26 / 32

interlude6

 夜更かしは、おしゃべりに使った。  最後の夜に夜通しセックスすることも可能だったが、慶介は、そうしなかった。  将来のこと、夢。展望。  楽しい想像をたくさん膨らませた。  お菓子をつまんだり、ジュースを飲んだり、たまにころころと抱き合ったり。  イベントの続きで、相手の好きなところをひとつずつ言い合うゲームをして――恥ずかしさが爆発した理空の降参で、慶介が勝った。  寝返りを打つ理空が、慶介の肩に口づけながら尋ねた。 「水戸くんは、デビューしたら、スクールは辞めちゃう?」 「どうなんだろう。俺としては、全然勉強が足りないし通い続けたいけど、学校のシステム的にできるのかは分かんないな」 「そっか。僕もできれば、もうちょっと学校にいたいというか……本腰入れて、学び直したいなって思ってる。ちょっと、興味あることも出てきたし」 「そっか」  慶介は喜びを胸の内にそっとおさめて、理空の細い体を抱きしめた。  自分を変えたくて来た、と言った彼の願いが遂げられそうで、それが一番うれしい。 「ねえ、これ見て。しおりをよく見たらさ、参加者全員プレゼントがすごい豪華なことに気づいちゃった」 「へえ。全然見てなかった。どんなの?」 「好きなのを選べるみたい。高そうなアクセサリーや服とかもあるし、ゲームもある」 「見せて」  読み込み過ぎてぼろぼろになった冊子を受け取り、最後のページをめくる。 「新天堂スニッチ、PF5、海外ゲーミングPC……。なるほどな。スクールの気合のほどが見て取れるね」 「どういうこと?」 「こんなの見せられたら、もし1位を逃しても、スクール辞めたくはならないでしょ」 「あ、なるほど」  ほとんどの人は、好きでもない男と渾身のBLを演じて、何も得られず帰るのだ。  罪なイベントだと思う。 「ふぁ……さすがに眠たいかも。仮眠、意味なかったのかな」 「まあ、何回もエッチし……うぉっ」 「みとくんは、そぅぃぅはずかしぃこと、簡単に言ぅからぁ……っ」  あすの22:00に、運命が決まる。  森山理空は、ひとつ、大事な決意をしている。  水戸慶介は、それを知らない。 interlude6 End.

ともだちにシェアしよう!