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第6話

「....いる訳ねーか」 聖を抱いた後、何故か、大悟は惇生と初めて出会ったゲイバーにいた。 ここで知り合った悪友や自分狙いのネコやウケがグラス片手に笑顔で寄ってくる。 変わらず、大悟も笑顔で返した。 結局、その日は軽く飲み、適当な会話を済ませ、自宅に戻った。 ソファになだれ込むように座り込む。 誰もかれも、自分に気に入られようとする。 惇生みたいなタイプは初めてだ。 「どう落とすかなあ」 新たなゲームを見つけた気分だった。 近頃、退屈していたところだ。 翌日、構内で惇生を探した。 そう簡単には見つかる訳がない。 壁に寄りかかり、思案を巡らせていた。 惇生の幼馴染みという名の相棒、悠介の姿があった。 変わらない、万人受けする笑顔。隣にいるのは惇生ではなく、名前も顔も知らない女子だった。 小柄で悠介を見上げ、笑顔。 暫し、ぼんやり、2人を見つめた。 気づいたのは悠介だった。 「あれ?大悟。どうした?」 「え?ああ、別に」 惇生を探していた、とも、2人は恋人?と冷やかす事も忘れていた。 「美香、ちょっとごめん」 「うん」 悠介は女の子に1度、そう言ってから、大悟の肩に手を置き、少し歩いた。 「惇生をよろしくな」 「....どういう意味?」 「あいつ、人付き合い悪くってさ、友達も少なくて。あいつには言うなよ?大悟と友達、て知ってさ、嬉しかったんだ」 確かに嬉しそうな悠介の笑みを大悟は複雑な思いで見つめた。 「....てかさ」 「ん?」 「あの子。彼女?」 悠介が動揺した様子で肩越しに美香を見た。 「まだ。いいなあって思ってんだけど、可愛いだろ?」 「え?あ、ああ」 「取るなよ、お前、イケメンだし」 「....取らねーよ」 悠介は始終、にやけっぱなしだった。 「じゃ、またな」 「ああ」 悠介の隣の美香が笑顔で小さく頭を下げた。

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