃん、お風呂入った?」
「まだ」
「一緒に入りたいな」
「うん。だから待ってた。」
侑生の首に腕を回すと背中と膝裏に彼の手が回ってそっと抱き上げられた。
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