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第28話「変なの」*奏斗

「お邪魔します。あ。鍵置かせてください」 「そこ置いていいよ」  台に鍵を置くと、オレが並べたスリッパをはいて、中に入ってくる。 「……同じ間取りっぽいですね」 「ふーん、そうなんだ」  リビングに入ると、四ノ宮はふと見回してる。 「間取りは一緒みたいなのに、なんか風景全然違いますね」 「そーなの?」 「はい」 「ふーん…… あ、四ノ宮、こっち来て」  呼んでから、冷凍庫を開けて、アイスを見せる。 「どれがいい?」 「……バニラので」 「はい。あ、スプーン」  引き出しからスプーンを出して、四ノ宮に渡す。 「そこのテーブル座ってて」  2人掛け用のリビングテーブル。  真斗以外が座るの、初めてかも。  友達が来る時とかは、少し大きなローテーブルを囲んじゃうからなあ。  2人掛けだから、近いんだよな、距離が。 「はい、コーヒー」 「――――……ありがとうございます」 「うん」  笑って頷いて見せる。  オレは、チョコのアイスを持って、四ノ宮の前に座った。    …………まあ、自分で、軽ーく、誘ってしまったとは言え。  ……変なの。  こいつがここに居るとか。  木曜の夜の間ずっと、怯えてた相手だし……。  でもなんか、怯えがなくなったら。  ……結構、興味深いんだよなー。  なんで、こんななのかなあ、とかさ。  せっかくモテモテなんだから、素直に受け止めて、楽しく生きればいいのに、とか。オレとは違ってノーマルなんだし、美人の彼女とさ。居ても全然良いと思うのにな。 「どーぞ」  言うと、いただきます、と言って食べ始める。 「――――……変なの、お前がここに居るの」  素直にそう言ったら、四ノ宮はアイスを口に入れながら、頷いた。 「オレもそう思います」 「あ、そう思うんだ」  クスクス笑いながら、オレもアイスの蓋を取って、一口めを口に入れた。 「あ、美味い、これ」  あたりだな、これ、と何のアイスだっけと外装に書いてある事を眺め始めた時。テーブルの上のスマホが鳴りだした。 「あ、ごめん。ちょっと電話するね」  頷くのを見て、通話をタップして耳に当てる。 「真斗? うん。ああ、シャワーだった?」 『うん。……何、カナ、体痛いって』 「え、お前体痛くねえの? オレ絶対明日、すげえ筋肉痛だけど」 『なまり過ぎじゃねえの?』 「ふざけんなよ、午前も午後も付き合わせといて、そんな事言う? 現役のお前によく付き合ったと思わねえ? つか、オレ、すげえ頑張ったのに」  そう言うと、真斗が電話の向こうでクスクス笑い始める。 『嘘。分かってるよ、ありがとな、カナ。 今日明日はゆっくりしてよ』 「言われなくてももう絶対ゆっくりするから」 『ん、そうして。 オレ、明日早いから、寝る準備して寝る。またね』 「うん。おやすみ。頑張って」 『ん、おやすみ』  通話を切って、スマホをテーブルに戻す。 「ごめんな」 「いえ――――…… あの……今の電話って……」  なんか不思議そうな顔してる四ノ宮に、ん?と首を傾げる。 「昨日ちょっとだけ会ったろ?」 「……はい」 「弟だよ。真斗っていうんだ」  そう言ったら。  ……何でか知らないけど、なんか、ものすごい、ぴた、と、固まった。 「え? 何でそんなに、固まんの? 真斗がどうかした??」  …………全然、表情からは、何考えてんだか、読めない。  ポーカーフェイスというか。  顔に出さないっつーのが身についてんのかな。    もーー。 ほんと一体、何???   全然分からん。

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