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雫さまのことをお話ししましょうか
職務中の怪我で入院していた私のもとに来た父は、開口一番で退職を迫った。
「お前が職務に忠実で、誰かの役に立ちたいというのはわかる。
だが、命を懸ける仕事では、私たちの心労が絶えないのだよ」
したり顔の父は、そのまま続けた。
「そこでだ。
そろそろ可愛らしいご主人さまに仕えて貰いたいんだ」と。
父と兄が仕える公爵家は、気難しい方々ばかり。
跡取りであられたアーヴァイン様が大学での研究を続ける為に日本へ渡られてからは、旦那様の気難しさは更に酷くなった。
そんな公爵家に連なる子供に仕えろとは。
対応が難しい年頃の坊っちゃんだろうしと、私は気が進まなかった。
一度お会いして見極めさせて欲しいと父に返事をした。
難しい年頃の子供に仕える気も全くなかったし、どっちみち、職場に復帰するつもりでいたのだ。
父からの手紙を携えて向かった学校。
そこで、私は父のしたり顔の意味を知る。
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