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私の決心
雫さまは寮の部屋で私の父からの手紙を読まれた。
手紙を一旦閉じ、再び目を通され、暫し思案される。
そして、お気持ちを固められたのだろう。
ゆっくりと、深呼吸なさった。
『アルフリートさん。
僕はごく普通の家庭で育ったから、どう振る舞えばいいとか、上流階級のしきたりとか良く分からないです。
でも、アルフリートさんが恥ずかしい思いをしないように頑張ります。
だから、僕が間違っている事があったら教えてください。
えっと、よろしくお願いします』
「………っ」
真摯な眼差しと誠実な言葉は、私の心を撃ち抜いた。
ご家族と生き別れになり、たった一人でこの国へいらっしゃった。
まるで厄介者を追いやるかのように、全寮制の学校に放り込まれて。
なのに、他者への思いやりと気遣いを忘れない。
公爵家の方々の傍若無人っぷりを目にしてきた私にとって、雫さまの優しいお気持ちは衝撃的だった。
ものの分別のついた大人ではなく、僅か12歳の少年だというのに……。
校長室で初めてお会いした時に受けた印象は間違いではなかった。
父や兄弟達が「お前は絶対引き受ける」と言い切った意味を思い知る。
私は漸く、お仕えする方を見つけたのだ。
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