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第3話
そして、終わったあと、アキは僕にごほうびを一つだけくれる。
ぐったりと横になった僕の口に、ラムネを入れた。弟なのに、しっかりもので、僕よりもやさしい。でも、それはとても苦くてまずかった。
はっとして、顔を上げる。授業の鐘がなった。
分厚い教科書を皆がバタバタと閉じた音が耳を打った。ぼくの額に汗が浮かんで、なにも考えていなかったことに気づく。チョーカーの下には柔肉が迫り出すように盛り上がった歯形が残っている。
そのとき、ぽこんとお腹を蹴られた。
あ……。
斜め後ろにいる、弟の視線が突き刺さる。振り向けずに、ぼくは席をたった。同じようにかけてくる音がした。
トイレの個室に入ろうとして、アキがそれを止める。弟はすっかり、ぼくの身長をこした。顔は同じはずなのに、なんとなく、アキのほうが大人っぽい。
「……兄さん、どうしたの?」
「ん、なんでもない」
「まだ寒いから、お腹にさわるよ?」
アキがふっくらとした下腹部をなでた。また、ぽこんと蹴られた。
なんどもこすり合いっこをしているうちに、ぼくのおなかに赤ちゃんができた。そのとき、いつも寝る前にくれたラムネを、アキは渡してくれなかった。
カチリとした音が響いて、錠がおろされる。ひんやりと冷えた空気が頬をなで、狭い個室に僕たちははいった。もう授業がはじまっている時間だ。
「んっ」
弟がキスをしてくる。
「ここ、もうぬれてる。……だめだよ、赤ちゃんいるんだから」
「はぁっ、んんっ」
「これ、セックスっていうんだね」
「ん、ん、……」
「おしりだけいじってあげる。……おなか、全然目立たないね」
するっとシャツを捲られ、下着ごとずり下ろされた。小さなペニスがぱんぱんに膨らんで、はずかしい。透明な汁が太腿にまで垂れている。肛壁はひくついて、アキはぬるっと指の先をそこにすりつけた。
「ふぅ……、んぁっ」
いけない、と思う。でも、とめられない。
同じ顔なのに、ちがう。もう、体格だって、こんなにちがう。なのに、どうしてこんなにぼくは弟を求めてしまうんだろう。
「こえ、我慢して」
「んっ……! あっ、あっ、あっ……」
くぐもった声をアキの制服で押し殺した。
「かわいい、兄さん。赤ちゃん、たのしみだね。安定期にはいったっていうけど、性欲が増してない? でもしょうがないよね。ぼくたちは運命の番いなんだから」
指が増やされて、紅壁を押しつぶされる。上目遣いでみた、アキの顔は本当に幸せそうだった。
「やっぱり、ここにいれて、たくさん出さないと兄さんいやらしいままになっちゃう?」
こくんとうなずいてしまう。
欲しい。ほしい。ほしい。
ぼくは、アキのおちんちんがほしい。
だめだとわかったのに、欲してしまう。
かみさまは残酷だ。
ぼくたちは、なんてことをしてしまったんだろう。
僕たちのあやまちは、もう二度と取り消せない。
それでもぼくは、弟を求めてしまう。
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