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第67話「心配?」*奏斗

「――――……」  お風呂に浸かって、はー、と息を付いた。  固まってた肩や、疲れてた目が、解れていく。  マンションの部屋の前についた時、料理手伝うよって、一応言ってみたけど、良いから風呂入ってきてくださいと断られて、部屋に消えていかれてしまった。  なので、もう、しょうがないから言われた通りお風呂に入ってるけど。  きもちーなあ……。  ちゃぷん、とお湯をすくってみる。  しばらく何も考えず、ぽけーとお風呂に浸かって。  ある程度あったまってから、風呂から上がった。  四ノ宮はお風呂入ってないだろうし、完全に部屋着もなーと思って、トレーナーとジーンズにした。髪を乾かしてから鍵とスマホを持って部屋を出る。  隣のチャイムを鳴らすと、四ノ宮が出てきた。 「ちょーどよかった」  四ノ宮が、ふ、と笑いながらドアを開けてくれた。  こうして普通に笑われると。  確かに、「王子」だなー、と。思う。  顔良すぎて、ちょっと引く位。 「今出来たとこで、呼ぼうか考えたとこでした」 「早いね」 「座って」 「うん。わー、すげー美味そう」  パスタとサラダとスープ。  どっかの店の、コースみたい。 「飲み物は?」 「お水がいい」 「了解です」  向かい合って座って、食べ始める。 「お世辞じゃなくて美味しい」 「そうですか。良かったです」 「何でお坊ちゃんなのに料理出来るの?」  素朴な疑問をぶつけると、四ノ宮は苦笑い。 「葛城が、料理は出来た方が良いって信念をもってて」 「信念なの?」 「そう。とにかく、食事は生きる上で大事だから、1人でなんでも作れるようになれって」 「すごい。でも確かにそうだなーとは思う」 「先輩は作れます?」 「簡単なのだけ。凝ったものは作らない」 「ダメですよ、外食とか買い食いばっかだと。体に悪いから」 「……うん、分かった」  クスクス笑いながら頷く。  まるでお母さんみたい……なんて思いながら。  たわいもない、ゼミの話や、ゼミのメンバーの話なんかして、割と楽しく食事が済んだ。  一緒に洗う、と流しに立つ。 「先輩、後でコーヒー淹れてよ」 「うん。いーよ。コーヒーメーカーじゃないの?」 「どっちもあるけど、先輩が淹れて」  そんな言い方に、ふ、と笑ってしまう。 「いーよ。洗ったらね。お湯だけ沸かしといてよ」  そう言うと、水を火にかけて、流しに戻ってくる。オレが洗った食器を、四ノ宮が流していく。ふと、腕が目に入る。 「近くで見ると、腕、結構太いんだなー?」 「ん? ああ――――……筋トレはするから」 「オレ、してもあんまつかないから、しなくなっちゃったなー」 「した方が良いんじゃないですか? 手首、細すぎ」 「うるさいな」  言わなきゃよかった、なんて思いながら黙ると、四ノ宮がクスクス笑ってる。 「そういえば、さっき、明日の合コンの連絡来てましたよ。見ました?」 「見てない。何て?」 「時間と場所とか。19時から」 「ふーん……」  まあ後でみればいっか。と思っていたら。 「ほんとに行くんですか?」  そんな風に聞かれた。  ほんとに、て? 「うん、行こうと思ってるけど」 「でも、先輩女は対象外なんですよね?」 「うん、そうだけど――――……でもこの誘いは、もう結構前からだからさ。1回行っとく。それに別に、話したりするのは好きだし」 「でも女の方は、良い人見つけに来るんだろうし」 「――――……ていうか、四ノ宮、行くの?」 「行きますけど」 「何で? 行く必要なくない?」 「相川先輩が、お前は超イケメン枠だからって。よく分かんないけど、自分の友達に、自慢するんだそうです」 「……小太郎、言いそう……」  アホだなーもう……。  苦笑いが浮かんでしまう。 「あんまり女の子一人占めすんなよなー?」 「しませんよ。そんなこと」  かなりはっきりそう言われて。咄嗟に疑問に思ってしまう。 「何で行くの、合コン。小太郎は確かに言いそうだけどさ。断る事も出来るだろ?」 「……別に。ていうか、オレ、よく合コン出ますよ」 「あ、そうなの?」 「良い子居れば、一晩――――……とかも、まあ明日のは出来なそうですけど」 「小太郎の友達だから?」 「面倒じゃないですか、相川先輩の知り合いと、変なことになって、もめたら」 「……まあ分かるけど。じゃあ行かなきゃ良いじゃん」 「先輩が行かないなら、行きませんけど」 「――――……」  なんか、そのセリフには、何となく固まる。  ……ああ、やっぱりそうなんだ。  と、とっさに何も言葉が出てこない。  何となく、思ってたけど。  ――――……四ノ宮は、オレが行くから、行くんだ?  ……何かよく分かんねえな。 「――――……何が心配なの、四ノ宮って、オレのこと……」 「心配?」 「……よく分かんないけど……なんか、オレの事すごい心配してるだろ?」 「――――……別に明日の合コンは、心配してる訳じゃないですけど……」  まあ、そうか。  ……女の子と、小太郎の友達が居る合コンで、心配することなんか、ないか。  ……じゃあ何で、オレが行くなら行く、になんの?  うーん。よく分かんないけど、聞いても答えは返ってこなそうな。  洗い物を進めながら、んー、と困ってると。  四ノ宮が、じっと見下ろしてくるので。  「なに?」と聞きながら、思わず深いため息をついてしまった。

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