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第2話
相棒が通りすがりの蛇に噛まれた。
「警官がレイプされたって被害届は出せねェよな……」
運転席のハンドルに凭れ、同僚の身に降りかかった災難を憐れむ。
ヘルウッド市警に勤務する巡査の劉は単身ダウンタウンをパトロールしていた。普段バディを組んでいるピジョンは署で書類仕事だ。
前回処女を切られてから駐禁切符恐怖症になってしまったピジョンに同情こそすれ、その分の仕事が自分に回ってくるのは勘弁願いたいのが本音だ。
「相手が悪かったな。うん」
ハンドルに突っ伏して煙草をすぱすぱ、ピジョンのツキのなさにあきれる。
怖いもの知らずなことに、先日ピジョンが注意したのは界隈で有名なマフィアの顔役。
劉とも面識がある……というか、ガサ入れのタレコミを指示した張本人だ。何故よりにもよってそんな厄種に関わるのかと頭を抱えた。
噂をすれば薮蛇、パトカーの運転席側の窓が軽く叩かれる。
「げっ」
変な声が出た。反射的に上体を起こす。
ベリーショートに刈った短髪を破廉恥なピンクに染めた男が、ウインドウ越しにニヤ付いている。
煙草を灰皿で揉み消し、渋々ウインドウを下げていく。
「ちす。世話んなってます」
「調子はどうだ?」
「ぼちぼち……アンタこないだウチのにちょっかいかけたでしょ、やめてくださいよ悪ふざけは。へこんじまってフォローが大変だ」
「運転席で膝抱えてしくしく?」
図星だ。
劉は苦虫を噛み潰した顔。対する呉に反省の色は全くない。
「野郎に手ェ出すとか最悪。どこまで終わってんすか」
「あっちが絡んできたんだよ」
「白昼堂々駐車違反するからっしょ、聞きましたよ愛人宅の前に車おいたって。庶民にゃ逆立ちしたって手が届かねェ高級車見せびらかしてんすかヤな感じ、バールのようなもので車上荒らしされちまえ」
「バールのようなものってなんだよバールじゃねえのかハッキリしろ」
「バールのようなものって名詞っすよミステリー読まないんすか」
「撲殺死体の凶器が不明の時に調書を埋める警察用語だろーがしゃらくせえ」
「クソ詳しいじゃないすか」
バールのようなもの議論を戦わせながら、愛人宅にしけこんでる間に硬貨で塗装削ってやろっかなと悪だくみ。
呉がぱっと手を開き、おちゃらけた態度で阿る。
「いやいや俺様ちゃんも反省してるぜ実際。見た目ヘタレでなよっちいくせに路上駐車ダメ絶対って譲んねーから、どこまでがんばれっかためしたくなっちまってさ。なかなかの腰付きだぜありゃ、骨格にのった筋肉と脂肪のバランスが絶品。警官の制服ってそそるよな、今度女に着せよっかな。ロッカーからパクってこい」
「コスプレに本物志向持ち込むの不毛っすね」
「口封じは体からっていうじゃん」
「発想が強姦魔っすよ。強姦魔だけど」
「これに懲りたら青臭ェ正義感振りかざすのはやめて寛容さを学ぶこった」
「そんな器用なヤツじゃないですよ」
「あれ、怒ってる?マジ?仲間思いじゃねーの、ひょっとして惚れてる?」
窓枠に両腕を乗せた呉が口を窄めて揶揄。サングラスごと目潰ししたい殺意が沸くが、突き指が関の山だ。
苛立たしげに会話を打ち切り、黒ずんだ隈ができたジト目で呉を睨む。
「と・に・か・く。アイツに絡むのはやめてください、たかり倒すなら俺一人で間に合ってるっしょ」
新しい煙草を咥えてライターで点火、苦い紫煙を吸い込む。
劉は呉に頼まれ大小様々な情報漏洩をしてきた前科がある。前回の案件でも呉は事前にガサ入れの情報を掴み、素早く撤収していた。
車体にもたれた呉が二股の舌先を躍らし、首にあてがった人さし指を一直線に滑らす。
「こないだは助かったぜ、間一髪首の皮が繋がった」
「脱皮は得意でしょ。罠からするする逃げてく」
「あと五分遅れてたらやばかった」
「今後ともご贔屓に」
内心忸怩たるものを感じながら、無愛想に世辞を述べる。
真面目がすぎて融通の利かないピジョンと違い、劉は向上心と正義感が著しく欠けた不良警官だ。
賄賂をもらって小悪党を見逃すのは日常茶飯事、呉をはじめとする裏社会の住人に顔を繋ぐのもグレイゾーンを渡り歩く処世術と割り切っている。今さらそれをどうとも思わない。
……が、清く正しく生きている同僚を悪徳に染める気は毛頭ない。
情熱をもって働くのはいいことだ。理想に燃えるのも結構。
劉が昔持っていて今は失ってしまった何か、たとえば純粋さとか良心とかいうものが、あの度し難いお人好しにはちゃんと備わっている。
できるなら、汚したくない。
「……新しいのに唾付けて飼いならそうったって無駄ですよ。アイツは落ちねえ」
憮然とした横顔に本音を悟ったか、黄色いサングラスの奥の目が弧を描く。
「庇ってやんの。優しいね」
「塞ぎ込まれちゃ皺寄せがくるってだけの話です」
「お前が遊んでくれてもいいんだぜ」
「悪ィ冗談」
喉の奥で低く笑って煙草の灰を落とす。だらけた姿勢で車によりかかった呉が、軽薄に話し続ける。
「そーそー、お前に頼み。このへんでオイタしてるガキ見たら俺んとこ持ってこい」
「オイタって?」
「うちのシマでドラッグ売ってる若造」
パイソンのレザージャケットに手をひっかけ、サングラス越しの目を愉快げに光らせる。
「最近こっちに流れてきたっぽいが、勝手されちゃ困んだよな。おまわりサンからもキツーく言っといてくれ」
「売人なんて掃いて捨てるほどいるっしょ。外見特徴は」
「すんげー美人」
「……男っすよね?」
一応念を押す。
「そ。年の頃は16・7、パツキンの白人のガキ。多分下の毛も。ストレイスワローの通り名で売り出してるらしい」
「野良ツバメか。どんなセンスだよ」
「燕の巣は美味いぜ」
当然のように頷く呉。
「はあ……覚えときます」
呉にチクるのは気乗りしないが、事を荒立てたくないのでとりあえず承諾しておく。
「用件それだけなら閉めますよ、パトロール中なんで」
「!おっと、」
不意打ちでウインドウを上げれば、危なく挟まれかけた呉が慌てて手をどかす。あせった顔に少し溜飲をさげる。
いっそ本当に挟んでやれば泣き寝入りする同僚の仇をとれたかもしれないが、命が惜しいので妄想だけにとどめておく。
バックミラーを一瞥すれば路上に取り残された呉が仁王立ち、ふてぶてしく笑っていた。憎まれっ子世にはばかる。
「……チッ」
無意識に舌打ち、片手を伸ばしてバックミラーを調整。呉を死角に追い出す。
毒蛇と腐れ縁を切りたい気持ちと賄賂の旨味が綱引きし、結局判断を保留する。
猥雑なダウンタウンをパトカーで流している時、ふと思い付く。
「ドーナツ買ってってやるか」
レイプされた心の傷がドーナツで回復するとは思えないが手ぶらよりはマシなはず。好物だしな。今頃始末書の山に埋もれてバテてるに違いない同僚を思い浮かべて口元を緩める。
路傍にパトカーを停め、ドーナツショップに入店。
「あー……これとこれとこれ。とにかく甘いので」
「スプリンクルとシュガー増し増しですね」
適当に見繕って詰めてもらい店を出る。
コイツを食えばちょっとは元気が出る……かもしれない。劉自身呉の蛮行を止められなかった責任の一端を感じている、ドーナツをワンカートンおごって罪悪感が消えるなら安いものだ。
「ん?」
コンソールボックスに箱をおいてから、違和感を抱いて振り向く。
パトカーが停車する通りに面した路地裏で、怪しい人影が蠢いている。背格好からして十代の少年グループか。
「なあ、いいだろ。初回はサービスするからさ」
片方は若い男娼か。どうやら交渉中らしい。
大柄な少年の首に腕を回し、一丁前に色目を使っている。暗がりに隠れてよく見えないが、喉仏が浮き出た首が美しいラインを描く。黒いタンクトップの下にはしなやかな筋肉が息衝いていた。
「一発で天国に蹴りこんでやるよ」
少年好きなゲイには垂涎の光景だが、劉にその手の趣味はない。
興味本位で男娼の顔に焦点を絞る。見たことない。新顔だ。主にピジョンがはりきるパトロールのおかげで、界隈の男娼とは大抵顔見知りだから断言できる。
ピジョンは未成年の売春に殊更うるさく、コンドームを無料で配り歩いた上、寝る場所はあるのかだの病気には気を付けろだの親身に世話を焼いてやってる。「母さんも娼婦だったんだ。だからかな、ほっとけなくて」と前に零していた。
「売れっ子になりそうだな」
誘い方が随分手慣れている。相当な場数を踏んでいるに違いない。腰に回った手を上から押さえ、さりげなく剥がし、媚びた目を光らせる。
「コイツをくらえばもっと飛べる」
「上物って噂だけど」
「どっちが?」
「両方かな」
金髪の少年がおかしそうに笑い、ずり落ちたスタジャンの向こうから体を擦り付けてくる。立てた膝頭が相手の股間を圧迫、タンクトップが捲れて引き締まった腹筋が覗く。
「ためしてみる?」
色仕掛けを中断した少年がジーンズのポケットからビニールの小袋を取り出す。中には白い粉末が封入されていた。
ドラッグの受け渡し現場。
「…………」
訂正、男娼じゃなくて売人だったか。いや、男娼兼売人か?呉の言葉が脳裏にもたげる。
「あれがストレイスワロー……」
面倒くせえ。ばっくれたい。
ドアの取っ手を掴んで逡巡するが、瞼の裏にチラ付く相棒の顔が柄にもない使命感を駆り立てる。
『こらそこ、なにやってるんだ!』
もし隣にピジョンがいたら、未成年の犯罪現場を絶対見逃さないはず。
馬鹿正直に突っ込んでいって、劉がその後始末をするはめになるはずだ。
ドアを開けたまま、なにげなく手を付いた助手席のシートはざら付いている。ピジョンが食べ零したドーナツの屑や粉砂糖のせいだ。
本来警官は二人一組で行動する。
ピジョンがパトロールに同行しないなら代理を手配するべきだったが、他の同僚はこのシートの座り心地を嫌い、「見回り位ひとりでいけんだろ」と適当こいて逃げていった。
劉もピジョン以外の人間が助手席に座るのは落ち着かない。劉はヘビースモーカーであり、パトカーには煙草の匂いが染み付いている。
ぶちぶち文句をたれながらも、この匂いを我慢してパトロールに付き合ってくれるお人好しはピジョン位のものだ。
束の間迷ったものの、長々と息を吐いて踵を返す。
「あー……お楽しみのとこ邪魔して悪いんだけど」
「やべ、サツだ!」
「逃げろ!」
劉が一声かけると同時、路地の奥へと逃げ去る少年たち。慌てて追おうとするが、行く手にタンクトップの少年が立ち塞がる。
「ストレイスワロー?」
万一人違いだったら困るので、声を低めて確認をとる。相手はうんともすんとも言わない……ということは、多分当たりだ。
下はスリムなダメージジーンズ、上は黒いタンクトップに赤を基調にしたスタジャンを羽織っている。
胸にはワンポイントのツバメの刺繍入り。
履き潰したハイカットスニーカーといい、典型的なハイティーンの家出少年スタイルだ。
まばゆいイエローゴールドの髪と好戦的な赤錆の瞳の取り合わせが凄味を含むほどに整った顔立ちと相俟って、アグレッシブな印象を際立てる。
「人の商売邪魔すんなよおまわりさん」
「麻薬の不法所持と売買でしょっぴくぞ」
「ラトルスネイクのスパイ?」
ストレイスワローの目が据わる。勘が鋭い。
「誰だそりゃ、フツーに仕事してるだけだよ」
「一瞬目が泳いだぜ、素直ないい子だなアンタ。ラトルスネイクが誰か知ってんだろ、あの陰険蛇野郎だよ」
俺の馬鹿。ハッタリかよ。
コイツはヤバいと警鐘が鳴り響く。腰の警棒を掴んで牽制、するより早く少年の足が風切る唸りを上げて旋回、劉の手首を蹴り飛ばす。
「!痛ッぐ、テメっ、ブタ箱にぶちむぞ!」
「脂汗浮かべていい顔だな」
骨が軋む激痛が脳天まで駆け抜ける。
地面に片膝付く劉のもとへ歩み寄り、制服の胸ぐらを掴む。睫毛が長い。眼球に刺さりそうなほど近い。
綺麗な顔に荒んだ表情。
「で、何の罪でぶちこむの」
「言ったろ、麻薬の不法所持と売買って」
「あっそ」
次の瞬間、ストレイスワローは思わぬ行動をとった。ビニールの小袋を一気に噛み裂き、中の粉末を排水溝に流したのだ。
「馬鹿っ!」
排水溝に這い蹲る劉の眼前で粉末は汚水に溶けて消滅。綺麗さっぱりからっぽの手を広げ、ストレイスワローがすっとぼける。
「おまわりさんが言ってるドラッグってなあ一体全体どこにあんだ?」
「はっ、証拠隠滅成功バンザイってか?尿検査すりゃやってっかどうかすぐ割れんだよ」
「売人が全員ジャンキーってのは偏見だな。ヴァージンなら?」
「専用キット使えば手からドラッグ検出できるって知らねーのか、所詮ガキの浅知恵だな」
強がる劉。白ける少年。
「じゃあさ、コレは?」
「!?」
驚愕する。劉が腰にさげていたはずの拳銃がストレイスワローの手に移っていた。
「スッたのか」
「俺のツラに見とれて気付かなかった?」
胸ぐら掴まれた時か。
「足癖悪けりゃ手癖も悪ぃな」
悔し紛れに憎まれ口を叩く劉の眼前で、珍しそうに拳銃をもてあそぶ。
「アンタを殺っちまえば目撃者はいなくなるよな」
「……得策じゃねェな」
「どうかな」
「警察は身内殺しに厳しいんだ、俺の死体が上がったら地のはてまで追っかけられる。大人しく返せ」
片手を突き出して催促する。ストレイスワローは銃を器用に回し、考える素振りをする。
「手ェ挙げろ」
「……」
「もっと上」
下手に刺激したらぶっぱなしかねない。
ストレイスワローが銃口を振って脅す。劉はゆっくりと路地に跪き両手を挙げる。
ストレイスワローが銃を構えたまま急接近、劉の腰をまさぐって手錠を奪い、それを彼の両手に噛ませた。
輪が嵌まる音、次いで金属の冷たい質感が手首を締める。
「くそ……」
しくじった。柄にもねえことするからだ、やっぱ帰りゃよかった。パトカーに置きっぱなしのドーナツが頭にチラ付く。
まあいい、コイツだって警官を殺すほどアホじゃないはず。
銃をパクられたのは痛恨のミスだし山程始末書を書かされるだろうが、それで済むなら安いものだ。
最悪バッジを剥奪されても、署を去るのを惜しんでくれる物好きはピジョン位のもの……。
「ただ殺しちまうのも芸がねェか」
「痛め付ける気か」
「殴る蹴るされんの好き?」
「マゾじゃねえよ」
「手の甲が擦り剝けるだけ殴り損だな」
こめかみに衝撃が炸裂。銃で殴打された。
「ぐっ、は」
瞼の裏に盛大な火花が散る。身体が崩れ落ちて視界が傾く。血と脂汗が流れ込んでぼやける視界を、薄汚れたスニーカーが占める。
「銃って好きじゃねーんだよな。ナイフのが向いてる」
痛てぇ。怖え。動悸がする。ストレイスワローが傍らに跪き、劉の頬を平手で叩いて起こす。
「ケツに銃突っ込んでぶっぱなされるのとナイフで犯されるんのがどっちがいい?」
ぶっ壊れてやがる。
ストレイスワローの意味不明な質問に、呂律の回らない舌を必死に動かす。
「ふざけ、んな。どっちも願い下げだ」
せっかちな瞬きで目を曇らせる血を追い出す。
遠近感がとち狂い、真上から覗き込む少年がやけに巨大に見える。
「ラトルスネイクの使いをただで帰しちゃなめられんだろ」
前髪を引き上げられる。唇に固い銃口を押し当てられ、弱々しく目を開く。
「しゃぶれ」
「ばっかじゃねぇの」
ぐり、とこじ開けて抉りこまれる。凄まじい異物感と圧迫感、せりあがる嘔吐感。銃が歯に当たって痛い。
「!んぐッ、んぅが」
「もっと開けろ。外れたら嵌めてやっから」
力ずくで押し込まれる。死に物狂いに首を振り逃れようとすれど無駄、前髪を掴んで固定される。
銃を使った悪趣味なフェラチオの真似事。
自分の拳銃で犯されている事実がちっぽけな警官のプライドを打ちのめす。
「あがっ、けは、も無理、開か、ね」
「まだイケんだろ?できんだろ?お口をいーっぱい開けてうまそうに頬張るんだよ」
涎でべとべとの銃口が一旦引き抜かれ、激しく噎せ返る。空気を貪ったあとは、言い訳を許さずまた突っ込まれるくり返し。酸欠に陥る寸前で解放され、また地獄に突き落とされる。
「御託はいいからとっととやれよ、遊んでると終わんねーぞ」
「無茶いうな」
「男のモノしゃぶった経験ねーの?口で気持ちよくすんだよ、でっかく固く育て上げんだ。気分出してフェラしねーと引鉄引いちまうぜ」
人さし指が引き金に沈むのが見え、生理的な苦痛と本能的な恐怖で涙の水膜が張った目を剥く。
「は、ぁんぐ」
朦朧とする意識の中、口腔の粘膜をこそぎ、喉の奥まで圧する銃に夢中で舌を絡める。火薬の味がして吐きそうだ。
「やればできんじゃん」
顎から大量の涎が伝い落ち、制服のズボンに染みていく。口の中が痛い。銃口がゴツゴツ当たる。絶え間ない吐き気と戦いながら疑似的なフェラチオを続けていると、スニーカーの靴裏が股間を踏み付ける。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッあぁあ」
じゅぽん、卑猥な水音をたて涎に塗れた銃口が引き抜かれた。
大きく息を吸い込んだそばからスニーカーでペニスを踏みにじられ、壮絶な激痛にのたうち回る。
「やめっ、馬鹿、痛てぇやめろもげる」
「靴跡付いちまったな」
「さわんな変態!痛め付けるだけなら脱がさなくていいだろ、そんなに俺の貧相な下半身見てえのかよ!」
ストレイスワローの手が制服のズボンに伸び、劉は暴れだす。
しかし両手を封じられた状態での抵抗は限度があり、下着ごとズボンをずり下ろされる。外気に曝された尻が寒々しい。
「男同士でも強姦罪って成立すんだっけ?傷害罪止まりだっけ?教えろよおまわりさん」
「ざけんな、とっとと消えろ」
「フェラじゃ気分出してたじゃん」
「お、前のことは黙っとく。ラトルスネイクにはチクんねーって約束する、ドラッグの事も報告しねえよ、勝手にしやがれ。俺は何も見なかった、今日ここにいなかった、それでいいだろ?手打ちにしてくれ」
ガチャガチャと手錠が鳴る、金属の輪が手首に食い込んで擦り剝ける、誰か通りかかれば大声で助けを呼びたいがこんな時に限って誰も来ない。
ストレイスワローに犯される。こんなガキに。冗談じゃねえ。ピジョンの二の舞なんざまっぴらごめんだ。
口の中が切れて鉄錆びた味が広がる。顎も怠く痺れ、関節が鈍痛を訴えていた。
赤い血が薄まった唾を吐き捨て、上半身でみっともなく這いずって、ストレイスワローに懇願する。
「見逃してくれんならお前に使えるネタよこしてもいい。ダウンタウンでノシてる売人リストやマフィアのシマ分け地図、欲しいだろ」
ストレイスワローはここ最近流れてきた新顔だ、交渉は有利に運ぶはず。
藁にも縋る思いで切り出したが、ストレイスワローはまるで耳を貸さず、劉の制服にどこからか出したナイフをくぐらせる。
「おまわりの制服ってエロいよな」
ナイフが生地を噛み、内側から圧をかけられ、プチンプチンとボタンが弾け飛ぶ。暴き立てられた薄い胸板、痩せた腹筋を直接揉みしだかれて鳥肌が広がりゆく。
「貧相な体ねェ。自分のことよくわかってんじゃん」
「うる、せェよ」
「感度は悪かねーみたいだぜ」
喉の奥で意地悪い蔑笑を泡立て、劉の背中に密着し、前に回した手で乳首をいじくる。
「!ッは、ンぅく」
器用な指が乳首の根元を搾りたて、先端を爪でひっかき、ねちっこく回していじめぬく。
「俺の手調べりゃドラッグ検出されるってのはハッタリ?」
「さあ、な、んぅっ」
「ドラッグの粉末がエッチな汗で溶けだして、乳首からしみこんでくぜ」
「男の、胸、さわって、楽しいのかよクソガキ」
吐息だけで喘ぐ劉。
「おまわりさんのクリ乳首を開発すんのは楽しいね。ほら見ろ、ピクピク勃ってきた。さっきまで引っ込んでたのに顔出して、もっともっとってねだってやがる」
「ッあ、は、やめ、ンっく、ぁっあっ」
巧みに動く指がが陥没した乳首をまめに育て、色付いた先端をほじくるたび、鋭い性感が駆け抜け声が上擦っていく。
拒む劉の意志に反して股間はもたげ、ペニスから先走りの汁が滴り落ちる。
「ド変態ド淫乱じゃんアンタ。ちょっといじくられただけで勃っちまうとかパトロール中も貞操帯してたほうがよくね?」
「しね、ェよ、やめろも、変っに」
「ひょっとして仕事中も妄想してた?犯人に組み敷かれてめちゃくちゃにされたがってたとか?路地裏でレイプ願望あったり?」
手錠をがちゃ付かせ弱々しく抵抗する劉。
目と鼻の先の地面に投げ出された拳銃が唾液に濡れ光る。
ドーナツ。パトカー。早く帰んねェとアイツが騒ぎだす……
「!!ッあ、ぁ」
「よそ見すんなよ」
乳首を限界まで引っ張られて悶絶、声にならない絶叫が迸る。
ストレイスワローが自らの耳たぶに手をやり、安全ピンを外す。
「集中力が足りねェみてえだな」
耳の裏側をなでる優しい声。鋭く尖ったピン先が遠のいては近付き、乳首を突いてはすぐまた離れていく。
「対不起、悪い、ちゃんとやっから」
「何をやるんだよ」
「お前の指っ、手、乳首、ちゃんと感じるのに集中すっから悪趣味なまねよせって、どけろよ物騒なもん!」
ヒステリックに喚き散らす劉の乳首の先端、針先がツプリと沈む。
「~~~~~~~~~~~~~~っ!!」
ストレイスワローが片手で口を塞ぎ、残りの手で安全ピンを掲げ、じれったいほどの緩慢さで乳首を貫いていく。
さんざん捏ね回されて芯から勃ち上がり、先端に血が集中し敏感になった乳首は、針がもたらす疼痛に切なく震える。
「仲間外れは可哀想だ。おそろいにしてやる」
「や、めろ。銃は持ってけ、制服もくれてやる、欲しけりゃ全部やっから」
失禁しそうな激痛をどうにかやり過ごしたあと、別の安全ピンが残りの乳首にあてがわれる。
針先がめりこむ。
皮膚の膜がギリギリまで張り詰めプツンと弾ける感触に続き、大粒の血が盛り上がる。
「んっぐ、ンぅっむ、ンぅっぐ!?」
塞がれた口の中で悲鳴が泡立ち、全身の毛穴が開いて脂汗が滲み出す。
芯から鼓動に合わせてずくんずくんと疼く乳首……外気に触れるだけで拷問だ。熟れた先端にぶらさがる安全ピンは、残酷な錘と視覚的な辱めの効果を兼ね備える。
「可愛くなったじゃん」
「!?ンっ、んぐんぅっ」
戯れに弾かれただけで電流のような激痛が貫く。今度は少し力をこめて引っ張る。
もげそうな激痛にペニスが痙攣、鈴口から少量の尿を漏らす。
銃フェラに続く乳首責め。一方的に与えられる痛みと恥辱が秘められた性感を開発し、被虐の官能を揺り起こす。
「ラトルスネイクにもケツ貸してんの」
制服をあられもなくひん剥かれ、乳首に安全ピンをぶらさげた劉の痴態を眺め、単なる世間話のような気軽さでストレイスワローが訊く。
「んんっ、んむ゛ぅむ」
劉が首を振り否定すれば、清々しく言い切る。
「そりゃよかった。アイツがヤッたあとに突っこむのは気が進まねー」
次の瞬間、これまでとは比較にならない衝撃と激痛が襲った。
「あっ、ぁっあ」
極限まで目を剥く。
異物を受け入れた事がないアナルを目一杯押し広げ、括約筋のキツい締め付けに抗い、前立腺を叩きまくる。
「痛ッぐ、ぁが、ぬけっ、ぁっぐ死ぬっ」
下肢を引き裂く激痛、内臓を底上げされる苦しみ、伸ばし捏ねられ曳き潰され呻く。アナルが切れて血が滴り、ストレイスワローの声が弾む。
「処女かよ。ごちそうさん」
「あっ、ぁっンあ、ふぅっぐ、ぁっあ」
抽送のたび即席のニップルピアスが揺れ、前後同時に新鮮な痛みが爆ぜる。
アナルの食い締めを味わいながら、劉の顎をねじって振り向かせ、ストレイスワローが囁く。
「さっき言ったこと忘れてねーよな。ネタを流してくれんだろ、ただで」
「わかった、流す、っから抜け、死ぬ、ぁッあっあ」
裂けたアナルから滴る血のぬめりに乗じ、一回り膨らんだペニスが直腸を滑走する。
「はぁっ、ぁっあ」
重力に従い乳首を引っ張る安全ピンの痛みが薄れてゆき、荒々しく前立腺を突かれる都度、何もかもを溶かすマグマのような熱が蠢く。
「きまり。今日から俺の為に働けよポリ公、上手にできたらご褒美ぶちこんでやっから」
「あっ、ンあッふぁっあ、たんま、ッああっィく、ィきてえっ!」
真っ赤に腫れた乳首で跳ねる安全ピンを見下ろし、前立腺を裏漉しする快感の荒波に呑まれ、二重スパイに堕ちた男は大量の白濁を放った。
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