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第23話「真斗と」*奏斗

「カナは、しっかりしてそうで抜けてんだからさ……1人暮らし、大丈夫なのか? 変な奴につきまとわれたりしてない?」 「してないよ」 「家から通えばいーのに。つか、やっぱ心配だから家帰ってこいよ」 「……まあそれはしょうがないだろ?」  オレが言うと、真斗はため息。 「……オヤジなんてどーせ忙しくて家に居ないんだから関係ないじゃん」 「そうだけど…… でも顔合わせない訳にはいかないし。お互いの精神衛生上、これがいいんじゃないかな。しょうがないよ」 「しょうがなくない。――――……別に、カナがゲイだって、家族に変わりはねーのにさ。あのくそ親父」  父の事を、吐き捨てるように言う弟に、困ってしまう。 「しょうがないよ。息子が、男に、とか――――……受け入れられないのも分かるし。……マンション借りてくれてさ。見捨てるとかでもないし、むしろ感謝してるよ」 「――――……しなきゃいけないのは、そこじゃねえし」  淹れ終えたコーヒーを、ローテーブルの上に置きながら、真斗を見つめる。 「時間かかるんだよ。そう簡単に受け入れられる事だと思ってないし」  ――――……大好きだった恋人と、別れたその日。  最後、別れ際にキスした所を、父さんに、見られた。  外でなんかした事なかったのに。  ――――……最後だからと。もうその時は別れがショックすぎて、隠すとか人が居るとか、全然気にしてなくて。  オレが馬鹿だったんだし。  カミングアウトもしてない状態で、仕事帰りの父さんが、外で、息子が男とキスしてるの見たその衝撃、想像できるし。 「……あんまり父さんの事、悪く言うなよ」 「――――……カナの事に関しては許せない」 「……オレが悪いんだから」 「カナは別に悪くない」  まっすぐ真斗の視線に、ふ、と嬉しくなる。 「もー、真斗は、ほんと可愛いなー」  ぎゅー、と抱き付いて、よしよし、と撫でると「やめろよ」と離される。  「照れんなよ」と再び抱き付いて。 「真斗がずっと、認めてくれてるから。……なんかすごく、救われてるし」 「……当たり前だろ。兄弟なんだから」 「――――……真斗が嫌悪したって、おかしくないっても思うんだけどね」 「カナの事、嫌悪するとか、ねーから」 「……ありがと」  ふ、と笑って、よしよし、と撫でて、真斗から離れる。 「ほんと、イイ男に育ってるなー、真斗」 「――――……」  何も言わないけど。  ちょっと喜んでるっぽいのは分かる。  ふ、可愛い。 「そういえばまだバスケ部引退しないの?」 「最後の大会に負けた時点で引退。そしたら受験生」 「ていうか、今も受験生だけどねー。勉強ちゃんとしてる?」 「一応してる」 「頑張れよなー」 「頑張るよ」  コーヒーを飲みながら、あ、と思って、真斗の顔を見る。 「大会応援に行くから。教えてね」 「ん。来週末からだよ」 「……ていうか、そんな時に、明日部活休みでいいの?」 「なんか体育館の点検があるとかで、使っちゃダメなんだって。明日は各自自主トレしろって。だから明日付き合ってよ」 「ん、いーよ」  なんだかんだで、真斗が泊りに来るのは久しぶりで。  連絡は取り合ってるけど、顔見てゆっくり話すのも久しぶり。  2人でソファに座って、他愛もない話を続けた。   ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ この作品にイラストを描いて頂いたので、 11/27のブログでご紹介しています♡ ぜひ見てみてください♡

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