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「父が申していた通りのお方なのですね、貴方は」
『?』
小首を傾げるその仕草が可愛らしい。
「穏やかで他者を思いやる優しい方だと」
『そ、そんなことないです…っ』
慌てて否定しようとなさるが、その動作ひとつひとつが好ましい。
嫌味な部分が見当たらないのだ。
「貴方は私に恥ずかしい思いをさせないように頑張るとおっしゃった。
公爵家ではあり得ないことなんです」
『そうなの?』
「はい」
公爵家の方々を悪く言うつもりはないが、実際傍若無人な振る舞いをなさる方が多いのだ。
執事頭の父や家令のチャールズさんでさえ、公爵から理不尽な叱責を受けることもあるし、時には感情に任せて殴打されることもある。
あの家に連なる方で、穏やかな性質を持たれていたのはアーヴァイン様ただお一人。
そう。
雫さまのお父上だ。
生真面目で優しく従者ひとりひとりを気遣っておられたあの方の気質を、雫さまは受け継いでおいでなのだろう……。
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