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第49話「ごめん」*奏斗

 四ノ宮の家を出て来て、即、玄関で、へたり込んだ。  ……うわ。  大人げない。  ……いや、オレ、辛うじて大人じゃないから……。  先輩気ない……。そんな言葉あんのか。って違う。そんなこと言ってる場合じゃない。  はー。  もーだめだ。  多分四ノ宮の、「男だから」っていうのは――――……。  そう言う意味じゃない。  多分あいつ、オレに、そんなこと、言わない。  ――――……そしたら多分……。  四ノ宮は自分が男で、女の子とそういう事するけど。  オレが相手するのは男だから――――…… 危ないとか、そういうことかなと、浮かんだ。  なんか、ちょっと心配してそうな事も言ってたもんな……。  危ない奴に会ったことないの?とか。  そう言う意味の「オレは男だから」なんだろうって気づいたのは、  四ノ宮の家を出てから、うちに着くまでの、短い移動の間。  でも、なんか、戻る気はしなくて。  自分の家に入ってきたけど。 「あーもー…………」  玄関上がったところで、仰向けに倒れたら。  こないだ初めて見たばかりの、廊下の電気。  ……また見てしまった。  ――――……和希のせーだ……。  なんかオレ。  おかしくなってる。  なんであんな事で頭に血がのぼって。  いつもなら、四ノ宮がどんな意味で言ったか聞いたと思うのに。  聞かず、勝手に嫌な意味で受け取って決めつけて、なんて。  ……最低、オレ。  和希の事――――…… さっき、落ち着いたと思って、四ノ宮のとこ行ったけど。多分、全然落ち着いてなかったんだ。  今戻っても――――……四ノ宮とちゃんと話せる気がしない。  もっとこじれそう。  ……やっと。和希を思い出す事もなくなって。  ずっと普通に過ごせてきたのに。  ――――……何で、オレの連絡先、聞くの。  母さんや真斗に聞くってことは――――……他の幼馴染や仲間にも聞いてんのかな。……オレに連絡してどーすんの。  オレに謝る? 友達としてやり直したいとか、言う?  ――――……冗談じゃないし。  好きだと自覚したのは中学だったけど――――……小学校から、ずっと、一番好きだった。高校も一緒だったから、これでダメだったらどうしよう位の決死の告白を、和希が受けてくれて。オレも、好きだったって、言ってくれた。  高校に入ってから、抱き合う事を覚えて。めちゃくちゃ、キスも、セックスも、した。  ほんとに、ほんとに大好きで。  ……和希も、オレを、多分、ものすごく、好きで。  小さい頃からの思い出も、中学の片思いしながらの親友の記憶も、付き合ってからは、学校も部活も、その他の友達も。  オレの世界、全部が和希に繋がってたのに。  ――――……それがいきなり、オレの世界から、無くなって。    立て直すのに、どれだけかかったか。  ――――……しかも、同時に、父さんとの軋轢もうまれたし。  母さんは父さんがあまりに凄かったから、積極的に認めてくれるというよりは、もう、心配して、様子をうかがってくる感じだった。    オレ、もう、一番やばかった時は、死んでもいいかなとか思ってたけど。  真斗がずーっと、オレの側に居たから。  ――――……何とか、自分の中、立て直して。  ここまで、頑張ってきた。  恋愛とかも、完全に割り切って。  ――――……でも、あまりに和希とのセックスに体が慣れちゃってて。どうしても、抱かれたくなる時が、あって。  だけど、もう恋愛なんか、したくない。  どうせ、別れることになるんだろうし。  あんなに。好きで。好かれて。  気が合って。元親友で。失いたくないって気持ちは、お互いものすごく強かったのに。  あれ以上、好きになる事も、なってもらう事も、もう無いと思う位だったのに。  それでも、だめだった。  ――――……だったら、最初から、期待しない。    だから――――……四ノ宮が、いくら、心配してくれても。  心配しすぎて、ムカつくとかまで言ってくれてるんだろうけど。  それは聞けない。  戻って、さっきの話……そんなつもりじゃなかったよな、ごめん、て。  言った方がいいとは思うんだけど――――……。  なんかもう、きつくて。 「……ごめん…………」  届かないのは分かってるんたけど。  目を手で覆って、ため息とともに。そう言って。  言っても届かない無駄な言葉が、空中で消えていく。  しばらく、起き上がれなかった。

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