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第75話「ムカつく理由?」*大翔

 なんか、マジで気分悪い。  何でって。分かってるけど。  ――――……あちこちから、色々声掛けられて。  へらへらしてる。  ……ように見えるから。  それを言ったら、否定するとは思うけど。  さっき少し口に出してしまったら、何だかすごくムッとしてて。  なんだかあまりに素直にムッとしたので、珍しいなと、笑ってしまった。  いつもは分からないようにムッとするというか。静かなため息だったりするんだけど。  先輩は何か言おうとしてたのに、女子に絡まれて離れてしまった。 「――――……」  次々絡んでくる子達と話しながら。  モテて良いなとか、よく分からない 絡みを入れてくる男子とも話しながら。    何なんだ、立食の合コンって。話す人数が多くて疲れる。  しかも、誰かを選ぼうとか、そんな気も全くない合コン。  オレ一体ここに、何しにきたんだっけ……。  ああ、マジで、来なきゃよかった。  と思うのだけれど――――……。  ただ、その気持ちはまったく表には出ない。  先輩も先輩で、多分全然乗り気ではないんだろうけど、ものすごく、愛想良いし。 「四ノ宮くんて、ほんとに彼女居ないの?」 「――――……」  余計な言葉は言わず、ん、と頷くと。   チャンスだとでも思うのだろう。じゃあさ、という話につながっていく。  一人だとちょっと、という子は、何人かで集まって遊ぼうよ、と言う。  いつも同じ感じ。  前はとりあえずその中から、気になる子に声かけてみたりして、過ごしてみたりもしたんだけど。  一体何で、オレが、女じゃなくてあの人を目で追うのかが、全然分からない。  オレと離れてから、女に囲まれてた先輩は。  ドアが開くと、そこに来た男の店員の元に行って、誰かが頼んだアルコールのトレイを受け取ってる。  ――――……また、人が良いし。  結構な数のグラスに、どれが誰のか分からないらしくて、一瞬固まってる。それを見たその店員が再びそれを受け取って、笑って、何かを言ってる。  それに対して、先輩も笑いながらあたりを見回して。  一緒に空いてるテーブルの所に行くと、そこにグラスを移していく。 「アルコール来たよー」  先輩が声を上げると、頼んだ奴らが寄っていく。  一体何を、店員と話すことがあるのか、まだ喋ってるし。  あーなんか。  ――――……むかつく、なあ。  そうは思うのだけれど、理由はいまいちよく分からない。  それでも、オレの周りにいる子達との会話が途切れた時、オレはそこを離れて、先輩に近付いた。 「先輩」  呼びかけると、先輩は振り返って、オレを見上げた。 「じゃ。ありがとうございました」  先輩と話していた店員はそう言って先輩に笑いかける。先輩も、はーい、と笑顔で返してから、オレを振り返った。 「四ノ宮どしたの?」  ――――……さっき何か言いたげなまま離れたのに、もう忘れてるみたい。  にこ、と笑って、オレを見上げる。 「――――……先輩、今日、一緒に帰ります?」 「……つか、ほんとに、誰も良い子いないの?」  先輩は首を傾げながら、オレを見上げてくる。 「まだ分かんない。小太郎達と二次会行くかもってさっき言ってたし。帰れたら、帰ろ?」  そんな話をしていたら、相川先輩が近づいてきた。 「あ、ユキ、酒ちょーだい」 「ん、これ小太郎が頼んだ?」 「そうだと思う」  相川先輩はもう二十才。 「いーなあ、小太郎。オレも飲みたい」 「二十才になったら祝ってやるから一緒になー?」 「うん。祝って」  二人でクスクス笑ってる。 「でもうち、親二人とも弱いらしいから、オレも弱いのかも」 「ユキの両親、そんな弱いの?」 「母さんなんて、ちょっとで酔っちゃうらしい」 「でもじいちゃんとか強かったら、強いかもしんないし。飲んでみないとわかんねえよ」 「ん、そうだね。弱いよりは強い方がいいなあ~オレ」 「まあ分かる」  二人で話しながら、相川先輩がふと、オレを見る。 「なんか四ノ宮はザルって感じがする……何でだろう」 「あー、分かる。そんな気がする」  二人でうんうん頷き合って笑ってるし。  ほんとここ二人は、のどかに仲良いな……。  

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