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第26話「不機嫌?」*奏斗

「雪谷さんは、こちらにお住いなんですか?」  そう聞かれて、はい、と頷く。  ……なんだろう。  もう、執事と聞いたら、この落ち着いた話し方も、執事さんだからかとやたら納得してしまう。でもなんとなく、執事ってもっと年取った人がするものだと思ってた。  ……あれ? それは、「爺やさん」? あれなんだっけ。  おぼっちゃんぽいのが、「じい」って呼んだりする……あれは執事じゃなくて爺やさんなのか?  うう、よく分からない。あとで調べよう。  とりあえず、今聞かれたのは――――……「ここにお住まいか」? 「オレ達もお互い、昨日知ったんですけど……隣同士だったんです」 「そうなんですか?」  葛城さんは、四ノ宮を見つめている。  四ノ宮は、あー……と声を出してから、頷いてる。 「……そうなんですね」  少しまた間が空く。  ……この空いた間、この人、何考えてるんだろう……??  それとも、執事さんはゆっくりなのかな?  ……めちゃくちゃてきぱきしてそうな人だけどなあ……。 「雪谷さん」 「あ、はい」 「大翔さんをよろしくお願いしますね」 「え? あ、……まあ、はい」  よろしくって言われても…………。  ……よろしくってなんだろうと思いながらも、頷いてしまった。  すると、葛城さんは、ふと何だかものすごく優雅に笑う。 「本当は泊まるはずだった大翔さんの我儘を聞いて、ご実家から送り届けて きたんですが――――……お会いできてよかったです」 「あ……はい。こちらこそ…………??」  良かった? ……うん、まあ、良かった??  ちょっと不思議。なんて思っていたら四ノ宮が、嫌そうに。 「……葛城、ありがと、送ってくれて――――……もう、帰っていいよ」  帰っていいよと言いながら、「帰れ」というニュアンスが多分に含まれている言い方。どっちにしても、偉そうだな、四ノ宮……。  あ、この人には、素で話してるのかな……。そんな気がする。  四ノ宮の言葉に、はー、と葛城さんは大袈裟にため息を付いて、それから頷いた。 「帰ります。雪谷さん、またいつか」 「あ、はい。気を付けて……」 「じゃあ大翔さん。また」 「ん。おやすみ」  四ノ宮と一緒に、葛城さんの運転する車を見送る。  ……何だか不思議な人だった。  しばらく見えなくなるまで見送ってふと、静かな空間。  「いこっか」とオレが言うと、四ノ宮も歩き出したので、一緒にマンションのエントランスに向かう。 「……何で実家、泊まんなかったの?」 「面倒だから。昨日も泊まったし、いいかなって思って」 「あ、昨日から帰ってたんだ。あの後帰ったの?」 「はい」  ふーん。昨日、居なかったんだ。  他愛もない会話をしながら、部屋の前にたどり着く。  鍵を開けた四ノ宮がドアに手をかけながらこっちを見た。 「……これからどっか行くんですか?」 「え? これから? 行かないよ?」 「……クラブとか」 「行こうかなと思ったけど……ちょっと体痛いし。やめた」 「――――……そーですか」  なんか。気まずい。 「あ。アイス、食べる? さっきいくつか買って……一回冷凍庫で冷やしたほうがよさそうだけど」 「……いらないです。おやすみなさい」  そう言うと四ノ宮はドアを開けてこっちも見ずに、すぐに消えてしまった。 「あ、うん。……おやすみ」  ――――……なんか、急に、不機嫌だったような。  ……よくわかんねえな。  まあいいや。  変ににこにこされてるより、ずっとマシ。    なんか、情緒不安定な弟だとでも思ってれば、別に腹も立たない。  ていうか、真斗は、全然そんな奴じゃないけど。良い子だけど。  ふ、と笑んでしまいながら。  部屋に入った。 ◇ ◇ ◇ ◇ おしらせ♡ ◇ ◇ ◇ ◇ このお話の2人のイラストを、大好きな方に頂きました♡ 11/27のブログに、のせてあります♡ よろしかったら見てみてください♡ 素敵なので(*'ω'*)♡ by悠里

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