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第24話「謎な運命」*奏斗

 真斗にバレたのは、父さんにバレて、家の中で騒ぎになった時。  真斗というか、母さんにバレたのも、その時。  父さんがあまりに激昂してたからなのか。  母さんも真斗も、逆に冷静になったらしい。  真斗だって本当だったら、そう簡単に受け入れられなかったはずだろうに。すぐに、父さんに向けて言い放った。 「そんなの今時珍しくねえし、カナが家族なのは変わんねえし。分かってやったら?」  と言って、庇ってくれた。  まだ中学生だったのに。そこそこ、衝撃だったろうに。    ――――……真斗とはずっと仲の良い兄弟だったけど。  あれでますます仲良くなったっけ。  オレのベッドのすぐ脇に布団を敷いて、電気を消して二人でしゃべってる間に、真斗がウトウトしだして、すぐに眠ってしまった。  はは。かわいーな、真斗。  オレより背が高いし。  全然似てない真斗は、兄の欲目を無しにしても、すごいカッコよく育ってる。オレがこんなんで、家の中ごたついたりしてたせいか、何か達観してて、落ち着いてるし。  イイ男になりそう。  兄としては嬉しい限り。  ――――……実家は、電車に乗れば十分ちょい。徒歩含めても、二十分あればつく。だから、もちろん大学も、一人暮らしをしなくても通えるのだけれど。  父さんとオレの仲が険悪すぎて、家の中の空気が悪すぎるから、もし経済的に大丈夫だったら、大学から一人暮らしをさせてもらえないかと、母さんに頼んだ。……そこそこ裕福なのは知ってるから、多分了解してくれるだろうと思って。  母さんから父さんに話して、すぐ、了解が出たから――――…… 分かってくれる気はないんだろうなと、判断した。  まあ。……分かるんだよね。  そこまでのがっかりも、無かった。  時代が、そういうのに寛容になろうと動いてたって、自分の息子だし。しかも抱かれる方とか。 男らしい父さんには、全く理解できないんだろうし。  母さんは、少し違ってて。  奏斗が幸せなら良いとは、言ってくれるけど。  父さんとも最初の内は話してくれてたけど、この件に関しての父さんが頑なすぎて、しばらく放っておくとの結論を出したらしい。  一人暮らしに関しても、本当は反対だけど、「奏斗がこの家で息が詰まるなら、それは回避したい」というスタンス。  でも、心配過ぎるから、不動産屋に聞いて、セキュリティ重視で、このマンションを選んでくれた。  もともと父さんは、仕事で成功してる人だから、忙しくしてて、ほぼ母子家庭みたいだった状態からの、この件だったから――――……。  なんかどう修復したらいいのか。というか、修復したとして元の形もほぼ母子家庭な訳だし。もうどうしたらいいのかよく分からず。  一番の問題は、真斗がこの件で、父親を否定気味になってることで。  ただでさえ、反抗的になる思春期、受験生真っただ中だから。  とりあえず兄弟仲良くして、父さんの気持ちも分かるからと、伝え続けとこうとは、思ってるけど。  ふー……と、ため息をつく。  ゲイなんかじゃなかったら。  ……可愛い彼女でも作って。家に連れてって。家族に紹介したりして。  一緒にご飯食べたりなんかして。  ――――……楽しく過ごしてたんだろうなあ。  過去に何度も考えたことを、また考えてしまう。    分かってるんだけど。  ――――……こんなこと考えたって、オレは、女の子には、その気になれなくて。男に抱かれたいと、思ってしまうんだから、しょうがないって。  気になって見てしまうのも、男で。  ドキドキするのも、男で。  はっきりと、恋だと自覚したのも男で。その初恋は叶って、その期間は幸せだった。  もう、どうしてなんだろうって考えたって、しょうがない。  女の子が好きだったら、とか。考えてもしょうがないんだけど。 「――――……う、ん……」  真斗が声を出して、ころんと寝返りを打った。 「…………」  ほんと、ごめんな。  ……要らない心配をかけて、要らない考えことさせて。    ふ、とため息をついて。むく、と起き上がった。  カーテンを開けて、窓から空を眺める。    ――――……月が、綺麗。星はまばら。  空を見上げながら、ふ、と四ノ宮を思い出した。  ……四ノ宮にバレて、家族以外で久しぶりに、ゲイのことで話をしたっけ。  ……まさか隣に住んでるとは……。  今まで会わなかったのに、このタイミングで鉢合わせとか。  ……隣で。ここから数メートルのところで、あいつも、寝てんのかな……。  謎な運命すぎる……。

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