5 / 22

「………………っ」 恐る恐るドアを開けた雫さまを一目見て、私の心臓が大きく跳ねた。 なにしろ、私の予想を大きく裏切っていたので。 もちろん、良い意味でだ。 第二次性徴の欠片も見えず、思春期特有の生々しさもない。 どちらかというと、同じ年回りの少女のような可憐ささえある。 小動物っ気全開で、私の庇護欲を大いに掻き立てたのだ。 ……ほんの一瞬で。 保留していた職場復帰を蹴るのに、何ら躊躇はなかった。 狡猾さを嫌い、一生懸命頑張る。 ご自身が大変な思いをしておられるというのに、私をいつも気遣ってくださる。 従者に対して寛容であり、ご自分には厳しい。 執事としてお仕えすることが嬉しく、誇らしくもある。 私にとっての雫さまは、ありえないくらいの良いご主人さまであった。

ともだちにシェアしよう!