1 / 3

第1話

 中空にうかぶ満月のひかりがつめたく、冴えわたる。  あのころは純真無垢で、なにもしらない子どもだった。  ぼくたち双子はつねに一緒にいた。  男どうしだし、なにもかも同じにみえた。  この世にはいろんなバースがあるようだけど、幼かった僕たちに教えてくれるひとはまだいなかった。バース検査なんてまだまだ先で、ぼくらの生活を邪魔するやつなんていない。なにひとつ隔てるものはなかった。  ぼくと、弟のアキはうりふたつだった。  卵がおなじだったと、大人たちが口にしていたのを覚えている。おなじものを着て、おなじものを口に運んで、いつも手をつないで傍にいた。寝るときも大きくてひろいベッドで、手を重ねて、うとうとと眠りにつく。生まれたころからそうだった。それはあたりまえのことで、かつ、当然だと思っていた。すこしでも違ったものが与えられると、どちらか片方が火のつくような声で泣き出してしまう。それほど重大で、それはそう決められていて、必然の結果だった。  両親は共働きでつねにいそがしく、たまに母方の祖父母がゲストルームを借りて、ひょろ長いマンションにやって世話をしにやってくる。  ぼくも弟も学童から帰ってくると、ランドセルを放り投げて部屋にこもって、宿題をしたり、ゲームをしたりといそがしい。そのあとは夕飯をたべて、アキと一緒にお風呂にはいる。  大人たちは料理や僕たちの世話をして、ふたりがおとなしく寝るのを確認すると、満足してどこかに消えてしまう。そんな毎日の繰り返しだった。  行ったかな? と悪いかおをした弟と過ごす夜は、いつでも楽しかった。  僕たちはなんでも話したし、なんでも共有した。おなじものを好きになったし、きらいなものも似ていた。アキの匂いがだいすきで、よく弟の枕をこっそり交換した。そのかわり、アキはぼくを抱きしめて匂いをつけたがった。そっくりでちょっとへんだった僕たちを両親たちは双子だからしょうがないねって言ってたし、特におかしいとも思わなかった。だからか、ぼくとアキのあいだに隠しごとなんてなかったし、隠そうともしなかった。  いつからか、夜になると、アキとへんな遊びがはじまった。  きっかけはささいなことだった。  夜中、アキが泣きそうになりながら、ぼくの前に立っていた。 「おちんちんの下にへんなものがついてる……」 「こんなのあったっけ?」  寝ていたぼくの上に膝立ちになって、パンツごとずり下げている。涙しながらもも色の頬をぬらして、僕はそれだけでとても悲しくなった。そんな表情、いまだかつてみたことがない。どうしようかと思いながら、そこに視線を落とす。  よくみると、ぷっくりとコブみたいなのがあそこの根元についている。おちんちんはパンパンに膨れ上がっていた。青筋立った凶器にびっくりして、まじまじと見てしまった。ぼくにはそんなものついてなかったし、こんなに大きくなってしまうなんて、けがでもしたんじゃないかなと心配になった。 「なんか、おちんちんが痛くなったら、できてた……。にいちゃんのは? おれだけ? おれ、死んじゃうの?」 「まって、アキ。落ち着いて。ここ、いたい?」 「ううん、痛くない。にいちゃん、さわってよぅ」  おそるおそる硬くなったものに手をのばした。  お風呂ときに気づかなかったけど、アキのおちんちんのほうが、ちょっと、いや、けっこうおおきい。それに、いつの間にか、皮が剝けていて、先端も濃いピンク色になっていた。お風呂のときとはちがう様子に胸がドキドキと脈打つ。ぼくのものといえば、帽子みたいに包皮がかぶっていて、先っちょすら見えない。 「あれ? なんかまたおっきくなった?」 「あっ、あっ……、にいちゃん、なんかへん。……なんかへんな感じがする。なんか、くるぅ、うわぁ、ああぁッ」  つついたり、撫でたりしているうちに、ぴゅっと濃い白濁液がアキの先っちょから飛び出した。ぼくの頬にとんで、なにがなんだかわからなくてびっくりした。えっと思ってたら、はぁはぁしながら、にいちゃんのも出るかなとつぶやいて、アキは僕の股間を舐めはじめた。 「だめだよ、おしっこがでちゃう……」 「やだよ。俺だけ白いのでるのなんて、へんだ!」 「あ……、あ、アキ、なんかへん、へんだよぉ……、ひゃぁっ」  ぴゅくっと間欠泉のごとく、ぼくも噴出してしまう。ぴくぴくとした脈動とともに、お星さまが飛び散った。アキはべっと舌を見せてくる。 「……しろい? にいちゃんのまずいけど、ちょっとおいしい」  白く泡立った液が舌腹からこぼれて、アキの顎から伝い落ちた。舌の上にはまだ白い液がねっとりとたまっている。 「あ、あ……、それ、おしっこだよ。きたないよぉ」 「おしっこじゃないよ。それに、もう飲んじゃった。にいちゃん、気持ちよさそうだった。ずるい、俺のもなめてよ」  アキはぼくの唇にキスして、苦い液をわたした。  おいしくなかった。 「まずい」 「にいちゃん、ほら、なめてよ」  ずいっと、むっとした匂いがする股間を顔におしつけた。  そういえば、僕たちはいつだって、おなじものを食べては飲んでいた。それは習慣にもにた行為だ。弟の命令に僕は逆らえず、うすく生えたしげみに顔をよせて舌先をだした。  そんな感じで、僕と弟の、夜の遊びがはじまった。  僕たちは互いの未熟な性器をいじりながら、かたくなったものをさわったり、こすったりしはじめた。

ともだちにシェアしよう!