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第73話「帰りたい」*奏斗
苦笑いのオレに、先輩達が、こっちを向いた。
「小太郎、変な女、つけんなよ、ユキに」
「え、何ですかそれ。大丈夫ですよーオレの友達の友達なんで」
小太郎が笑って答えてるけど。
「友達の友達って時点で、どんな奴かもわかんねえじゃん」
「まあ、そうですけど」
先輩の言葉に、あはは、と小太郎は笑ってる。
「……ていうか、今のどういう意味なんですか?」
オレが先輩達にそう聞くと。
「変な女がついたら、ユキが汚れる気がする」
「……ますますどーいう意味です?? それ普通、男に使いますか?」
眉を思い切り潜めて言うと、今度は椿先生が笑いながら入って来た。
「ユキくん、ほんとモテるね」
椿先生が、可笑しそうにそんな事を言う。
「何言ってんだか、全然分かんないんですけど」
何となく、この会話の途中から。
――――……こんな会話してると、四ノ宮が、なんか……絶対なんか思ってるに違いないと思って。
ほんと、余計な事言わないで、と思ってしまう。
……んだけどまあ。
こんな意味の分からない会話、良く思い出せばそう言えば過去にもしてる会話だなと。
なんか、オレの見た目に、「清くあってほしい」と思う人達が居るらしいのは、何となく知ってる。先輩達も、そうだったんだと、それは初めて知ったというか。
こういう事言われると。
……オレ、全然清くないけどね。
と、いつも心の中で思ってしまうけど。
もし、心の中が外見に現れるなら、オレ、全く違う見た目なんだろうな。
って、超自虐。……やめとこ。
そう思った所でちょうど、先生が「始めようか」と言ったので、会話も終わってゼミが始まった。
◇ ◇ ◇ ◇
ゼミは時間通りに終わって、合コン参加者で店に移動して、1時間位が経った。
アルコールが飲める奴と、まだ飲めない奴が混在してるので、そこは自己管理。飲んでご機嫌の奴に合わせるのは結構大変。
……いくら小太郎の友達とは言っても、初対面だからなぁ。
こっちも飲めたらお互い盛り上がって良いんだろうけど。
にしても。
がっつり、狙われてる感が。すごい。
合コンって、何度か参加したけど、今日はちょっと変わった感じ。
これまでは席が決まったテーブルで、隣に座った人達と何となく会話していればいいものにしか、参加した事がなかったんだけど。
今日は、パーティルームみたいな個室で、椅子もテーブルも、小さいのが点在。カラオケもあるから、自由に歌ったり、デュエットしたりもできるし、食べ物がバイキング形式みたいなので、立って取りに行かなきゃいけないし、その都度、色んな人に話しかけられる。
お酒だけは注文なので、タッチパネルで注文してるが。
――――……何だこの合コン。めっちゃ疲れるぞ。
ソフトドリンクをコップに入れていると、小太郎が隣に現れた。
「どうユキ、気に入った子、居た?」
「――――……なんか、テレビで見た婚活パーティみたいじゃねえ?」
「ああ。分かるー。オレ今日人数集めただけでこっちにはノータッチだったから……まさかこんな感じとはオレも思わなかったけど」
小太郎は苦笑いを浮かべている。
「気に入った子はいない?」
「……まだ、分かんない」
そうとしか答えられない。
「そっか。でもまあまあ可愛い子多いし。色々喋ってみたら?」
「オレの事ばっか言ってないで、お前は?」
「ん、まあぼちぼち適当に」
何だそれ。もう。
「ユキと話したい子いっぱい居るから。頑張って」
……いや、オレ、もう、そろそろ、帰りたい……。
心の中で、大きなため息。
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