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「………………っ」
恐る恐るドアを開けた雫さまを一目見て、私の心臓が大きく跳ねた。
なにしろ、私の予想を大きく裏切っていたので。
もちろん、良い意味でだ。
第二次性徴の欠片も見えず、思春期特有の生々しさもない。
どちらかというと、同じ年回りの少女のような可憐ささえある。
小動物っ気全開で、私の庇護欲を大いに掻き立てたのだ。
……ほんの一瞬で。
保留していた職場復帰を蹴るのに、何ら躊躇はなかった。
狡猾さを嫌い、一生懸命頑張る。
ご自身が大変な思いをしておられるというのに、私をいつも気遣ってくださる。
従者に対して寛容であり、ご自分には厳しい。
執事としてお仕えすることが嬉しく、誇らしくもある。
私にとっての雫さまは、ありえないくらいの良いご主人さまであった。
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