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第72話「困ったなあ」*奏斗

 昨日はコーヒーを飲んだら四ノ宮の家を退散。  なんかもう、色々考える事はやまもりあったんだけど、もう、考えたくなくて。即、寝てしまった。  朝起きて一番に。  何だか、首を傾げてしまう。  どーして、クラブに四ノ宮と行く事になったんだろう。  全然意味が分からない。  ――――……そんなに心配される事、なのかなあ。  …………男女間でだって、別に、あるじゃん。一夜限りの関係なんて。  四ノ宮だってしてるって言ってたし。  ……オレが、変な男に会って、危ない目に遭うのが嫌ってこと?  でも、たとえもし、そんな事になったとしても。    なんか、そんなの自己責任で、しょうがなくねえかな。  オレだって、リスクがゼロだって、思ってる訳じゃない。なるべくリスクは低くしてやろうとは思ってはいるけど。  ――――……組み敷かれるわけだし、そうなってから、本性がヤバい奴ってなっても、もうそれは諦めるしかないというか。  そんな事が絶対にない、とは言えないんだけど。  でも、ある意味、そういうのも分かっていての、行動だから。  それはもう、何が起こっても、自己責任。自分のバカさ加減を、人を見る目の無さを、呪うしかない訳で。  四ノ宮なら、そんな風にも言いそうなのに。  自己責任ですよねって、すごい、バッサリ言いそうなのに。  何であんなに気にするんだろ。  変に縁があって、しかもお隣さんで、変に絡んじゃったから、オレの事が心配の対象になっちゃったのかなあ?  困ったなぁ。やだぞ、関係する男を物色してるとことか、誘うとことか見せるなんて。絶対嫌だ。  授業を受けながら、頭の隅でそんな風に思いながら1日を過ごした。  最後、ゼミの時間。教室に行くと、まだ、先生と、2人の先輩だけだった。  とりあえず四ノ宮が居ない事にホッとして、「こんにちは」と中に入る。 「おーユキ、久しぶり」 「今日は先輩達、居るんですね」 「今週からしばらく参加する。先週まで別で忙しくてさ」 「お手柔らかにー……」  言うと、ぷ、と笑われる。 「ユキくん、昨日はありがとうね」  椿先生。  ――――……今日もなんか、すげえカッコいいけど。  これに純粋に見惚れると、四ノ宮が怒る。まあ居ないからいっか。    ……って意味が分かんねえ、今のオレの思考、何?  マジほんと、勘弁して。 「昨日ので、役に立ちましたか?」 「うん、かなり助かったよ。無駄なとこ読む時間が短縮されるから」 「じゃあ良かったです。遅かったんですか? 昨日」 「22時半位には帰ったかな」 「うわー。お疲れ様です」  言うと、先生は、ふ、と笑って。 「何食べて帰ったの?」 「あー……食べたのは……パスタ、ですね」  咄嗟に聞かれて、そんな風に答えた。  食べて帰った訳では、無い。  ……なんか変な答え方だったかな、と思いながら、先生の言葉を待っていると。先生は、ふーん?と何か笑ってる。 「こんにちはー」  何だかなってタイミングで、四ノ宮達、1年が登場……。  先生の視線が四ノ宮に行って止まると、気づいた四ノ宮が近づいてくる。 「こんにちは」    ……はい。王子様は、いつも通り良い笑顔で先生や先輩達に笑いかけてる。  こういう時、オレの事はスルーするのは何故。  よく分からない。 「ありがとうね、昨日」  先生が四ノ宮にそう言う。 「いえ」  そのまま四ノ宮と先生が話し出したので、オレはそーっとそこを離れて、大体いつも2年で座ってる方の席に、腰かける。  今日皆遅いなあ……。 「なあ、ユキ、今日ゼミの後、暇? 今日は先生用事らしいから個別に行くかって言ってんだけど」  達樹先輩と、亮二先輩がこっちを見て言う。まだ先生と四ノ宮は話している。 「あ、今日オレ、合コン行くんです」 「合コン? 珍しくない?」 「確かにあんまり行かないですけど。小太郎主宰なので」 「ああ、そうなんだ。じゃあまた今度飯いこ」 「はーい」  笑顔で頷いてるとこに、小太郎達も入ってきた。 「よー、ユキ」 「んー」 「今日行けるよな?」 「行けるって、昨夜も返事したじゃん」  何回確認すんだよ、と笑うと。 「だってカッコいい奴くるって言っちゃったし。来なかったら怒られる」  とか言う。 「なんだそれ……」 「だってマジそうだし」 「……はいはい、それはどうも……」  と適当に返事を返しながら、苦笑い。

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