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第25話「執事さん」*奏斗
「じゃあな、カナ。また来る」
「うん」
土曜は、午前バスケ、お昼を食べて、午後もバスケ。バスケコートで会った知らない人達とゲームまでしたりしてとにかく物凄い疲れた。一緒に駅前で夕飯を食べて、改札で別れた。
……あー疲れた。
――――……んー、なんかちょっと……シたい、かも。
こないだは四ノ宮と会っちゃって、全く身が入らなくて、なんかほとんど記憶に残ってない位だし……。
たまってんのかなあ……。クラブ、行こうかな……。
でも今日はバスケに付き合ったせいで、すでに体のあちこちが痛い。やっぱり相当なまってて、現役で部活やってる真斗についてくのは本当に大変だった。明日はもっと筋肉痛になるかも……今日はやめとこ。
アイス食べよっかなー。甘いもの補給して、早く寝よ。
そう思って、途中のコンビニに行って、アイスを選ぶ。
ひとつに決められず、いくつか買ってレジを済ませた。
また木曜に、クラブ行こうかなー……。
そんな事を思いながら、マンションまでの道のりを歩く。
前方に、月。 昨日と同じ形だなあ……。なんて、のんびり歩いて帰りつくと、マンションのエントランス近くの来客用駐車場に、なんだかものすごく高そうな車が止まっていた。
なんかすげー車……。なんて、目に映してたら。そこから降りてきた人に――――……足が止まった。
相手も車から降りて中の人に何か言いながら顔を上げて、オレと視線が合って、固まった。
「……雪谷先輩」
「う、わー。四ノ宮……」
オレから漏れた第一声はそれだった。すると。
「うわーって何ですか。失礼ですよね」
すごく嫌そうな顔。
……ああ。なんか、素っぽいな。
「あ、ごめん。 だってここ数日の、お前の出現率が半端なくて」
「こっちのセリフでもあるんですけど。オレが出現してるみたいな言い方やめてくれません?」
「あ、確かに。お互いだよな」
ふ、と笑ってしまう。
すると、車の運転席が開いた。
ものすごく品の良いと感じるスーツ姿。30前後かな、少し年上の男の人が出てきた。
「こんばんは」
「あ。どうも……こんばんは」
挨拶されてしまって、ぺこ、と頭を下げる。
「大翔さん? ご友人ですか?」
「――――……ゼミの先輩」
少し間を置いて、四ノ宮がそう言って、そしたらこれまた少し間が空いて、その人も、オレを見つめた。
「初めまして。葛城と言います」
「あ、どうも。 雪谷、奏斗です……」
「――――……雪谷さんですか」
また変な間が空く。……こういう話し方をする人なのかな。
オレってば、何となくフルネーム名乗ってしまった。
だってあんまりこんな風に、挨拶することってないし。
なんだろ、名字違うからお兄さんって訳じゃないだろうし。
誰??と思っていると。
「私は四ノ宮家に仕えている者でして……大翔さんのお世話など色々しています」
「お世話……ですか?」
「お世話と言うのは……そうですね、一般的には執事のようなものだと思って頂ければ」
「え」
聞き間違いかと思ってしまうけれど。
確かに言った。
「しつ……じ??」
「先輩?」
「執事ってほんとに居るんですか?? 映画とかドラマの中だけじゃなくて?」
思わずそう言ったら、四ノ宮がくっと笑ってる。
「ええ。居ますよ」
「うわー、すごい、初めて会いました」
「そうですか」
葛城さんはオレを見て、ふ、と笑う。
「先輩、興奮しすぎ……」
四ノ宮はさっきから、クスクス笑ってるし。
並んだ2人に笑われて。
その時ふっと突然気づく。
――――……なんなの、この2人。
顔面の偏差値が高すぎる。揃っちゃうと相乗効果でヤバい。
イケメンは、執事もイケメンと決まってるのかな??
この人は、顔も良いとは思うのだけど。
なんか、それ以上に立ち姿が凛としているというか。
ほんとに「品が良い」と感じる、あまり周りに居ない雰囲気の人だなあと、思う。
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