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interlude6
夜更かしは、おしゃべりに使った。
最後の夜に夜通しセックスすることも可能だったが、慶介は、そうしなかった。
将来のこと、夢。展望。
楽しい想像をたくさん膨らませた。
お菓子をつまんだり、ジュースを飲んだり、たまにころころと抱き合ったり。
イベントの続きで、相手の好きなところをひとつずつ言い合うゲームをして――恥ずかしさが爆発した理空の降参で、慶介が勝った。
寝返りを打つ理空が、慶介の肩に口づけながら尋ねた。
「水戸くんは、デビューしたら、スクールは辞めちゃう?」
「どうなんだろう。俺としては、全然勉強が足りないし通い続けたいけど、学校のシステム的にできるのかは分かんないな」
「そっか。僕もできれば、もうちょっと学校にいたいというか……本腰入れて、学び直したいなって思ってる。ちょっと、興味あることも出てきたし」
「そっか」
慶介は喜びを胸の内にそっとおさめて、理空の細い体を抱きしめた。
自分を変えたくて来た、と言った彼の願いが遂げられそうで、それが一番うれしい。
「ねえ、これ見て。しおりをよく見たらさ、参加者全員プレゼントがすごい豪華なことに気づいちゃった」
「へえ。全然見てなかった。どんなの?」
「好きなのを選べるみたい。高そうなアクセサリーや服とかもあるし、ゲームもある」
「見せて」
読み込み過ぎてぼろぼろになった冊子を受け取り、最後のページをめくる。
「新天堂スニッチ、PF5、海外ゲーミングPC……。なるほどな。スクールの気合のほどが見て取れるね」
「どういうこと?」
「こんなの見せられたら、もし1位を逃しても、スクール辞めたくはならないでしょ」
「あ、なるほど」
ほとんどの人は、好きでもない男と渾身のBLを演じて、何も得られず帰るのだ。
罪なイベントだと思う。
「ふぁ……さすがに眠たいかも。仮眠、意味なかったのかな」
「まあ、何回もエッチし……うぉっ」
「みとくんは、そぅぃぅはずかしぃこと、簡単に言ぅからぁ……っ」
あすの22:00に、運命が決まる。
森山理空は、ひとつ、大事な決意をしている。
水戸慶介は、それを知らない。
interlude6 End.
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