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第1話
警官の朝飯はコーヒーに浸けたオールドファッションドーナツと決まっている。
昼下がりの街角、白塗りのパトカーの中に2人の青年警官がいる。
運転席にはダークブラウンのボサ髪と眠たげな目の中華系、助手席にはピンクゴールドの猫っ毛に柔和な面立ちの白人。
着ているのはブルーグレイの市警の制服だ。胸に輝く徽章は巡査の階級を示す。
二人とも市警のバッジが付いた八角帽を被り、細腰に巻いたベルトにS&Wモデル39を装備している。
助手席の警官が貧乏性に紙コップのコーヒーを啜り、ドーナツを口に運ぶ。
「警官の何がいいって、ドーナツとコーヒーが食べ放題なところだよね」
「それが目当てか」
「動機の一部ではある」
「素直でよろしい」
ヘルウッドの街では警官を対象にドーナツとコーヒーの無料提供を実施しており、彼らも専らその恩恵に浴していた。
ヘルウッドの治安は良くない。というのは随分穏便な表現で、端的に言って悪い。
街にはドラッグと銃が蔓延し、毎日のように人が死ぬ。
ギャングの抗争も日常茶飯事だ。映画産業で発展した華やかな表の顔と裏腹に、風紀は乱れまくっている。
ピジョンと劉は風紀課の相棒同士。
今は巡回の帰り道、街角にパトカーを停め休憩しているところだ。
ドーナツに夢中なピジョンの横顔をハンドルに突っ伏し眺め、既にして胸焼けしたように劉がぼやく。
「毎日よく飽きねえな」
「ただでもらえるんだから食べなきゃ損だろ、食費も浮くし」
「見てるだけで胃もたれする」
「劉はドーナツ嫌い?」
「甘いものはあんまり。パンダエクスプレスの方がいいな」
「チャイニーズもおいしいよね。炒麺とか」
劉がダッシュボードに置いた紙箱を掴み、伸びきった麺を割り箸に絡めて啜りだす。
ピジョンはそれを物欲しそうに眺めていたが、自分が独占するのも気が引けたか、箱詰めのドーナツを摘まんでみせる。
「一口食べる?」
「らはらいらねーっへ」
「そっか。じゃあ」
炒麺をもごもご頬張る劉に拒否され、スプリンクルを塗したチョコレートドーナツをひと齧り。
「ハードな仕事だからカロリー蓄えとかないとね」
警官とドーナツは相性がいい、パンケーキとメープルシロップ位ナイスなコンビだとピジョンは勝手に思ってる。
「ご馳走さん」
劉が無造作に割り箸を投げだす。炒麺を食べ終えるやシートを倒して仰向け、頭の後ろで手を組む。
「着いたら起こしてくれ。寝るわ」
涙をにじませてあくびを一発、うとうとまどろむ相棒をバックミラー越しに一瞥、ピジョンが口を開く。
「このあと予定は?」
「署に帰ったら始末書の山が待ってる」
「何したんだよ」
「セレブの駐車違反取り締まったクレーム。署長の友人なんだと」
「ご愁傷様」
「お前は?」
「とりあえずシャワー浴びたいな」
勤労意欲のかけらもなく生あくびを連発する劉に苦笑い、ピジョンが希望を述べる。
フロントガラスの向こうには荒廃したダウンタウンの光景が広がっていた。
ティーンエイジャーの不良がスケボーで滑走、消火栓に飛び乗ってアクロバティックなパフォーマンスを決め、仲間とハイタッチを交わす。
「そういや劉、こないだの手入れ覚えてる?チャイニーズマフィアの」
「空振りしたアレか」
「情報の漏洩が疑われてる」
「誰かがネタ流したってか」
「君じゃないの」
不意打ちで核心を突く。劉が片目を開き、意味深にピジョンを見る。
「は?なんで。証拠は」
「賄賂もらってるの見たぞ」
「あー……じゃあしょうがねえな」
劉が舌打ち、シートに寝転がる。ピジョンは大袈裟にため息を吐く。
「不良警官め……減俸や始末書で済めばいいけど、下手したら犯罪幇助で刑務所行きだぞ。相棒の誼で忠告しとくけど、そういうのはやめろよ。腐っても警官だろ」
「同郷の誼で泣き付かれちゃ断れねー」
「国なんて帰ったことないくせに」
ピジョンが口を尖らせば、制服の胸ポケットを探ってよれた煙草を取り出した劉がわざとらしく嘆く。
「女房やガキはどうでもいいってか?稼ぎ手がブタ箱にぶちこまれたら路頭に迷うぜ」
「まっとうな職に就いて家族を養えばいい」
「貨物船のコンテナで密入国してきた連中にまともな働き口があるってか」
「それは……」
鋭い皮肉の切り返しに言葉が詰まる。
劉がライターを苛立たしげに押し込み、よどんだジト目で紫煙を燻らす。
「世間の目は移民に厳しい。3Kの薄給でこき使われてポイ捨てがオチ」
「言い分はわかるけど」
「嫌でもギャングの使いっ走りになって、汚れ仕事に手ェ染めなきゃおまんま食わせてけねーの」
反省の色など全くなく開き直る。
チャイニーズマフィアを相手に情報屋のまねごとをしている相棒の身を危ぶむものの、それ以上は強く出れない。
ピジョン自身は強い正義感の持ち主だが、世の中が綺麗ごとだけで成り立たないのは痛感している。
正義と正論がイコールなら誰も悩まないのだ。
劉が帽子の庇の下からチラチラ見てくる。
「上にチクるか」
「見損なうな」
「いい相棒を持って幸せだよ」
紫煙に乗じる吐息に安堵が滲む。
渋面を作ったピジョンは、相棒への甘さを自虐しながら苦言を呈す。
「今回だけだぞ」
実にちょろい。目元にかかる前髪の下で劉はうっそりほくそえむ。
ピジョン巡査は死ぬほどお人好しであり、情に訴えられたら即オチだ。
彼自身がトレーラーハウスで産声を上げた、娼婦の私生児というのも関係しているかもしれない。差別や貧困に苦しむ人々を助けたくて警官になったのに、捜査の大義で追い詰めては本末転倒だ。
「君のためじゃないからな。旦那や父親が犯罪者だからって、関係ない家族まで道連れにするのは本意じゃない」
厳しい口調で注意するものの、劉は「ヘイヘイ」といい加減に聞き流す。
不真面目な態度に反感を持って腐す。
「袖の下欲しいだけだろ」
「否定はしねェしできねェな。一応言っとくけど、俺以外のヤツだってみんなやってる」
「みんなってのは誇張表現だな。俺は入ってない」
「殆どみんなさ」
警察の腐敗と堕落は深刻だ。
殆ど唯一の例外のピジョンを除き駐車違反の見逃しは当たり前、潔癖が過ぎて融通が利かない彼にとっては苦々しい限りだが賄賂と引き返れば大抵の犯罪は見逃される。
劉の手入れの日時漏洩も警官としてあるまじき言動なのは否めないが、限りなく黒に近いグレイゾーンに目を瞑るのも事なかれの処世術ではある。
ピジョンは憮然とし、口元に塗された砂糖を指で拭く。
「匂いがこもるから外で喫え」
「りょーかい。序でにションベンしてくる」
「放尿も軽犯罪」
「罰金とんの。生憎持ち合わせが」
「賄賂とったろ」
「煙草カートンで買ったから」
「次から自己申告は猥褻罪に問うぞ」
さらに苦虫を噛み潰した顔で相棒を追い立てる。
咥え煙草の劉が肩越しに手を振り、路地の奥へ消えていくのを見送ったあと、ピジョンは特大のため息に暮れた。
「……間違ってないよな、俺」
上手く丸め込まれた気がしないでもないが……。
緩く頭を振ってモヤモヤを払拭、ふと顔を上げればフロントガラスの向こうに男がいた。
ショッキングピンクに染めたベリーショートの髪、カラーコンタクトを入れた瞳は爬虫類のごとし。パイソンのレザージャケットに恥骨が見えそうなローライズのパンツを合わせ、極め付けはゴツいブーツを履いている。
どう見てもカタギには見えない人種だ。
「アレは」
男が堂々と車で乗りこんだのは駐車禁止のスペース。
反射的にドアを開けて飛び出す。
「すいません、そこのあなた」
「あァん?」
破廉恥なピンク頭が手庇を作り、伸び上がるように周囲を見渡す。やることなすこと芝居臭くていかがわしい。
男が滑稽なまでの驚きの表情を作り、自分の顔を指さす。
「ひょっとして俺様ちゃんに言ってんの、お巡りさん」
「あなたしかいませんよ。そこは路上駐車禁止です」
「パトカーはいいのかよ」
「あそこは駐車オーケーのスペースです。あなたは建物のド真ん前に停めてるじゃないですか、これじゃ他の人が入れません、ものすごい邪魔です」
男が降りてきた高級車を指さし、次はパトカーを指さして説明する。
「動かしてください」
「やだ」
「どけてください」
「やだね」
下手に出れば耳をほじほじ突っぱねられ、ピジョンはやや強い調子で繰り返す。
「どけてくれないと切符を切るしかありません」
「交通整理が仕事なわけ?」
「違反は違反なんで。現行犯を見逃せません」
男の挑発を毅然と受けて立てば、サングラスの奥の眸が面白そうに弧を描く。
「お前さァ……俺のツラ知らね?」
男に聞かれ、まじまじとその顔を見詰める。
頬骨の高く張った精悍な容貌はそこそこ男前の部類だが、知り合いではない。記憶している指名手配犯のポスターとも一致しない。
ピジョンは事務的な動作で帳面を繰り、胸ポケットに挟んだボールペンをとってナンバーを記していく。
「どこの誰でも関係ないですよ、駐車違反は動かぬ事実でしょ。むしろ動かしてほしいけど」
「ンなこと言って、ネタバレしたら後悔すンじゃねーの」
迂遠な言い回しに不安が募り行く。
ひょっとして名のあるギャングの親玉か。
パトロールと違反車両の取り締まりが主な任務の下っ端警官には情報がおりてきてないが……
「どうしてもよそに移してくれませんか。こんなデカいのが路地を塞いでたら皆迷惑します、市の規定でも停めちゃいけない事になってるんです」
ボールペンの芯で小刻みに帳面を突き、哀れっぽく促す。できれば穏便にすませたい、他人に高圧的に出るのは苦手だ。
交渉と言えるほどの打算もなく、困りはて懇願するピジョンに対し、男が余裕ぶって頬杖を付く。
「そうだな……手錠見せてくんね?」
「は?」
「コスプレ趣味のニセ警官じゃねーの」
あからさまな侮辱にむっとし、胸のバッジを引っ張って見せ付ける。
「本物ですよ、巡査の徽章が目に入りませんか」
「よくできたパチモンかも。証拠の手錠見せてくれたら納得してやる、銃でもいいけど」
「無茶言わないでください、民間人に銃なんて貸せません。万一の事があったら」
「なら手錠で手ェ打ってやる」
男が重ねて片手を揺らす。
無駄に態度がデカいのは何故だ。性格に起因するとはいえ、本来取り締まるべき立場の自分がへりくだった敬語を使い、相手がなめきったタメ口を叩いているのも腑に落ちない。
「見せるの渋るってこたあやっぱモドキのニセモノか。どうりでおどおどヘタレなはずだ、警官ってなあフツーもっと威張ってるもんだ、出会い頭にボンネットに手ェ付かせてスパンキングプレイしたりよ」
「先入観が酷いですね。プレイってなんですか」
「放置プレイ的な。お相手が盗撮してる可能性もあるな」
「付き合いきれません」
「ケチケチすんな、いーだろ別に減るもんじゃなし。パチモンじゃねえってわかりゃ引いてやる」
ああもうめんどくさいな。くだらない会話を打ち切り、さっさとパトカーに戻りたい誘惑がもたげる。
空咳で権威を正し、扉の正面を塞ぐ形で車が乗り上げたアパートを指す。
「この家に何の用ですか」
「愛人ち」
「切符切りますね」
「待て待て、俺様ちゃんの話聞けって」
男がボンネットから乗りだして待ったをかけ、お人好しのピジョンが耳を貸す。
「10分、いや5分でいい。したら一発ヤッて出てくっから」
「耳を貸して後悔しました」
「仕事で時間とれなくてさ、久しぶりに会いに来たんだって。ほっといたらベッドで干上がっちまうよ」
「どうぞ、レッカー移動しときます」
「融通が利かねーなあ」
押し問答に舌打ち、パイソンのジャケットに手を突っ込んで紙幣を掴み出す。
「これで目ェ瞑ってくれ、な?」
男がウィンクする。
ピジョンは紙幣を突っ返す。
「買収には応じません。罪状を追加されたくなければ賄賂をしまってください」
「顔に似合わずガメツイな」
あらぬ勘違いをした男が懐をさぐり、紙幣を上乗せしようとするのを断固拒否。帳面から切り取った切符をフロントガラスのワイパーに挟む。
「それじゃあ」
「隙あり」
パトカーに戻ろうと踵を返した瞬間、無防備な臀に手が伸びる。
「ひっ!?なっ、あ」
「ゲット」
人さし指に手錠をひっかけ、回しながら勝ち誇る男。
一杯食わされたピジョンは真っ赤になって叫ぶ。
「返してください!」
「取引と行こうぜ。駐車を見逃してくれたら聞いてやる」
「で、できるわけ」
「欲しけりゃ力ずくでとってみな」
ボンネットに掛けた男が手錠を回してにやけ、いきりたったピジョンが腕を振り抜く。
男は面白がって手錠を操り、眼前にたらしたかと思いきや引っ込め、アクロバティックに右へ左へ投げ上げてピジョンの鼻面を振り回す。なんという手癖の悪さだ。
「ふざけるのもいい加減に―!」
甲高い金属音が鳴り、ピジョンの右手に手錠が噛まされる。
「えっ」
予想外の事態にたじろぐ。
「おっとワリィ、手が滑った」
「滑ったとかいうレベルじゃないぞ!」
男が手錠の片方を持ち、抗議を申し立てるピジョンを引きずって行く。
車から引き離して路地の暗がりに連れ込むや、手錠の鎖を配水管のパイプに回し、ピジョンのもう片方の手に残りの輪を噛ませる。
「公務執行妨害で逮捕するぞ!」
「事後に頼むわ。できるもんならな」
パイプに繋がれたピジョンがうろたえきって叫ぶのをよそに、男は彼が持っていた帳面を奪い、ボールペンで何やら書き付けていく。
「ほい」
「いたっ」
平手で額を打たれる。
帳面をビリビリ破り、『Sex maniac』-ヤリチン巡査とでかでか殴り書いた切符をピジョンの額に貼り付けた男は、壁に手を付いて至近距離で脅す。
「いいザマだなあ、さっきまでの威勢はどうした」
「くっ……」
まずいぞこのままじゃ。
無我夢中で手錠を揺すり立て脱出を図るも、手首を痛めるだけで意味がない。用を足しに行ったきりの相棒の顔が浮かび、必死に勇を鼓す。
「な、仲間。連れがいるんだ、もうすぐ戻って来るぞ、そしたらお前なんて逮捕だ、留置所にぶちこんでやる」
「じゃあとっとと事をすまさねえとな」
薮蛇だった。
スプリットタンで舌なめずり、男がピジョンの制服をたくしあげる。
「!なっ、待」
「俺様ちゃんに駐禁切符を切ったんなら処女切られても文句ねェよな」
「やめ、ぁっうっぐ」
男の手が胸板を這い回り、淡い突起を抓る。
反対の手はベルトを緩め、確信犯的にズボンをずりさげていく。
ブルーグレイの制服に皺の畝を作り、体の裏表を貪る手に追い上げられながら、辱めを耐え忍ぶ。
「警官の制服ってピッチリしててエロいよな。キュッと締まったラインがそそる」
「ッ!?」
タイトなズボンが張り付く臀をなでさすり、アナルの上を指圧する。
悪寒と紙一重の快感がぞくぞく駆け抜け、息を呑むピジョンの腹を手がよじのぼり、シャツのボタンをプチプチ外していく。
「愛人に会いに来たんだろ、さっさと行けよっァ」
「イけねーお巡りさんにゃお仕置きしねえと」
男の手が突起の根元を搾り立て、ズボンの中で淫らに蠢く。濃厚なカウパーがボクサーパンツの股間に恥ずかしい染みを広げ、抵抗の意志に反して前がもたげていく。
「テメェの手錠に繋がれて犯される気分はどうだ?」
「ンっく、ぁっあ、離せ、早く外せっこンなっ間違ってる」
男がピジョンの顎を掴んで前を向かせ、首筋に噛み付く。二股に分かれた舌先がうなじで踊り、ズボンの前が窮屈に張り詰める。
「勃ってんじゃん。バックで犯られんの興奮する?」
「しなッ……ぁっ、ンぁっあ」
股間を捏ね回しながら艶っぽく囁き、敏感にふくらむ会陰を剛直で削りにくる。
「ズボンの色変わってんじゃん、エっロ」
前開きのシャツをはだけられ、ピンクの突起と痩せた腹筋をさらしたピジョンは、鎖が許す限界まで手錠を引っ張って暴れるも、膝裏が不規則に笑いだす。
「手を抜け、頼むから」
男の手が直接ペニスを掴み、キツくしごきたてる。
「ン~~~~~~~~~~~~~っ!?」
ガチャガチャと忙しく手錠が鳴り、手首を削る痛みが走る。額に貼られたヤリチン巡査のレッテルが動きに合わせて揺れ、視界を遮るのが鬱陶しい。邪魔くさい切符の下、ピジョンの目は熱っぽく潤む。
ピジョンの背中に覆い被さり、器用にペニスを弄ぶ男。鈴口から溢れたカウパーを丹念にまぶし、裏筋や根元まで隈なく可愛がる。
「やらしー音聞こえんだろ」
「ぁっ、やっ、ら」
「呂律回ってねェな」
半勃ちのペニスが物欲しげにヒク付く。スケボーに乗った少年たちが路地の向こうを駆け抜けていき、危うく心臓が止まりかける。
「んうっ、ふぅう、ん~~~~」
喘ぎ声だけは漏らすまいと唇を噛むピジョンに対し、嗜虐心をそそられた男はさらに手淫のスピードを上げ、膝頭で股間の刺激を開始。
会陰を突き上げ捏ねくり回す動きに、手錠を激しく揺すってピジョンが叫ぶ。
「止めっ、待ッ、ふぁっあッ、そんなしたら出るっ、ぁッくっ」
「イッちまえよ、変態お巡り」
「~~~~~~~~~~~~~~ッあぁあ」
強引に射精に導かれ、マゾヒスティックな虚脱感にへたりこむ。
ピジョンが膝を付くのを許さず、二股の舌が耳に絡み、唾液を捏ねる音も淫猥に孔をほじくりだす。
「あーあ、ホントにイッちまった。表で遊んでるガキどもに見られたらどうすんだ、露出狂のケでもあんの」
「俺のせいじゃない、あ、アンタが無理矢理」
「路地で手錠されて、無理矢理股開かされて、そんでビンビンにおっ勃ててりゃ世話ねェな」
恥辱に火照る顔で俯く。ズボンには粘っこい白濁が飛び散っていた。制服を汚してしまった罪悪感で泣きたくなる。
が、まだこれで終わりではない。放心状態のピジョンの腰を引き立てズボンを剥くや、精液を塗した指をアナルにねじこむ。
「!ァあっ、ぐ」
異物感と激痛が内臓を圧迫、声を上げる。男は構わず指を増やす。
「痛ッ、ぬ、抜け」
「やだね」
「抜いてくれホント無理!!」
アナルに出し入れされる人さし指と中指と薬指、束ねられた三本指が媚肉をほぐしてこじ開ける。手錠を揺すって懇願するピジョン、恥辱と激痛に歪む顔にやがて違うものがまざりだす。
「ぁっ、あァっ」
膝がかくかく震える。ぱたぱたと白濁が滴る。男の指が奥のしこりに当たる度、今まで感じた事のない熱が渦を巻く。
「はっ……絡み付いてくる。本当にヴァージンかよ」
「こんな事してただじゃすまないぞ……絶対捕まえてやる……」
ピジョンの顎を掴み、ねじ切るように振り向かせ―
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ぁっあああんあ」
アナルにぶちこむ。衝撃に耐えられず倒れ込もうとした体を引き立て、激しい抽送で敏感な媚肉を巻き返す。大きい。太い。固い。身体の揺れに合わせて手錠が軋りパイプを研ぐ。
「ンぁっ、やめっ痛っあァっ、ンぁっぐちゃぐちゃ、腹ン中おかしっァっあ、服っ皺っできるからっ!」
「もー手遅れだっての、シャツもズボンもやらしー染みだらけ」
「ぁあっ、ふぁっあっあッ、ゴリゴリするなっンぁあっ、ふあっそこっやっ奥っ、当たってるっすごっ」
手錠をガチャガチャ引っ張り腰を振る、半脱ぎのズボンから反り返るペニスが微痙攣、剛直が直腸を滑走し前立腺を突きまくるたび強烈な快感が沸き起こって目を剥く。
「ぁあっああっあぁ~~~~~~~~~~~~~~!!」
男が中で出すと同時に、ピジョン巡査は絶頂した。
「はあっ、はあっ、はあっ……」
ズボンを脱がされたまま、前開きのシャツを閉じるのも忘れ、猥らがましい白濁が散る腹筋と色付く乳首をさらす。
ブルーグレイの制服はよれ、所々濃い染みができていた。
「またなお巡りさん、パロトール頑張れよ」
腰を抜かしたピジョンの前に鍵を放り、さっぱりした顔で男が出ていく。
車のワイパーにささった切符を破り捨て、意気揚々と愛人宅のドアをくぐる男と入れ違いに劉がやってきて、ピジョンの惨状にぎょっとする。
「おいおい……事後かよ」
「遅いよ劉……」
一陣の風が吹き、ピジョンの額の張り紙をひっぺがす。鍵を使って手錠を外し、相棒に肩を貸してパトカーへ連れていったあと、劉はバツ悪そうに頭をかく。
「あ~~~……一応聞くけど、何があった」
「駐禁切符を切ったせいだ」
ピジョンは助手席で膝を抱えて泣き出した。
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