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第16話★【2年前】(5)
ミヤギは数人で病院に送り届けた。拠点を守りきって全員が休んでいたが、夜になるとともに、仲のいい者同士がなんとなく集まり始める。宿舎1階の空き部屋にも、気が向いた者がやってくる。サキは後で行くと言ったものの、実際に顔を出すかどうかは気分次第だということは皆わかっていた。
荷物は無事に書庫に納められ、警報と警備が新たに設定され強化されている。襲撃の可能性は常に考える必要がある。在庫が少なくなるにつれ襲撃の危険は減っていくが、それでも油断はできなかった。
サキは自分の部屋にいた。皆のところに行く気はない。襲撃の後はいつもそうだ。得体のしれない興奮に身を任せて敵を殲滅する。その精神状態は麻薬のようで、終わった後、サキは後悔する。
味方を守る。そんなおキレイな動機じゃない。銃を構えたその瞬間に、すべてが変わる。
灼けつくような渇きが一気に潤う。そのあふれるような満足感を、誰にも知られたくなかった。
ライフルで敵を撃ち抜く、その痺れるような感覚が怖い。
真っ暗な部屋の中、ベッドの上に座って壁に寄りかかりながら、サキは昏い目で空を睨む。
襲撃が来なければいい。疼く腹の底で襲撃を待ちながら、サキは平穏を犯す自分を嫌っている。
じっと動かずに闇を見ながら、サキは座っていた。
どれだけそうしていたのだろう。コンコンという軽いノックの音に続いて、ドアが開いた。
シャワーを浴びに来る者のために、ドアにはほとんど鍵をかけない。誰が入ってきても動じることはない。このワンルームにプライバシーは存在しないのだ。
眠ったふりをしながら、サキは来訪者が部屋の中をのぞかずにシャワールームへ行くのを待った。
しかし来訪者はドアの傍に立ったままだ。さっさとシャワーを浴びて帰ってくれ。そう思いながらサキは顔を下げ、この暗い部屋で自分の様子が相手に見えていないことを願った。
だがサキの考えなど無視するように、顔の見えない誰かが、サキに近づいてきた。
「サキさん」
レンだ。その囁きに、サキは顔を上げた。
「シャワーは向こうだ」
「えぇ……」
ぎしりとベッドが鳴った。レンの顔が、すぐ目の前にある。闇の中で見えないのに、彼の発散する熱が、顔を覆う。
同類だ。
サキは思った。戦いで見せた強烈に甘い眼差し。あぁ、こいつも腹の底に、狂った蛇を飼っている。
レンは無言のままサキの頬に手を当て、唇を舐めた。ざわりと腹に熱が生まれる。
「サキさん」
囁きと共に唇がふさがれる。入ってくる舌を、サキは受け止めた。ぬるりと絡まる感触を追う。ちゅぷ、という水音がして、レンがのしかかってくる。
「ん……」
微かなアルコールの味と匂いが、サキを刺激した。舌を絡ませていると、頭の奥がしびれていく。サキはレンの奥へ舌を入れ、全体を味わった。溶けるような感覚に理性がぼやけていく。
レンが手を伸ばした。サキのジーンズのボタンを外している。下着の上からペニスを握られ、サキはうめいた。
「シャワーを……浴びに来たんじゃないのか」
「さっき、みんな打ち上げであなたの話をしていましたよ。かっこいいってね」
からかうような声。同時に指先がサキの腰を撫で上げた。首筋が音を立てて吸われる。
「やめろ」
「どうして?」
聞かないでほしかった。考えさせられるのは嫌だ。それがたとえ一瞬であっても。はぁ、とレンが吐息を漏らす。耳の奥にささやきが吹きこまれる。
「サキさん……戦った後って、セックスしたくなるでしょう?」
答える前に、レンの指が下着に侵入した。口も同時にふさがれる。
「んぅ」
くぐもった呻きを漏らしながら、サキはレンを振り払えずにいた。
たまらない。ずっと押さえ込んでいた感覚が、解き放たれようとしている。頭をもたげ始めたペニスを、レンは柔らかく握った。ゆっくりとしごき上げ、先端を撫でる。
レンの舌が、サキの中を掻き回した。互いの唾液があふれ、顎を流れていく。その液体の感覚を、サキは辿った。くちゅり。くちゅ。舌が押しつぶされ、絡み合う。上あごが撫でられ、舌が吸われるたびに、腰が浮く。
サキはやり返すようにレンの舌を誘い込み、軽く噛んだ。レンが興奮に身を震わせる。自分から深く舌を差し入れ、ねだるようにサキの歯を舐める。
「あぁ……サキさん……」
ささやき声とともに、レンの唇が下へ進んでいく。顎に、首筋に口づけられ、サキの呼吸が荒くなった。
レンがサキの胸を吸う。何も感じないはずの場所でさえ、突かれ、こねまわされると反応し、ダイレクトに腰に熱を送り込む。
「あ、あぁ……」
鍵をかけていない。ぼんやりとサキは思った。誰かが入ってきたら……。レンの髪を掴んで引き離そうとしたが、意志に反して手に力が入らない。
「お前、酔ってるだろ」
「理性なくすほど飲んでません。ダメですよ……途中でやめるなんて」
「か、鍵を」
くすりとレンが笑った。ひときわ強く胸を吸われて、サキは声を漏らした。
「こんなに暗いんです。誰もわかりませんよ。もし誰か来たら……そいつと一緒にシてもいい」
サキは歯を食いしばった。
「へぇ。サキさん、大きくなった。乱交に興味あるんですね」
「ちが」
「ちがわないでしょう? 部屋いっぱいに男を集めて、手当たりしだいにブチ込めたら。そういう妄想、いいじゃありませんか。こういう夜には、ちょうどいい。なんならこれから、オレが裸で皆を誘ってきましょうか?」
ぞくりと腰がしびれる。動かさないようにするのが精一杯だ。レンが囁き声で煽るたびに、サキの理性が削られていく。
「ダメ……だ」
「冗談ですよ。オレに乱交のシュミはないから。それより……ゆっくりサキさんを味わいたい」
味わう? それがどういうことなのか、考えようとしたその瞬間に、サキは息を呑んだ。
熱く湿った場所に、ペニスが包み込まれたのだ。咥えられた。そう思うそばから強く吸い上げられ、サキは達しそうになった。
「あ、あぅ、レン」
喉奥までサキのペニスを導き、レンは頭を上下させている。じゅぼ、じゅぽ、と卑猥な音が響き、サキは数年ぶりに与えられた快感に耐えきれなくなった。腰が動く。レンがその腰を抱いた。逃げられない。
咥えこまれ、敏感なところをしごかれ続ける。射精感がせり上がってきて、サキは息を詰めた。
ふっとペニスが解放される。空気に触れ、冷たい感覚がサキの頭をわずかに覚ました。
レンが身を起こし、サキの耳元に囁きかける。
「まだですよ。まだ……イくなんてもったいない」
再び唇がふさがれる。サキ自身の先走りをこね回すように舌をひとしきり絡ませると、レンは口を離した。
「こんなに大きいの、はじめて……」
甘い囁き。レンはうっとりした仕草でサキのペニスを握り、その輪郭を確かめると雁首の付け根を軽くしごく。指先がゆっくりと先端までなぞり上げていく。
サキは息を詰めて喘ぎを止めようとした。それを見透かしたように、レンは手の平で先端を撫でまわす。息が上がってきたところで、今度は柔らかく睾丸をもまれ、サキは目をつぶり、弱々しく怜の手をおさえた。
「頼むから……やめてくれ」
「どうして? 大きくて立派な上に、ちゃんとあなたを気持ちよくしてくれる。いい道具だ」
レンはゆっくりと、じらすようにペニスをいじり、サキの快感を長引かせるように動き続けていたが、自分でも昂ってきたらしい。熱の籠った息がサキの首筋を掠め、硬いものがサキの脇腹をつつく。
「オレのも……楽しませてくださいよ。今さらやめるなんて、ないでしょう?」
レンはそう言うと、サキの手をとって自分のペニスに導いた。咥えられた後で拒否するのは不公平な気がして、サキは下着の下から引き出したレンのペニスを、ゆっくりと撫でた。
「ん、もっと強く」
言われるままに、レンをしごく。
「はぁ……ん」
レンはサキの肩に顔を預け、ゆるやかに自分の腰を動かしながらサキのペニスをしごき続ける。くちゅくちゅと先走りを使いながら、2人は互いのモノのために手を動かす。
たまらなかった。自分で慰めるのとは違うタイミングと強さに、サキは息を荒くして没頭する。どちらからともなく唇を合わせ、ペニスをしごいていない方の腕で相手の体を引き寄せる。
胸を密着させ、ペニスの先端を突き合わせると、レンもサキも、我慢できなくなった。2本のペニスを一緒にまとめて手を重ね、腰を突き上げる。くちゅくちゅと音が出る。
「あぁ、んっ」
レンが耐え切れなくなったように、サキを押し倒した。衣擦れの音。ベッドの下にぱさりと服が落ちる。ピリッとパッケージが破られる音がして、ペニスにとろりと何かがかけられる。
「足りない、サキさん、こんなの」
掠れた声で、レンがサキに圧し掛かった。腰を浮かせる気配。次の一瞬、サキのペニスはレンの熱く湿ったアナルに呑み込まれていた。
「は、はぁんっ」
「んくぅ」
レンの甘い声に、サキの呻きが混じり合う。
数年ぶりに、サキは誰かの熱く蕩けたナカにいた。包みこまれ、締めつけられて、理性が完全に飛ぶ。
「あぁ……ん、サキさん、おっきい」
「うぅ、あ、……」
とろけるような快感。サキは自分の上にまたがったレンの腰に手をかけて抱き寄せた。
レンの腰をもち上げ、自分のペニスに打ち付ける。
「あぁふっ」
レンの熱い吐息が耳に当たり、サキは一緒に呻いた。もう一度、今度はレンの腰を打ち付けながら自分の腰を突き上げる。レンがのけぞるのを押さえ、腰を揺らして快感を追う。引いて、突く。
「あ、そこぉ……」
レンが喘ぐ。同じ場所を突いてやると、レンは鼻にかかった甘い声を漏らした。
「ん、そこ、すごイ」
「ここか?」
「そこ、そこもっと……あ、あぁ……」
レンが腰を振った。水音が大きくなる。
「サキさん……気持ち……イイ」
快感が体を勝手に動かす。腰を揺らし、レンの奥を突く。もっと欲しい。もっと奥を、思う存分突きたい。
サキは起き上がると、レンを押し倒した。ペニスが抜けるのもかまわず、腕を掴んでひっくり返す。うつぶせにしたレンの尻を引き上げると、サキはペニスをもう一度レンの奥へ突き込んだ。
「あ、あぁぁん、サキ、さん、もっとぉ」
レンの喘ぎがひときわ高くなった。
腰を動かし、奥を突く。絡みつく肉を感じながら入口ぎりぎりまで引き、カリの摩擦を味わってからゆっくりと奥へ挿れる。
「んっ」
レンのナカがひくつき、ねっとりとサキを咥えた。舐めるように絡みつく襞がたまらなくイイ。ゆっくりと引き、敏感なカリでサキの孔をじっくりとねぶる。ずぶずぶと奥へ、竿の根元まで沈めていく。引いて、挿れる。
「あ……やだ、じらさないで」
レンの腰が揺れた。背中を押さえつけ、懇願を無視して再びゆっくり引く。ゆっくりと……ゆっくりと挿れる。
「ふ……んぁ……サキさ……や、やぁ……」
ひくひくとレンの肉が震える。サキを奥へ呑みこもうと、襞がぬるりと蠢く。サキが引くたびに、追いすがるように肉は締まり、必死でねぶってくる。
「あぁレン……お前のナカ」
「んっ、サキさん、もう、や」
ペニスを動かすたびに、くちゅ、くちゅ、と音がする。結合している縁を指でなぞると、闇の中、自分はセックスをしているのだという感覚が強くなる。
ゆっくりゆっくり、抜けるギリギリまで引くと、サキは一気に奥を突いた。先端がレンのイイところを叩いたらしい。レンは悲鳴のような喘ぎ声を出し、背中を反らした。
もっと。もっとだ。腰を引き、レンの一番奥をガツンと突く。
「あぁんっ、あぁ、そこ、そこもっとぉ」
「ここか?」
「そこ、あ、ああん当たる、ゴツゴツ、当たる」
ぬめり、絡みつく襞をかき分けるように抜いて、腰を回すように突く。ペニスの先端がレンの熱を味わう。快感が背骨を駆け上がる。
「あぁ……レン、また締まった」
「んっ、サキさ ん、奥、おっきい」
漏れ出る体液とローションとを混ぜながら、サキはガツガツと奥を突いた。太いカリが前立腺を引っかくたびに、レンはあられもない声を上げる。自分から尻を高く突き上げ、サキのモノを咥えこんで快感を搾り取る。
「は、はぁ、はぁんっ、あ、あぁ」
レンの奥は、サキが突き入れるたびに悦んでしごき上げ、くぽくぽと音を立てて締めつけだした。
「レン……お前の奥……すご……」
「もっとぉ……あ……サキさん、おっきくて、硬いの挿れて……」
レンに応じて、サキは腰を振った。深く、深く突き立て、こね回しては引く。ガツンと奥を叩き、引いて、突く。
「あふ、あ……あぁ…………」
レンの腰が痙攣し始めている。びくびくする体を押さえて奥をゆっくり突くと、レンの声が高くなる。アナルからは、出し入れするたびに、ぐぽ、ぐぽ、と大きく卑猥な音がしている。泡立った液体がレンの太ももを伝い落ちていく。レンのペニスからも、精液がタラタラとだらしなく流れ落ちている。シーツの上で液体は混ざり、ベッドを濡らしていた。
ぐぽ、ぐぽっ、ぐちゅ、くぽん。
暗い部屋の中で、セックスの音と吐息だけが聞こえていた。2人の男が絡み合い、繋がって腰を振り、闇の中で快楽に支配されている。
「ん……いい……」
レンの声が、部屋に響く。
ぐぽぐぽ、音が速くなる。
「あ……んっ、あ」
喘ぎ声に、肉がぶつかる音が混じる。ぐぽ、ぱちゅん、ぱちゅ、くぽん、ぐちゅ、ぱちゅん。
「イイ……そこぉ」
「ここか?」
「そう、あっ あん、硬いの、当たる……」
ぐぽん、くぽ、ぱちゅん、ぐぽん。
あぁ……気持ちがいい。何もかも忘れて、ペニスとアナルを繋げて、よだれを垂らして、ひたすら腰を振って。
少しずつ、動きが速くなる。快感が脳に満ち、2人とも闇が心地よくなる。ただの獣になって、交尾をしている。
サキは大きく腰を突き立て、レンの奥を夢中で犯す。レンの感じる場所をペニスの先端はもう覚えた。前立腺をこすって、その奥の……ここ。
何度も、何度も、頭を空っぽにしてそこを突く。レンの体がサキの形を覚えるまで。
「あ、あぁん、……イ、イく」
レンがたまらず、自分のペニスに手を伸ばす。夢中でソレをしごき、快楽を追っている。朦朧とした頭で、サキはひたすら腰を振り続けた。何も考えず、レンの奥をただガツガツと犯す。
ぐぽっ、ぐぽっという音を聞きながら、サキはペニスの先端が膨らむような気がした。背筋を射精感が走り、脳天を抜けていく。ぐちゅ、ぐちゅ、ぐぽ、ぐぽ。音は部屋を満たして喘ぎ声と混ざり、腰を震わせる。
「俺も……イきそう……だ」
「あぁ…………ナカ、なかに出してぇ」
喘ぎ声と一緒に、レンの奥がサキを深く咥えこみ、ひときわ強く締め上げた。睾丸が縮む。
「うあぁ」
びゅるっと出た精液は、サキの脳を白く汚した。
「あぁああ」
ペニスを勢いよく抜けていく精液は、サキを快感で痙攣させ、レンの奥をブッ叩く。
「あぁぁ あつ いぃ」
恍惚とサキの精液を呑みながら、レンはサキのペニスを搾るように締めつけ、自分のペニスからも精液を吐き出す。絶頂に全身をびくびくさせながら腹の奥でサキの精液を味わい、レンの体はサキの下で悶える。
やがてぐったりとレンの体が沈む。サキがペニスを引き抜くと、レンは「んっ」と声を出した。体が快感を拾ったのだ。
荒い息のまま、サキは手を伸ばした。汗で濡れたレンの背中に手を伸ばす。腕をつかんで体を引き寄せると、髪を撫で上げ唇を重ねる。
くちゅりと舌を合わせると、熱の余韻が互いの体を震わせた。
「……シャワーを浴びるか」
「そうですね。誰かが来る前に」
くすりと笑うレンの囁くような声に、サキは微笑んだ。もし……もし次があるとしたら、レンの顔と体が見えるように、ほのかな明かりが欲しいと思いながら。
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